2012年02月23日

橋下徹研究

橋下徹研究

橋下徹研究
産経新聞大阪社会部/著 (産経新聞出版) 2009年


【概要】
2008年に大阪府知事となった橋下徹氏を365日追っかけましたという本。
知事になるまでのサクセスストーリーも充実している。

【動機】
これから大阪だけでなく日本全体にとっても間違いなくキーマンとなるであろう現大阪市長・橋下徹氏について知りたかったから。

【所感】
橋下さんの頭のよさは、語録などを見てもわかるとおり、切り替えしがとてもうまいことだ。さすがに元弁護士だけあって本質をズバッと一言で伝える力がずば抜けていると感じた。


【抜粋】
●彼らの怒りや悩みを聞き、時には学校側との交渉の先頭にも立つ。放課後の教室で勉強を教わったり、車座になって橋下の言葉にうなずいたりするワルガキたちの姿は、教師の間で「橋下塾」と呼ばれていたという。・・・・・・(中略)
「実行力のない人と付きあっても政治はできない。僕は(元長野県知事の)田中康夫さんのように孤立したくはないんです」(p.16〜17)

☆いかにも橋下氏らしいエピソード。やっぱり子供の頃から性格ってあまり変わらないんだなと感じた。己の武器を知り、それを生かして理想を実現していく。実行力。


●「30分ぐらい立ち読みしただけで、彼は英単語の本を一冊暗記してしまう。ものすごいスピードでページをめくってね。その本から問題を出すと全部正解だった。その後も覚えていたかどうかは分かりませんが・・・」(p.35)

☆浪人時代のすごい逸話。ものすごい集中力。フォトリーディングを完璧に身に付けていたのかも。


●高校や大学受験では「勉強している姿を他人に見せなかった」という橋下も、当時は「自分で腹をかっ裂いて内臓をえぐり出すぐらいに猛勉強した。寝ても覚めても、トイレに行くときでも、法律の本を手にしていた」という。(p.38)

☆もともと弁護士を目指したきっかけが、学生ビジネスで不渡りをつかまされ、独学で商法を勉強し訴訟を起こしたことらしい。早稲田大学2年の頃の話。


●大阪府知事の給料は月額145万円。副知事は114万円だという。ちなみに府議会議長は117万円、副議長は103万円となっている。この金額が高いかどうかは判断が分かれるだろうが、知事就任前は年収3億円、月額に直せば約2500万円という橋下知事にとってはかなりの減収になるだろう。(p.130)

☆収入を17分の1にしてまで立候補したというのを聞くとあらためて橋下氏の覚悟がわかる。


●3月1日(土)16時 大阪市中央区の大阪国際平和センター(ピースおおさか)の視察開始。職員の人件費が1人1000万円を超えるということを知り、担当者に仕事の内容を次々に列挙させる。「どんどん1000万円に見合う仕事を言ってもらわないと、どんどん不必要という判断をしていきますよ」(p.184)

☆こういうところが橋下さんの人気の秘密かもしれないなぁ。応援したくなる。


●3月2日(日)9時44分 河内長野市立高向小学校の児童らが環境学習の成果を発表。「温暖化防止のためには、テレビの視聴時間を抑制しなければいけない」と訴える児童に、「テレビがあったからおっちゃんは知事になれたんやで」。(p.185)

☆テレビは悪だと頭から否定するのではなく、自分の頭で考えるということを一言で児童に伝えた名言といえるかもしれない。さらに、テレビ業界への感謝も伝わってくる。


●3月21日(金)15時半 住宅水道常任委員会で答弁。「府営住宅を市町村に移管したらいい」との知事当選前の発言をめぐり、民主府議と論戦に。「何だかけんかを売られているみたい」という府議に「(ラグビーの)ノーサイドというのは、真剣に戦った後でお互いに何も言わないこと。(府議の姿勢は)ノーサイドの精神とはとても相容れない」。(p.190)

☆ノーサイドといえば、野田首相が民主党代表戦で勝った後に言ってたなぁ。ふと思い出した。


●4月14日(月)17時6分 「今年度だけで1100億円の削減が必要なのか」という報道陣の問いに「3年、4年、5年後には、次の一手を打つことのできる大阪に生まれ変わる」と答える。(p.199)

☆力強いメッセージ。
削減をする必要があるの?(今削減をすることで財務が健全になって、結果的に)3年後には余裕ができる。
間の言葉を省略することで力強さが生まれるのはおもしろい。


●9月17日(水)10時半 府庁別館で教育問題について16市長と意見交換会。府教育委員への起用を検討している立命館小学校副校長、陰山英男氏の指導法に触れ、「『陰山メソッド』に対する反対意見は多いが、教育委員会は新しいことをやろうとすると反対する」。(p.254)

☆立命館小学校といえば辞書に付箋をたくさんつけてる例の学習法かな?と思って調べてみたら、「100ます計算」というものを広めた人だった。(考案したのは陰山氏の師・岸本裕史氏)。ちなみに陰山手帳は本屋でよく見かけていた。ついでに、辞書に付箋を貼る学習法を考案したのは深谷圭助校長。



【アクションプラン】
・橋下さんはいずれ首相になると思うけど、いざというときにすぐに動けるように自分を磨いておきたい。
おそらく、これから5年間が勝負だろう。地方分権、財政構造の転換、年金を中心とした社会保障構造の転換、エネルギー転換などなど。
5年後ってずっと先のように感じるが、橋下さんが大阪府知事になったのが08年2月6日。今から4年前である。まさにあっという間。(注:この記事を書いたのは12年2月です)


【評価】
評価:★★★☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
子供の頃や弁護士時代のエピソードもあるので、どういう環境で育ったら彼のような人になるのか興味があれば一読を。

posted by macky at 23:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 政治 | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月07日

日本の魚は大丈夫か

日本の魚は大丈夫か―漁業は三陸から生まれ変わる (NHK出版新書 360)

日本の魚は大丈夫か―漁業は三陸から生まれ変わる (NHK出版新書 360)
勝川俊雄/著 (NHK出版) 2011年


【概要】
衰退著しい日本漁業をいかに持続的な成長産業へと改革するか。魚の放射能汚染は? 
当代きっての論客が三陸復興への思いを込めて描く未来図。


【動機】
漁業は衰退産業ではなく成長産業。
この言葉に惹かれた。


【所感】
1万円を預けていたら6年後に100万円になる定期預金。あたたはすぐに解約しますか? 
これをすぐに解約しようとしているのが現在の日本の漁業の現実ということらしい。

成長産業として見事に復活を遂げたノルウェーの漁業をモデルにして、
震災で壊滅的な被害を受けた今こそ日本の漁業を見直すべきだとしている。


【抜粋】
●ノルウェーの沿岸部は、氷河に削られてできたフィヨルドという入り組んだ湾で形成されています。フィヨルドは、水深が深く(ところにより1000mを超えます)、地形が複雑なために、潜水艦でこっそり上陸するのに、うってつけなのです。ノルウェーは、ソ連からの潜水艦からの上陸を妨げるという国防上の理由から、すべてのフィヨルドに漁村を置いて、人を住ませることにしました。そんなわけで、ノルウェーには、無数の小規模漁村が存在して、強い政治力を持ってきたのです。(p.77)

☆これは知らなかった。こういう歴史は面白い。


●かつては、サバは三陸漁業の大黒柱でしたが、1980年代の乱獲で、資源のほとんどが獲りつくされてしまいました。先に挙げたノルウェーにおけるニシンの例では、ここまで減った時点で禁漁にしています。資源を回復させようとしたわけです。

しかし、日本漁業はまったく逆の方向に進みました。漁具メーカーと巻き網漁業者が共同で、遠くにいる稚魚の群れを発見できるソナーを開発したのです。高い値段で売れる成魚が獲れないのなら、安くてもいいから未成魚をたくさん獲ろう、それで目先の売り上げを確保しようというやり方です。乱獲に拍車をかける方向に行ってしまったのです。(p.84)

☆なんとも嘆かわしい。そんなことをすれば将来的に魚が獲れなくなるのをわかっていながらやってるんだろうなぁ。ここは国が規制すべきところでした。


●ノルウェー漁業のすぐれたシステムの一つに、最低価格制度があります。(中略)
「それ以下の値段では鮮魚を売れない」という制度です。漁業者は、その基準以上の値段がつく魚だけを獲らなければならない。つまり、ノルウェーでは、薄利多売は許されないというわけです。船ごとの個別漁獲枠と最低価格制度によって、ノルウェー政府は魚の値段を上げる方向に政策誘導しています。(p.118〜119)

☆個別漁獲枠と最低価格制度。日本も同じ事をやればいいのに。なぜできないんだろう?
たしかに枠を割り振るのは難しいだろうが、いったん割り振ってしまえば、例えばあなたとのころは枠が6つですよって言われれば、稚魚でその貴重な枠を使おうとはしないだろう。乱獲を防ぐにはピッタリの制度だ。

最低価格制度を導入すれば消費者が買う魚の値段も高くなるような気もするが、そうとも限らない。
日本の場合はもともと卸売業者、加工業者、産地仲買業者、仲卸業者と中間マージンが多いから、
誰も儲けていないのに消費者のところに届く頃には高くなる。
このような伝統的な流通システム自体を変える必要がある。
ノルウェーでは、最先端のオークションシステムがあり、落札したところに水揚げするシステムが整っているそうだ。

「最低品質制度」は「最低品質制度」としても機能する。
そういえば、ノルウェー産の魚といえば、ここ数年で国産よりも高級というイメージが定着しつつある。


●水産物の汚染の問題を扱うには、次のような幅広い知識が必要になります。まず、放射能や放射性物質はどういうものかという物理学の基礎は言うまでもありません。その放射性物質が海の中で、どのように流れて広がっていくかという海洋学の知識や、それが海水の中でどういう挙動をするかという化学の知識も欠かせません。さらには、生物の食物連鎖や魚の回遊について調べる生態学、漁獲と消費という面から検討する水産学、その魚を食べた人間にどういう影響があるかを臨床的・疫学的な知見を生かして検証する放射線医学。こうした横断的な知識がないと、水産物の放射能汚染の全体像がつかめません。専門家だって、一人でこれらをすべて網羅するのは不可能ですから、一般の人にはとても無理な話だと思います。(p.168〜169)

☆放射能問題の難しさはここにある。著者の専門は水産学。関連分野の海洋学や生態学のことはある程度は分かるが、放射能については門外漢だったそうです。こういうさまざまな分野の研究者が自分の専門の知識をそれぞれ持ち寄って連携していかないといけないんだろうな。



【評価】
評価:★★★☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
魚が好きな日本人全員が一度は読むべき本だといえよう。
衰退していく漁業に一筋の光が見える。

120207
posted by macky at 22:32 | Comment(1) | TrackBack(0) | ビジネス書 | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする