2012年03月06日

影響力の武器

影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか

影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか
ロバート・B・チャルディーニ/著、社会行動研究会/訳(誠信書房) 2007年


【概要】
情報化社会で入ってくる情報量が増えるほど
それに対処するためにますます自動的な反応をしてしまう。



返報性: 人はお返しをせずにはいられない。

コミットメントと一貫性: 人は一度決めたことや自分で言った言葉、書いた言葉の通りに行動しようとする。たとえそれが本心じゃなくてもだ。

社会的証明:  人は自分に似ている人のマネをしようとする。周りがやってるから正しいことに違いないという思い込み。サクラ。

好意: 人に好かれるためには、賞賛すること。いいニュースばかりをもたらす。身体的魅力はハロー効果を生じさせる。自分と似た人に好意を感じる。快適な環境の中で接触を繰り返すことによって好意を高める。

権威: 権威や肩書きには盲目的に従う。

希少性: 残りわずか!期間限定!・・・など、希少価値をもたせる。


この6つの影響力の武器について、例を交えて解説している。その威力はすさまじい。
策略で相手をはめるのはズルいことだと思ってたのが間違いであったことに気付かされた。
むしろ円滑なコミュニケーションに必須のスキル。


【動機】
心理学を勉強してみようと手に取った。


【所感】
スーパーで食べ物を試食販売している人は
6つの影響力を駆使していると言えるかもしれない。

試食はまさに返報性を期待してのものだし、(人によっては試食したら買わないといけないと思う人もいる)、
試食の品を渡すときに簡単な質問(たとえば○○は好きですか?など)をすればコミットメントを引き出すことができ、
周りで同じように試食している人が一人でも買えば、自分も買うのが正しいことだと思い(社会的証明)、
店員さんができるだけ好意をもたれるように接客し、
その品物自体に「○○さんオススメ」や「○○さん直伝の味」などと書いてあれば権威になる。
どんどん売れて残りわずかになると、ますます人は欲しくなる(希少性)。

個人的には、「コミットメントと一貫性」と「社会的証明」の項目が興味深かった。



【抜粋】
●最初の好意が小さなものでも、お返しとしてもっと大きな好意を引き出すことができるのはなぜなのでしょうか。重要な理由の一つは、恩義の感情が明らかに負担を感じさせるものであるということです。私たちの多くにとって、恩義を受けている状態というのはとても不快なものです。ずしりと肩に食い込むこの重荷を下ろしてみたいという気にもなります。(p61)

☆こちらが全くお返しを期待せず好意でやっても相手からしたら負担を感じて不快になることもある。このバランスがコミュニケーションの難しいところ。


●「拒否したら譲歩」法は、こちらの望みどおりに人びとを同意させるだけでなく、実際にその要求を実行し、将来も要請があれば志願するように仕向けるようです。なぜこのテクニックを使うと、騙されて承諾した人がもう一度承諾するようになってしまうのでしょうか。・・・(中略)・・・譲歩をされた人はそのお返しに自分も譲歩をする傾向があります。しかし、譲歩という好意に二つの副産物があることはあまり知られていませんし、私たちも検討してきませんでした。取り決めに対してより大きな責任を感じることと、それに満足感を抱くことです。(p81)

☆確実に断るような大きな要求を出して、相手がそれを拒否した後、それよりも小さな、もともと受け入れて欲しいと思っていた要求を出す。これを「拒否したら譲歩」法、またの名を「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」という。相手も影響を与えて(例えば値段を下げさせたと思って)満足しているというのがおもしろい。


●しかし、セーラは以前にも増してティムに夢中です。選択を迫られたことによって私にはティムしかいないことがわかった、セーラはそう言っています。(p100)

☆これには驚かされた。「結婚をしたっていいし、なんだったら酒もやめる」と迫られて、恋人を棄ててティムを選んだのに、その選択の前提となっていたはずの条件が何も満たされたなったにもかかわらず、彼女は幸福になった。(コミットメントと一貫性)


●「僕は今夜はお金を払うつもりはなかったんだ。・・・(中略)・・・だけど、君の友人が話し始めたとき、お金をすぐに払った方がいいと思った。そうしなければ、家に帰って彼の言ったことをまた考え始めてしまって、そうしたらもう決して申し込まなくなるって思ったんだ」(p108)

☆心理学を勉強していたら、「えー?そんなことが起こるの?」ということがある。この件もまさにそうだ。不眠症が治るなどの怪しいセミナーに参加してるときに質疑応答で矛盾点を追求したら指導者が行き詰ってしまった。その直後、申し込みが殺到したというのである。


●そこには取り消しのきかない文章として行動が記録されているので、自分が確かにしてしまったことと一貫性を保つように信念や自己イメージを変えてしまったのです。(p128)

☆書いた言葉には生命が宿る。たとえ疑ってても本当になる。中国人が捕虜となったアメリカ人に中国(共産党)に好意的なことを書かせることによって徐々に意識改革させていった方法がおもしろい。いかにも中国らしい。自主的に書くことを拒否した場合には、既にノートに書かれてあることを書き写すだけでも効果があった。こんなに簡単に意識改革できるのなら、成功をイメージさせるような文章(たとえば、「私は成功する」など)を毎日書き写すだけでもすごい効果がありそう。頭の中でただイメージするのと、実際に書くことにこれほどの違いがあったのかと驚かされた。(p128)


●フラタニティが、市民サービス活動を加入儀礼に取り入れることを拒否したのも、中国人が価値あるものよりもささやかな賞品を選んだのも、まったく同じ理由からだと思います。自分の意思で行った行為であることを参加者が認めることを望んだのです。(p151)

☆賞品をささやかなものにすることによって、賞品に釣られてそれをやったのではなく、自分から進んでやったと思わせる効果がある。新人いじめは、苦労してその組織に溶け込んだということで組織の価値を高める効果がある。つまり、「何かを得るために大変な困難や苦痛を経験した人は、同じものを最小の努力で得た人に比べて、自分が得たものに対して価値をおくようになる」。


●「すみません、今、あるコンテストに参加しているんですが、勝つためには、まさにあなたのような美しい女性の助けが必要なんです」。・・・(中略)・・・「何てことなの。この男にキスして、さっさとここから立ち去ろう」。・・・(中略)・・・厄介なことに、男はキスの後でこうたたみかけてきたのです。「キスがお上手ですね。でも、私が本当に参加しているのは雑誌の定期購読者を何人獲得できるかを競うコンテストなんです。あなたは積極的な方ですよね。この雑誌の中に興味があるものはありませんか?」(p178〜179)

☆たたみかけるのが大事。一度小さなコミットメントをしてしまうと、人は一貫性を保ちたいという気持ちから二番目の要求にもあっさりと応じてしまう。(この事例の場合は要求は通ったけど後から後悔させているので使いどころに注意)


●車の運転手は突然ハンドルを切って立木や対向車に突っ込むこともできます。(p233)

☆事故死の何割くらいが自殺なのだろうか。自殺記事の後に、交通事故が跳ね上がるという(3〜4日後が最も多い)。その中には自殺も多く含まれているのでは?という推察。自殺が大きく報道されることによって、同じような境遇の人の自殺を誘発させるのだとか。(社会的証明)


●いかなるリーダーでも、集団の全てのメンバーを一人の力で完全に説得できるものではありません。しかし、強力なリーダーなら、集団のかなりの割合の人を説得できると考えてよいでしょう。そして、集団のかなりの数のメンバーが納得したという生の情報が、それ自体、他のメンバーを納得させるのです。したがって、最も影響力のあるリーダーというのは、社会的証明の原理が自分に有利に働くようにするためには集団の状況をどう整えればよいのかを知っている人なのです。(p247)

☆「社会的証明」をうまく使えるのがリーダーの資質かも。全員を納得させる必要はない。

●ジョーンズが霊感を受けたように見えたのは、まさにこの点なのです。彼の優れたところは、人民寺院の共同体をサンフランシスコの都会から赤道に近い南米の僻地に移すことを決めた点にあります。そこは、不確かさと極度の類似性という条件がそろっていたので、他のどこよりも社会的証明の原理を自分のために操作することが容易な場所だったのです。・・・(中略)・・・群れの心理を操ることは容易なことです。何人かのメンバーを自分が望む方向に向けておきさえすれば、残りの人々はおとなしく、そして機械的に従うものです。(p247)

☆大勢の前で講演をするときでも目の前にいる2、3人に話すようにすればいいとよく言われるが、それも同じことだろう。大勢の中の一人に反論されるんじゃないか?と思ったら怖くて何もしゃべれないけど、実際はそんなことはなく、その他大勢は機械的に従うだけというのはシンプルかつ的確だ。


●純然たる賞賛は、それが正確でなくても効果を持ちました。好意的な評価は、それが真実であれ偽りであれ、そのお世辞を言う人に対して等しく好意を生じさせたのです。(p283)

☆間違っててもいいからとにかく褒めろ。そうすれば人に好かれる。徹底的に褒めろ。(あまりに露骨だとかえって反感を買うが)。望ましくない評価は与えてはいけない。(その人の成長のためにはプラスかもしれないが、嫌われるかもしれないリスクを犯してまで言う必要は無い)。つまり、お世辞は思っている以上にとても有効なのである。


●あなた自身の経験を思い出していただきたい。もし、あなたが正しい答えを知っているのに教師が誰か他の児童を指したとすると、あなたはおそらく、その子どもが間違った答えを言って、自分の知識を示す番が回ってきたらいいのにと願ったことであろう。もし、あなたが名前を呼ばれたのに間違ってしまってしまったり、競って手を挙げることができなかったならば、おそらく答えを知っていたクラスメートを妬み、怒りを感じることであろう。(p287)

☆これはとてもよくわかる。子どもの時を思い出すと、答えを知っているのにわざと知らないふりをしていた。それは本能的に妬みを避けようとしていたのだろう。でも、知っているのに知らないふりをするというのは結構ストレスなんだよね。失敗した子どもが成功した子どもに対し嫉妬や不快の念を覚える教育システム。


●接触によってもたらされる親密性は強い好意を生み出すのが普通ですが、接触に不快な経験が伴う場合には逆効果になってしまうということです。(p295)

☆ただ機会を増やせばいいというわけでも無い。


●人間には、不快な情報をもたらす人を嫌う傾向があります。たとえ、その人が悪い知らせの原因ではないとしてもです。その知らせと結びついているというだけで、私たちの嫌悪感を刺激するのです。(p301)

☆できるだけ、いいニュースだけを人に話すようにする。悪いニュースは自分からは振らないようにする。あの人はいつも悪いニュースを運んでくると思われるのはまずい。


●改善しつつあった経済的・社会的状況が急激に悪化の方向に転じたときに、革命は最も起こりやすくなるそうです。(p405)

☆人は失いゆくものに対して、より価値を求める。(実質的には価値は全く変わらないにもかかわらず)
そういえば、残り1つとかになったら高くても慌てて買おうとするけど、レジで並んでるときに、
その商品が大量に入荷されたらもうちょっと安くなるまで待とうとする。
子どもに反抗されたかったら、気まぐれに自由を与えればよい。


●最後に笑ったのは、誰もが欲しがったものを手に入れ損なった者である。(p418)

☆競売で値がつりあがるのは、自分のものと思ったものが失われるという恐怖を味わっているからである。敗者が勝者のように見え、勝者が敗者のように見えるからおもしろい。


●私の弟リチャードは学生時代、承諾誘導の方策を駆使し、たいていの人がこの単純な点を見過ごしてしまいがちなことを巧みに利用して金を稼ぎ、自活していました。実際、この方策というのが実に効果的で、金を稼ぐために週末にほんの数時間働くだけで、残りの時間は勉強に当てることができたのです。(p422)

☆その方法というのが、誰かが新聞紙上で売り出した中古車を数台買っておいて、それに洗車をして、翌週末に決められた額だけを上乗せして新聞を通して売りに出すというもの。彼は三つのことを知っておく必要があった。第一に車についての十分な知識、第二に、買い手の感情を刺激するような新聞広告の書き方、そして第三に、希少性の原理の使い方。リチャードは三つの全てをどうすればよいか知っていたという。
優れた広告を書く術を知っていたので、日曜の朝には見込みのある買い手からの電話がひっきりなしにかかってくる。来てもらう時刻を約束するのだが、これをすべて同じ時刻にする。この策略こそが、後で承諾を引き出すための布石になる。

●たいていの場合、最初の見込み客が現れ、車をいろいろ調べ始めます。そして、汚れや欠陥を指摘したり、値引きする気はあるのかといったり、車を購入する際の一般的な手順を踏んできます。しかし、二人目の買い手が駆けつけるに至り、その場の心理が一転します。他者の出現によって、その車を入手できる可能性が突如として制限されてしまうのです。たいていは最初に来ていた者が、うかつにも競争心を燃え上がらせ、「ちょっと待ってくれ、俺の方が先に来ていたんだ」と、自分に買うかどうかを決める優先権があることを主張します。(p422〜423)

☆二人目が現れるだけで立場が逆転しているのがよくわかる。


【アクションプラン】
・「「みんなの意見」は案外正しい」という本は社会的証明に関する本であろうか。一度読んでみたい。

・「若きウェルテルの悩み」を読む。(「ウェルテル」効果:とくに若年層は自殺報道の影響を受けやすい。これも社会的証明の一つである)  →読了(120420)

・「影響力の武器 実戦編」を読む。 →読了(120720)


【評価】
評価:★★★★☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
知り合いにはあまり薦めたくない本。こっそりと読みたい。

そんなバカな。私だったら引っかからないなぁ、と思うようなこともたくさんあった。
でも、私が引っかからないといってみんなが引っかからないとは限らない。
ついつい、自分に置き換えてそんなのは通用しないと思ってしまうけど、
世の中の人って意外と自分が思っているよりアホなのかもしれない。
という冗談はさておき、この本に書かれているようなことは
自分がモノを売る側に立ったときだけでなく、日常生活においても役に立つであろう。

でも、ここに書かれてあることを全て鵜呑みにすることは、それこそ権威に盲目的に従うことに他ならない。
posted by macky at 23:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 心理学 | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする