2014年07月22日

木橋

木橋 (河出文庫)
木橋 (河出文庫)
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永山 則夫
河出書房新社
売り上げランキング: 99,690


木橋
永山則夫/著 (河出書房新社) 1990年 (初出は1983年)
530円+税



【概要】
津軽の十三歳は悲しい―うつりゆく東北の四季の中に、幼い生の苦しみをみずみずしく刻む名作「木橋」、横浜港での沖仲仕としての日々を回想した「土堤」、および「なぜか、アバシリ」を収録。作家・永山の誕生を告げる第一作品集。(「BOOK」データベースより)

「新日本文学賞」受賞。

1968年から1969年にかけて連続ピストル射殺事件、いわゆる「永山則夫連続射殺事件」を引き起こした刑死者(元死刑囚)永山則夫が30代の時に獄中で書いた自伝である。




【動機】
佐藤優 『獄中記』 で紹介されていたので。



【所感】
網走番外地生まれを網走刑務所生まれだと誤解したことがきっかけで会社を辞めたり、全体的に運のない男だ。

生い立ちや境遇はかわいそうだとは思うが、だからと言って4人も殺していいことにはならない。

それは著者本人も自覚しており、自伝で罪の言い訳しているというよりは、自分を見つめ直し犯罪心理学に役立ててもらおうと、冷静に分析している。


正直、読後感や後味はあまりよくない。
ハッピーエンドじゃない物語だから。結末を知っているから。




【抜粋】
●当時のN少年は、自分のことしか考えられず、その辺に飼われている利口な小動物たちよりも劣った人間であった。反省する勇気も内省する方法も知り得ず、努力を向けるべき目的もなく、ただ「学校」だけがすべてであった。N少年の周囲には、一人として労働を愛する人生を教示し、学校へ行かなくとも安い良書を日々少しずつ勉強すれば、人生を有意義に生きていけることを知らせる者が存在しなかった。(p.130)

☆ここまで更生していたら死刑にする必要もなかったのかもしれない。今の少年犯罪でまた犯罪を犯しそうな人が反省もせずに世に出てきてやっぱり再犯していることを思えば理不尽に思える。



●六人は車から降りた。日雇い四人は、その周辺を見た。あたりは二、三十軒の家屋が雑然と肩を抱き合うように建ち並ぶ部落があった。一目で汚穢した所と体感させる貧乏きわまる部落であった。

・・・(中略)・・・
 
 この土堤に、N少年を座らせてしまったのは、その空き腹だけのためではなかった。
 この部落の人々への同情とも、憐憫ともつかない思いが、自分自身のくやしさとたたかっていた。
――俺より下がいた。
 という何かしら言いようのない自己確認と反撥とが争って、思惑を複雑に混乱させてゆくようであった。(p.143-169)

☆初めての日雇い体験は朝鮮人集落での重労働。自分が一番底辺かと思っていたらさらに下がいたことに驚きと戸惑いを隠せない著者。
劣悪な環境が殺人事件に結び付いたとするなら、それよりも下がいるということで説得力を失ってしまう。




●「へー、今日は若いの来てんだね」
「ああ、何か知らんけどよく働いてくれるよ」
 と、今まで黙して語らなかった大男が、明るく思われる語調で言った。
 N少年は褒められたわけだ! N少年はそのときこう思った。――たとえ人種は違っても、見るところはやっぱり見てくれるんだと、そう思うと、それまでの陰鬱な居心地の悪い心がぱっと何かに照らされたような気持ちになった。嬉しくなった。萎縮していた心持が一遍に何か大きな太陽を浴びたような気持――それは、朝日の大きいやつを見て気分が晴々とする、そんな気持――にさせるものだった。単純といってしまえばそれまでだが、とにかくすごく嬉しい思いにさせた。(p.155-156)

☆凶悪な犯罪者だといえどもやっぱり同じ人間なんだなぁと改めて感じた。

性格が素直そうなのでまともな大人が周りに一人でもいれば道を踏み外すことも無かったかもしれない。




●「犯罪者」もそうであるが、「精神病者」は、家庭内不適合、公教育不適合、現社会不適合の三要因が合乗して発生する。そして、この三つが同時に一人の人間に発現することが少ない。だから、「犯罪者」も「精神病者」一国家内では少数者となるのだ。
「精神病者」といわれる人は、「精神病」を悩んではいない。彼らは、自分の個々の不適合になる物事を悩んでいて、現社会における不適合を表出している自然の人たちなのだ。(p.189)

☆こういう見方もあるのか。
「犯罪者」の中に「精神病者」が多いのは、原因となるものが同じだからというわけである。つまり、「精神病者」が犯罪を犯すのではなく、家庭内不適合などのある人が「精神病」になったり「犯罪者」になったりする。紙一重の差が大きな違いとなって現れる。




【アクションプラン】
・自伝を書く。



【評価】
評価:★★☆☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
獄中文学を読みたい時に。



【著者からのメッセージ】
学校へ行かなくとも安い良書を日々少しずつ勉強すれば、人生を有意義に生きていける。

 

posted by macky at 19:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | ノンフィクション | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする