『
きけ わだつみのこえ―日本戦没学生の手記』
日本戦没学生記念会/編 (岩波書店) 1995年 (初出は1949年)
【概要】
酷薄な状況の中で、最後まで鋭敏な魂と明晰な知性を失うまいと努め、祖国と愛するものの未来を憂いながら死んでいった学徒兵たち。1949年の刊行以来、無数の読者の心をとらえ続けてきた戦没学生たちの手記を、戦後50年を機にあらためて原点にたちかえって見直し、新しい世代に読みつがれてゆく決定版として刊行する。
(「BOOK」データベースより)
わだつみ(海神)とは、日本神話における海の神さまである。
【動機】
『
なぜ、働くのか』 を読んで。
終戦記念日を契機に戦争について考えよう。
【抜粋】
●ジュー〔ユダヤ人〕財閥とコミンテルン。――自分はこう結びつけてみる。我々は蔽われてはならぬ。欺かれるとは馬鹿にされたということなのだ。端的に言ってしまうならば――。(p.26)
☆この時代の若者は、どこまでわかってたのだろうか?
●私が初めて支那の人間を眼のあたりにして印象深く残ったのは苦力(クーリー)〔最下層の中国人日雇労働者〕の群だったのです。私が上陸しようとした時、桟橋には幾百とない苦力がうごめいていた。(p.42)
☆苦力というのは初めて知った。今はもういないのだろうか。
Rothschild-41 中国人奴隷 苦力(クーリー)
http://wave.ap.teacup.com/renaissancejapan/1128.html●従ってこれらについての常識は、入営者たる者は一応は備えておかねばならぬものである。しかし入隊前はその必要性を痛感せぬため、研究を疎かにしがちになるのは残念なことである。これらをあらかじめ知っているか否かは、一生の運命を左右するくらいに重大なる意義を持っている。(p.73)
☆これは現代も全く同じだ。
●小学校以来同級で早稲田大学まで出た富各(とみまさ)は、勅語が全然書けなかったために、あたら有為の身をもって幹部候補生の資格を失い、六月の末他の初年兵と共に第一線に送られてしまったのであった。(p.74)
☆この友人も、それが大事だとあらかじめわかっていれば人生が変わっていただろう。
●野砲兵と馬、それは切っても切れぬ関係があり、人間よりも馬の方が遥かに大切であるとは、班長までも明言しているくらいである。(p.75)
☆このあたりから、馬の扱い方がかなり詳しく書いてある。
●二年兵はただ、我々初年兵を奴レイのごとくに、否機械のごとくに扱い、苦しめ、いじめるより他何の仕事もないのです。噂に聞いていた、汽車遊び、重爆撃機遊び等、やらされました。・・・(中略)・・・いいと思っていた戦友も、いよいよ本性を現わして来ました。1日に2回くらいの割合でなぐられています。兵営内には一人として人間らしい者はいません。(p.86-88)
☆一致団結して敵と戦わねばならないという時に、何をやってるんだか。
●最近文部省が中等学校の英語を廃するとの記事を見たが、何ともいえぬ為政者への反感を感じるのだ。アメリカでは日本と戦争が起ってより日本研究熱がきっとはげしく台頭しているに違いない。敵に勝たんとする者、敵をよく知らねばならぬのではないか。今こそ英語をもっと普及し、一層敵国を国民一般に知らさねばならない時だと声を大にしていいたい。(p.95-96)
☆一兵隊の方が頭がいいじゃないか。
●学生兵と読書……学生兵にとって辛かったことの一つは、軍隊内で自由に読書ができないことであり、陸軍では書物をいっさい許されぬ場合が多く、海外でもある種の本(武士道を説いた 『葉隠』 )のみ携行がゆるされるという状況であった。(p.166)
☆今、こうやって自由に読書できているのもありがたいことなんだなぁ。活字に飢えて、メンソレータムの効能書きを何度も読んでいる人もいた。わかる気がする。
●夕食後の点呼がすむと、古参兵による新兵いじめの地獄が始まり、「汽車遊び、重爆撃機遊び」などの変質者的な私的制裁が横行し耐えられずに自殺する兵士もでた。そのグロテスクで息づまる人間関係と日常生活の情景は、野間宏の 『真空地帯』 に描かれている。(p.192)
☆ちょっと読んでみたい
●世界が正しく、良くなるために、一つの石を積み重ねるのである。なるべく大きく、据りのいい石を、先人の積んだ塔の上に重ねたいものだ。(p.208)
☆こういう心掛けで死んでいったのだ。
自分はこんなところで無駄死にしてしまうのだという悔しさはみじんも感じられない。
●今になって落ち着いたというか、もう学問など出来ぬと半ば捨鉢とでもいう気持ちになると、小説がむやみに読みたい。長い間の念願、 『神々の復活』 を読むことにして本棚から取り出す。…………ああ もっと本を読んでおけばよかった。まだまだ興味ある本は沢山ある。無限だ。日暮れて道遠し、との心境か。落ち着いて冷静に、読書に余命を送ろう。(p.214)
☆こういう声をもっと聞きたい。達観した人ばかりじゃなかったことにドキリとさせられる。
●毎日多くの先輩が、戦友が、塵芥のごとく海上にばら撒かれて、――そのまま姿を没してゆく。一つ一つの何ものにもかえ難い命が、ただ一塊の数量となって処理されてゆくのである。(p.298)
☆昨日まで話してた人がどんどんいなくなっていく。それが戦場というものだろう。精神を保てるのか。わずかな時間をぬすんで読む書物が清涼剤となってくれると書いている。
●この手紙は出撃を明後日にひかえてかいています。ひょっとすると博多の上をとおるかもしれないのでたのしみにしています。かげながらお別れしようと思って。(p.344)
☆出撃を明後日にひかえて母に出した手紙。胸に迫ってくる。
【アクションプラン】
・続いて、第二集 (『
第二集 きけ わだつみのこえ』) を読む。
【評価】
評価:★★★☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
戦争で散っていった若者が何を考えていたのか知りたい時に。