2015年03月24日

反証 六本木クラブ襲撃事件「逮捕からの700日」

反証
反証
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石元 太一
双葉社
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反証
石元太一/著 (双葉社) 2014年
1,300円+税



【概要】
警察、検察により仕掛けられた「証拠の隠蔽と捏造」そして、ただ一人「無罪」を訴える理由を明かす!衝撃の獄中手記。(「BOOK」データベースより)


六本木クラブ襲撃事件とは
2012年9月に六本木のクラブ「フラワー」で飲食店経営者が複数の男達に撲殺された事件、いわゆる「六本木クラブ襲撃事件」で、2013年1月9日、警視庁麻布署捜査本部が公判中の石元太一に凶器準備集合容疑で逮捕状を取った。事件前後に金属バットを持って現場に集合したとされる関東連合元メンバーらと連絡を取り、合流するなどした疑いが持たれている。31日にはこの殺害に直に着手した容疑、すなわち殺人容疑で再逮捕。結果、殺意の立証の困難性から殺人罪での起訴は見送りとなり、傷害致死罪による追起訴を受ける運びとなった。区分審理で詐欺罪の有罪判決が認定された後の同年12月に東京地裁で傷害致死罪等の裁判員裁判が開かれ、12月16日、「事件を発生させた張本人」として懲役22年の長期に亘る刑を求刑された。東京地裁は「事件の直前に現場を離れていたが、対象の男性の来店を仲間に知らせ、凶器を持ってクラブに向かう仲間の様子を目撃していたことから傷害致死罪の共謀が成立する」としたうえで、「先輩が首謀した抗争に連絡役として協力したにすぎず、事件の黒幕と位置付けることはできない」として、懲役11年の実刑判決を言い渡した。東京地検はこの判決を不服として東京高裁に控訴。2014年(7月14日)にはこの事件についてを記した獄中手記『反証 六本木クラブ襲撃事件「逮捕からの700日」』(双葉社)を上梓している。2014年12月18日、東京高裁は「襲撃は計画的かつ迅速に行われ、被告人も十分予測していた。計画、準備段階で深く関与した責任を、一審判決は過小評価した」として一審判決を破棄し、懲役15年判決を言い渡した。(Wikipediaより)



【動機】
著者・石元太一氏は無罪を主張している。

〈有罪前提の裁判が進んでしまっている以上、この本を通して、今回の裁判の在り方に疑問を持って異議を唱えてくれるのは世間しか残されていない。〉 ということなので、そういう目的で読んでみる。




【抜粋】
●シャワーを出てからバッグを持ってすぐに本棚の前に行き、時間がある時にでも読もうと思っていた本や、勉強のための参考書を20冊ほどバッグに詰め込んだ。(p.14)

☆読書ブログなのでこういう読書や書物に関する箇所は自然と目を引くことになる。

それにしても、警察に踏み込まれているときに冷静にシャワーを浴びたり、バッグに本を詰め込んだり、旅慣れてるなぁという印象を持った。
自分だったらどういう本を持っていくかなぁと考えたりして、親しみがわいた。
20冊も選ぶとなると私だったら半日がかりかもしれない。



●俺は不安を払拭するためにも、まったく誰とも関係ない弁護士を呼び、事件の内容と自分の事件当日の行動を説明し、客観的な意見を求めたら、
「絶対に認めない方がいい」
 とのことだった。そして、
「もし、やっていないことを認めて、後で後悔して裁判でひっくり返そうとしても、それは例えどんないい先生をつけたって難しいこと。石元さんが後悔したくないと思うのであれば、選任している先生の言うことであっても、今は従うべきではない」
 とも言ってくれた。(p.44-45)

☆このアドバイスで無罪を求めて戦うことに決めたようだ。



●そう録音、録画といえば、俺が事件当日に乗車したタクシー内の録音、録画があったことには驚きだった。結果として俺にとっては出てきた方が良かったのだが(検察側としては最初自信満々で出してきたので、あまり見当違いに証拠として出したことを後悔したのではないだろうか)。(p.49)

☆タクシーって録音、録画があるのか。知らなかった。



●俺から刑事さんに言えることは、ちゃんとホテルの清掃員さんにも口止めしておかないとバレちゃうよって。カマをかけたり、チップを渡せばバッチリだから。(p.50)

☆そういえば、清掃員さんが実は……というのはよくある話である。ちなみに、こちらは刑事さんに尾行されてたけど、清掃員さんにチップを渡してたら事前に教えてもらえて助かったというお話。うーん、抜け目がない。



●「加地伸行という儒学者研究の第一人者の本で、 『他者の幸せのために生きよ 祖父が語る「こころざしの物語」』 という本がある。もし機会があったら読んでみてくれ」
(中略)
 俺は知識の上に学ばなければいけないことを忘れていたような気がした。その知識を誰かのために使おう。何かに役立てようという気持ちが欠如していたんだ。(p.60-61)

☆留置所で詐欺事件の捜査員に薦められてこの本を読んだことで、石元氏は他人のために自分ができることは何かというのを考えるようになったようだ。



●今回逮捕されてから、たくさんの本を読んだのだが、留置場から拘置所に移送される時に、差し入れてもらった本を数えると527冊。(p.62)

☆7か月で527冊。すごい数だ。1日2.5冊ペース。



●そんな拘置所生活で一番良い点は、自分で食糧(缶詰やお菓子、調味料など)が購入出来ることだ。それだけではない。外部から差し入れてもらうことも可能なほか、筆記用具やノートなどが購入出来、しかもそれらを常に居室の中に置いておけるといった点ではないだろうか。(p.70)

☆筆記用具やノートを常に居室の中に置いておけるだけで喜びを感じられるようだ。


●でも、俺自身、最もありがたかったのは、室内に本を何冊でも置けるということだ。(p.70)

☆あれ? 10冊までじゃなかったっけ?

佐藤優 『獄中記』 を確認してみると、<私本3冊、宗教経典・教育用図書7冊、パンフレット10冊の枠> とやっぱり書いてあったので不思議に思って調べてみると、

2005年に法律が改正されて制限が無くなったようである。


エロはOK、脱獄と自殺はNG? “刑務所タブー”を破った問題作 - 死刑囚小田島獄中ブログ
http://knuckles.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/okng-def1.html

 近年、“塀の中”の読書事情が劇的に変革したのをご存じだろうか? 2005年、およそ100年間にわたって受刑者に運用されてきた監獄法(1908年公布) が全面改正され、受刑者の読書事情が大幅に改善されたのだ。新法の名称は「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」、通称「刑事収容施設法」。受刑者の処遇に関係する部分は06年5月に施行された。

 新法の最たる特徴は、受刑者(法律では被収容者と呼称)の「権利義務と矯正職員の権限」を明文化した点と、「受刑者の本を読む権利」を保障(所長権限による、という曖昧な表現も多く見られるが)した点である。読書に関していえば、例えば旧法では、多数の本を所持していても手元における冊数は3冊(学習参考書や辞書類は冊数外の扱いになっていた)と制限されており、残りは“領置”と呼ばれ、倉庫に収めることになっていた。読み終えた本を倉庫に戻し、新たな本と交換する場合は、“領置下げ”という願箋を書いて、下付願いを出さなければ閲読は許可されなかった。それが新法では改正され、手元に何冊でも置けるようになったのだ。


10年も前に改正されてたのか。 
そういえば佐藤さんの本は2002年から2003年頃の話だ。



●工藤と俺は20代前半の頃、一緒にいることが多かった。彼は未成年の頃、当時敵対していた暴走族グループの少年1名をナイフで刺し、死なせてしまったことで特別少年院送致という処分を受けていた。だから、彼が少年院を出院した後に起こったトーヨーボール事件で、同じ特別少年院送致となった俺のことを境遇が似ていると言って、何かと目をかけてくれていた。(p.74)

☆トーヨーボール事件は工藤氏は関わっていなかったのか。
じゃあ 、『不良録』 に出てきた憧れの先輩って誰なんだろう?
トーヨーボール事件の主犯格ということで網走刑務所で懲役6年半も務めたらしい。



●その後、自分に合った職を見つけるため、いろんなことに挑戦していたのだが、彼は昔から頭の回転も早く、性格も社交的だったので、俺は彼に広告代理店という仕事を勧めてみた。
 なぜ、この仕事を勧めたかというと、1つは学歴にはあまり左右されず、とにかく優秀な人材を求めている会社があった。もう1つはこの業界には、昔やんちゃをしていたという過去を持っていても、セールスマンとして成績の優秀な人間が多かったからだ。そこにはそういった人間に共通するスキルがあったのかもしれない。
 結果、彼は入社後ほどなくして、トップセールスマンとなるのだが、ある日今の会社を辞めて独立することにしたと彼から連絡が来た。この仕事を彼に紹介したのは自分だということもあったので、素直に嬉しかった。そして、何か手伝えることがあればという気持ちから、俺は非常勤という形で彼の会社をサポートすることにした。(p.84-85)

☆その彼が証言台に立ってくれたそうだ。やっぱり日頃からいろんな人の世話をしたり面倒を見たりしていると、いざというときに助けてくれるものだなぁ。ところが、絆が深いということで彼の証言は信憑性が無いとされてしまった。なにかがおかしい。



●そこでPPC広告と平行して行ったのがオプトインメール広告だった。広告メールを受け取ることを承諾している人だけに送信されるメール広告で、メールの配信数などで広告費用が決まる。さらに配信対象者を絞りこんだものがターゲッティングメール広告。(p.87)

☆オプトインメールってちょっと前どこかで聞いた気がする。どこだったかな。




●突然、工藤明男から言伝があると言われた。
(中略)
「あの本の最後に書いた2人の友と1人の後輩の心の支えになりたいという1人の後輩とは太一のことだから」
(中略)
言い訳じみた言葉ばかりを聞かされ、俺はうんざりし、よくもこんなことが本気で言えるものだと、思わず感心したくなるような内容だった。(p.92-93)

☆あらためて 『いびつな絆』 の「“生贄” にされる石元太一」の章を読んでみると、工藤氏は石元氏のことを本気でかばっているようにみえる。

 もし太一が、自分の罪を少しでも軽くするために、本来の自分の立場を説明するには、見立君との主従関係や、関東連合内部の慣習を説明しなければならない。だが太一の性格では、仲間のことを悪く言えるはずがない。さらに言えば、見立君の支援者が手配した弁護士を選任(後に辞任)していたこともあって、へたな供述はできないだろう。( 『いびつな絆』 p.173より)


六本木クラブ襲撃事件のおおよその真相はこんなところだろう。
どうして工藤氏と仲たがいしてるのだろう?


と思っていたら、出てきた。


●疑問に思い、揉めた当事者でもあった見立君に尋ねると、
「工藤(明男)が“仲間の文句を言ってるのだから馬鹿にしてないですか? やっちゃいましょうよ” なんて俺とI君が飲んでいる席に現れて、あまりにも煽るもんだから俺も酔っぱらってて乗っちゃったんだよ。ほら、I君もあの通り全然引かない性格だろ?」
 という話を聞いて、なるほどなと思った。(p.136)

☆ちなみにこのIさんというのが六本木クラブ襲撃事件の現場となった「フラワー」のオーナーである。
関東連合の中でも石元氏だけはIさんと仲が良かったという。



●それにしても、事前にKにしろ誰にしても、襲うかもしれないと聞いていたり、思っていたりしたのなら、自分の携帯電話で自宅にまでタクシーを呼ぶなんて足のつく行為をするのだろうか。(p.194)

☆普通に考えればわかるとよく主張しているが、それを逆手に取って用意周到に計画していたのでは?と思われたらもうどうしようもない。裁判の難しいところだ。




●今、俺が生活しているフロアは、死刑囚の人が多いのだが、死刑が確定すると、週に一度だけ映画を観ることができるため、居室の中に小さなテレビが入る。だから廊下などを歩いていると、どの人が死刑囚なのかがすぐにわかる。(p.263)

☆死刑囚はテレビがあるのか。知らなかった。
ちなみに、拘置所によって違うらしい。




【所感】
冤罪事件だったら大変だと思って擁護するつもりで読んでいたのだが、
相手の矛盾点を突いているつもりの箇所がイマイチ説得力に欠けていて
なんだか逆にあやしく思える部分もあった。

本当に潔白ならばもったいない書き方だと思った。

当然読んでいる方はスッキリしない。
水戸黄門が「この印籠が目に入らぬか!」と言って印籠を出す場面で、微妙に違う茄子みたいな物を出したり。
そういうシーンが思い浮かぶ。

取り調べなどで疑われることが日常になって、逆にすべての人を疑うようになったのかもしれない。
まさに疑心暗鬼に陥っていると感じた。



細かい矛盾点は多いけど、本書の通りとするならば、無罪だという主張もわかる。

バッドを見てないから襲撃するとは思わなかったという主張だけど、
抗争相手を見つけて集まった時点で過去の経験からこうなる可能性があるということは予想できるわけで、
芸能活動を目前に控えてて抗争に関わりたくないから、
何とか切り抜けて事が起こる前に現場を去った。
だからセーフだと思っていたというのが本当のところだろう。

もしこれが最終的に有罪になるとすれば、
そうなる運命だったとしかいいようがない。




【アクションプラン】
・『他者の幸せのために生きよ 祖父が語る「こころざしの物語」』 という本を読んでみたい。



【評価】
評価:★★★☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
裁判に興味のある人、六本木クラブ襲撃事件について知りたい人は必読。




【簡易年表】
2012年9月2日 六本木クラブ襲撃事件。
2012年9月7日 石元太一氏を別件逮捕(詐欺罪)。
2013年11月27日 詐欺事件で有罪判決。
2013年12月16日 六本木クラブ襲撃事件一審で有罪判決(裁判員裁判、求刑22年、懲役11年)
2014年7月14日 本書(獄中手記『反証 六本木クラブ襲撃事件「逮捕からの700日」』)を出版。
2014年12月18日 六本木クラブ襲撃事件二審で一審の判決破棄。(懲役15年)

 
posted by macky at 23:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | 体験記・手記 | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする