水木しげる/著 (新潮文庫) 2002年
438円+税
【動機】
水木サンの本を乱読中。
寝る前に少しずつ読んでいた。
本日、水木サンが旅立ちました。
ご冥福をお祈りいたします。
【所感】
水木さんの自伝は何冊も読んだが、全く同じものは無く、毎回新たな発見がありおもしろい。
【概要】
子供の頃はガキ大将で妖怪研究に夢中。その結果、入学試験は失敗、学校は落第、就職しても寝坊でクビ。そのうち戦争が激しくなり、兵隊として南方の最前線に送られ、片腕を失いながら九死に一生を得る。終戦後、南の島で見つけた「楽園」に魅せられながら、赤貧時代を経て「ゲゲゲの鬼太郎」を生むまでを、激動の現代史に重ね合わせつつ描く、なんだか元気が出てくる自伝的作品。(「BOOK」データベースより)
【抜粋】
●毎日ブラブラしているのもたいくつなので、近くの古本屋で本を買う。
それが、なぜか哲学書の方に目が行くのである。
べつに、むずかしい本を読んでカシコクなろうと思ったわけではない。
(中略)
だれか一人、これだというのはないかと、キリスト教の本だの、ニーチェだの、ショーペンハルエルだの、さまざまな哲学者や文学者の本をひっくりかえしていると、エッケルマンの 『ゲエテとの対話』 という本にふと出会った。これがやんわりとしてなかなかいい。それからは、岩波文庫のゲーテものを読みふけり、後に、軍隊に行く時も何冊か持って行くまでになった。(p.60-62)
☆いろいろと哲学書を読み漁った中でゲーテにたどり着いたようだ。
●それ以降、ラバウルに船団が派遣されることはなかった。
つまり、ぼくたちは、ラバウルに派遣された最後の兵隊だったのである。(p.84)
☆水木サンがずっと二等兵のままだったのはそういう理由があったのか。
●最前列でハナクソをほじくりながら講義を聞いていると、金原省吾という先生が、
「右手で筆記して、左手でほじくったらどう」
と、教壇から忠告。
「ぼくは、左手はありませんから」
と、いうと、
「失礼」
先生はすまなさそうにしたが、考えてみれば、「失礼」なのはぼくの方かもしれない。(p.133-134)
☆終始このような調子である。水木サンのエピソードはどれもユーモアがあっておもしろい。
●不思議に思っていると、べつの学生が、二日おきに血を売って生活していると教えてくれた。いわれてみると、なるほど、ガンさんの顔色は日ごとに青ざめていくように思われた。(p.134)
☆昔は血が売れたようだ。今は献血などでも売ることはできない。買い取り制にすると悪い血が集まってしまうからだそうだ。
●こんなに働いて、どうしてこんなに貧乏なのだろうと、なさけないよりも不思議さがさきに立つくらいだった。(p.172)
☆同じ! ほとんど休みなしで働いてるのに。
【アクションプラン】
・ 『ゲーテとの対話』 を読んでみる。
【Amazonレビューより】
・人気マンガ家の壮絶半生 2004/10/25
本書は筆者が高等小学校卒業してから、人気マンガ家として大成するまでの悪戦苦闘の道のりをえがいています。
筆者は高等小学校を卒業したあと、算数がダメで進学は無理ということで、関西で就職することになります。しかし仕事も落第の烙印をおされてしまいます。こんどは軍隊にとられまいと美大への進学をめざして中学校に通いますが、のんきな性格が災いして、これもものに成らないうちに招集されてしまいます。
鳥取の連隊に入隊しますが、マイペースは相変わらずでビンタをくらう毎日。ついに見切りをつけられ、南方の最前線へ送られますが、九死に一生をえます。このときの経験をもとに、筆者はたくさんの自伝エッセイ、自伝マンガを表すことになります。
無事に帰国したのもつかのま、筆者を待ち受けていたのは、貧乏との戦いでした。魚屋、紙芝居作家、貸本マンガ家と活路をもとめていきますが、安定した生活を手に入れたのは40才をすぎてからのことでした。
「生存競争」という表現がふさわしいほどの紆余曲折の半生にもかかわらず、本書にはそこはかとないユーモアが漂っています。おそらく社会や世間への恨み言というものを全面に出さないことが、筆者の文章を特色あるものにしていると思います。文体が平易なのは「のびのび人生論シリーズ」の一冊として書き下ろされたからです。
筆者の自伝エッセイをいくつか読んでみたのですが、筆者の西宮時代など本書でしか読むことのできない記述があります。筆者の作品から筆者本人に関心をもたれた方は、『のんのんばあ』と本書をまずお読みになることをおすすめします。(Hさん)
・読むべきでした 2002/9/20
受験に失敗した、
受験に成功したけどやることが無くて悩んでいる、
やりたいことがあってもやれない、
自信が無い、
もう人生が終わった、
精一杯、
自分だけ取り残されている、という人は今すぐに読むべきです。
///追記///
平成27年11月30日、水木しげるさんの訃報をネットのニュースで知りました。
調布近くに住んでいるので、一度でいいからお会いしたいと思っていましたが、叶いませんでした。
この本をはじめ、水木しげるさんの作品でたくさん救われ、笑わされ、楽しませていただきました。
ありがとうございました。(Hさん)
【評価】
評価:★★★★☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
水木さんの自伝が読んでみたいって時に。
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