2016年01月03日

のんのんばあとオレ

のんのんばあとオレ (ちくま文庫)

のんのんばあとオレ
水木しげる/著(ちくま文庫) 1990年 (単行本は 1977年)


【概要】
水木しげるの自伝書。主に少年記である。


【動機】
水木サンの著書を乱読中。


【所感】
「のんのんばあ」というおばけ(妖怪)の話かと思ったら、自伝書だった。
まるで、小学生版ビーバップである。



【抜粋】
●オレたちはボート二隻で沖へこぎ出し、ひっくり返す遊びを始めた。
 ほかの連中にはおもしろいだろうが、六歳のオレにはかなわない。沈むと、死なすわけには行かないから助けてくれるが、また海に投げ込まれる。これを何回もくりかえすのだ。なげこまれるほうはたまったものではない。塩水は飲む、目は痛む。だが、ガキ大将のほうはへいきだ。さすがのオレも胸がドキドキした。
 五、六回目のときだった。
 ザッブーンとボートをひっくり返し、海にはじき出されるや、苦しまぎれに必死で手足を動かした。
 すると、なんだか空(くう)にあがったような気持ちになった。
「あっ泳いだ!」
「ゲゲが泳いだ!」
と、口々にまるでイヌでも泳いだようにいう。
 そのときにはじめてオレは泳げたのだった。
 そのつぎからはもう完全にひとりで泳げたのだから、ガキ大将の教育の力もたいしたものだ。
 のちに、オレがガキ大将になったとき、この例にならい、泳げない子をいきなり海になげこんだら、やはり一日で泳げるようになった。
 つまり、泳ぎなんていうものは、必死にもがけば、カミサマが浮くようにしてくれるものらしい。(p.69-70)

☆昔は荒っぽいな。


●クマは四年生だからオレより上級生だ。負けてもオレは恥にならないとおもったから、いきなりなぐりつけてやった。どうじに、クマの鉄拳もとんできた。(p.79)

☆負けても恥にならないからケンカをしかけるというのがおもしろい。普通だったら負けそうだからやめとこうってなるんだろうけど。


●サーカスではジンタといって、「美しき天然」という、ものがなしい歌をかなでている。テントの外につながれたゾウは、ジンタにあわせているわけでもないだろうが、首をふっている。(p.81)

☆「美しき天然」ってどこかで聞いたことがある。昔、祖父が「美しき天然」の歌詞を手描きで書いていたのを思い出した。当時は昔の歌だとは知らず、流行りの歌だと思っていた。

ちなみに、「うつくしき天然」ではなく、「うるわしき天然」である。麗しき天然。
九十九島の美しい風景を歌った歌だそうな。





ジンタ: 明治中期に興った民間吹奏楽団の〈市中音楽隊〉に,大正初期につけられた愛称で,その演奏を模した擬声語といわれる。最初の団体は1887年に海軍軍楽隊出身者を中心に,30名ほどの編成で発足した〈東京市中音楽隊〉で,行進曲,ポルカ,ワルツ等を演奏し,まだ民間オーケストラもなかった当時,西洋音楽の一般への普及に大いに貢献した。これが日清戦争を機に,全国的に普及流行した。しかし乱立ぎみとなって,経済的な理由から広告業者等に依存してサーカス,映画館等の客寄せ,あるいは広告宣伝の町回りをするようになるとともに,編成も10名以下となり,質も低下し,曲目も通俗曲を小ぶし風の装飾をつけた独得の哀調をおびた節回しで演奏するようになって,大正後半にはすっかり衰退,ついにはチンドン屋等に取って代わられて消滅した。(『世界大百科事典』より)



ちなみに、こちらのイントロを聴くと、あぁあの曲か!となる。次長課長がよくやるアレかな。






●数日後、オレは家の二階で、なにか書いてある原稿用紙を見つけた。
 なんだろうとおもって読んでみると、おやじもやはり第三丸の事件がおもしろかったのか、題までおなじ「第三丸の爆発」という恋愛小説を書いていたのだ。これには驚いた。
 だが、おやじはいつものくせで終わりまでは書かない。途中でネタがつきてしまうらしい。(p.94)

☆おもしろいおやじさんだったようだ。同じ事件を題材にしても、水木さんは怪談もどきの大長編、そのおやじさんは恋愛小説となっている。


●夜になると、紙で作った相撲とりに相撲をとらせなければならない。
 古ハガキなどですもうの人形を作って、台の上に乗せ、手でトントンと台をたたいて勝負を競わせるのである。(中略)本物の相撲取りとそっくりに腹の出たのや背の高いのを作り、本物とおなじ名まえを書き、星取り表まで作るのだ。しかも、幕内からはじめて、十両、三段目、序の口まで作っていくから、番付も拡大し、何百とある相撲取りに相撲を取らせなければならないから、毎日かなりいそがしい。(p.104)

☆全く同じ事を私もやっていた。同じことをやっている人はなかなかいないだろうと思っていたから驚いた。しかも、私の場合は幕内だけだったから、私なんかよりもずっと本格的だ。それでも毎場所、番付を考えるのが楽しかったなぁ。


●ゴローは激怒して、世にもおそろしい「相手なし」をオレに宣告した。
 もう、こうなると、だれも遊んでくれない。
「ええか、もうみんな、ゲゲと遊ぶな。ええな」
 ゴローはみんなにくりかえした。みんなのオレを見る目つきがちがってくる。(p.164)

☆今のいじめ問題の関係者に読んでもらうとどう思うだろうか。

「相手なし」という言葉は初めて聞いた。私が子どもの頃は、たしか「ムラハチ」とか言ってた。「いじめ」と言って大騒ぎしているが、今も昔もそんなには変わらない気がする。

弱いものいじめをしない理由が、かわいそうだとかそういう理由じゃなくて、弱さがうつりそうだからというところが、強さに憧れる水木サンらしい。


●母が、おまえによく似た子どもが新聞に出とるという。名まえは山下清といって、精薄(当時は、チエ遅れというような体裁のいいことばはなかった)の病院にいるという。そこで、毎日、虫を集めて絵をかいているというのだ。(p.165)

☆今ではすっかり有名になっている裸の大将である。当時はまだあまり名前も知られてなかったが、同じ学年と言うことで、兄弟のような親しみを持ってライバル視していたようである。


●校長室に立たされていたときに見た山あり谷ありの立体地図だ。山陰地方が実物のように作られてて、校長室にかざってあった。
 あれをやってみようと、板に粘土をつんで、紙をはって色をつけ、同じような立体地図を作った。
 できあがると、上からながめ、横からながめ、自分の住んでいる地方が自分の手にはいったような気分で、毎日毎日、見ていた。(p.173-174)

☆これもやってみたいなぁと思いつつも、やり方がわからないし、時間がかかりそうだしということでずっと後回しにしていることである。水木サンは小学校五年生くらいでこれをやるのだからすごい。

私が作ろうとしているのは主に山だ。等高線をもとに、山を正確に立体地図にしたいと思っている。この山の頂上からはここが見えるとか、そういうのが作りたい。いつのになることやら・・・。


●これは空腹も空腹だったが、もともと体力はあったし、ほかにも原因があるような気がした。おとなになって、柳田国男の 『妖怪談義』 を読むと、「ひだる神のこと」という一文があって、おなじようなことが書いてある。旅の途中で死んだ人の悪霊が、ダルというものになって、これが道行く人にとりつくのだという。そういうときには霊をなぐさめる意味で食物を一口食えばいい。むかしの人はそのためにフトコロに干飯を持って歩いたそうだ。(p.210)

☆ん、この話は聞いたことがあるぞ。なんだこの既視感は。ダルという言葉もどこかで聞いたことがある。

食べ物を口に入れると直ったというからシャリバテかな。


【アクションプラン】
・講談社漫画文庫も読んでみたい。 →読了(130118)


【評価】
評価:★★★☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
水木サンのことをもっと知りたい人に。
昔の小学生の生活が知りたい人に。


【最後にひと言】
それにしても、のんのんばあに育てられたら誰でも水木サンのような妖怪博士になりそう(笑)
やっぱり、育つ環境は大事だと思った。








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(120924 読了)
posted by macky at 21:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 体験記・手記 | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする