2016年01月21日

上杉佐一郎伝

上杉佐一郎伝
部落解放同盟中央本部 /編集 (解放出版社) 2002年


【所感】
道―部落解放運動と私』 を読んで、さらに知りたいと思って手に取ったが、
おもしろくて一気に読んでしまった。



【概要】
「解放の父」松本治一郎が戦前から戦後にかけて切り拓いた部落解放への道を、その遺志を継承し、さらに広い道にした偉大な指導者・上杉佐一郎。その生涯に学ばんと、七回忌にあたって刊行される評伝。(「MARC」データベースより)




【抜粋】
●糸山に言わせると、議員としての佐一郎の一番の功績は「二日市町に隣接する筑紫村の岡田、下見地区の大火をきっかけに、地元負担金の問題点を追及し、地元負担金廃止の口火をきったことだ」と言う。道路を広くしたり、新しくつくろうとすると、地元負担金が必要だ。これでは経済的に苦しいところは、とても手がつけられない。その結果として、狭い道路が入り組み、消防車も入れないまま放置され続けた。そのことが火事を大きくした、というわけだ。(p.73)

☆地元負担金についてもっと調べてみたい。



●基本法の制定に意欲を燃やしていた松本の本音でもあったが、松本には別の心配もあった。それは、さすがに先の先を見越した松本の、すぐれた先見性でもあった。
「サーちゃん、同和対策の事業をやると必然的に大きな金が動く。部落のなかには貧乏しとるもんが多いから、指導者のなかには、やっぱり金に目がくらむもんが出てくる。不正をやる奴が出てくるということだ。早くも、それをもくろんで解放同盟の役員になりたいと言い出すもんが出てきている。現に、おれんとこに 『松本センセエ、わしを解放同盟の役員にしとくんなはれ』 と言ってくる輩もおる。利権。これは気ィつけんと大変なことになるぞ。目的は事業じゃない。部落の開放だからな。(p.208)

☆事業法が成立したことで、松本治一郎氏は同和対策事業が利権の温床になることを危惧していた。



●「きょう、このホテルに集まってもらったのは、水盃を交わすためだ。あしたの総理府の行動では、何人かの人は家に帰れないかもしれないことも覚悟してくれ。混乱すれば機動隊が介入して諸君を逮捕するだろう。逮捕されたら、すべては、この上杉佐一郎の指示で動いたと言うように……。最後の責任は俺がとる。諸君! がんばってくれ。ともにやろうではないか」
 と呼びかけると若い隊員たちは、大きくうなずき、やがて拍手がわき起った。(p.230)

☆活動家ってのはすごいな。こんなことを言われれば命を投げ出して働くであろう。



●戦後間もないころから今日まで、関西の財界は “自民党の金庫” と言われてきた。党にも政治家個人にも、大阪を中心とする関西の財界は多数の政治献金をして保守政治を支えてきた経緯がある。かつては、「自民党の新しい内閣が成立すると、新首相は必ず、第一に関西遊説をし、大阪の財界人に会う」と言われた。政治資金集めのためである。(p.235)

☆関西がそこまで重要だとは知らなかった。



●「差別事件を起こすと部落解放同盟は、徹底的に、その相手を責め、やっつけると考えているもんが多いようだが、そうじゃない。もちろん、その非は責める。差別行為も許さん。これを支える意識や組織、そして慣習なども許すわけにはいかん。憎むべきは差別だ。人ではない。だから、その間違いに気づいて再出発しようとする人や組織には協力し、惜しみない支援もする。見事に変革をとげて立ちあがったもんは、われわれの仲間であり、同志だ。そうさせる営みが 『糾弾』 ということだ。(p.289)

☆差別した相手を完膚なきまでに叩くのが 『糾弾』 かと思っていたが、そうではないらしい。




【アクションプラン】
・映画 『橋のない川 (東陽一監督作品) [DVD]』 に出演されているようだ。観てみたい。 →観た(160129)




【評価】
評価:★★★★☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
上杉佐一郎氏や解放同盟について知りたいときに。

 
posted by macky at 23:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | ノンフィクション | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする