2016年01月23日

京の花いちもんめ

京の花いちもんめ―ルポ・古都つぶしに立ち向かう市民
柴野徹夫、いずぶちときこ/著 (機関紙共同出版) 1989年
1,600円+税



【所感】
京都について詳しくなった。

詩や歌がたくさん出てくる。

そういえば、本のタイトルも歌の歌詞だ。

開発には一長一短があるので、
それぞれの立場に分かれてディスカッションするのにちょうどいい題材かもしれない。




【概要】
いま、京都が危ない! 財界戦略で古都をニューヨークや東京のようにしてはならない。日本のふるさと守って立つ京都市民から全国へのメッセージ。(「BOOK」データベースより)




【抜粋】
●時間をケチケチすることで、本当は、ぜんぜん別のなにかをケチケチしていることには、だれひとり気がついていないようでした。(p.8-9)

☆やらないことを決めて時間を節約するだけではダメ。時間を節約して何をするかが大事。没頭していることにつぎ込む!



●人間から生きる時間をむしろとるんだからな……人間が節約した時間は、人間の手には残らない、われわれが奪ってしまうのだ……」(p.10)

☆ 『モモ』 を読んだとき、時間を節約してあくせくするのはよくないと思ったが、そうではなくて、節約した時間を何かに生かすことが大事。……と思って記事を確認してみたら、結論で同じことが書いてあった。



●「近代化」とは、そこに住む人々を追い払い、伝統的な街並みや景観をぶち壊して、鉄とコンクリートでできたビル街にしてしまうことらしいのです。(p.13)

☆再開発が一概に悪いのではなくて、それによってどれだけ豊かさが享受できたかが問題。



●堤と塚本は、ともに滋賀県出身、いわば成功した「近江商人」同士の間柄だ。(p.30)

☆やっぱり近江商人っていうのはすごいんだなぁ。



●早くから、「京都駅改築協議会」を発足させて基本構想が練られてきた。この協議会は、JR・府・市・商工会議所の四者で構成されており、座長は、塚本幸一京都商工会議所会頭がつとめている。
 これをうけ、第三セクターとして新駅舎の建設にあたる「京都駅開発準備会社」(仮称)も発足した。資本金三千万円。出資比率は、JR西日本60%、地元財界30%、府と市が各5%の分担だという。 (中略) 京都駅の改築は “第三セクター方式” とされているが、目下のところ、府も市も5%の出資をしているだけだ。ただ一人の職員も出向させてはいない。いいかえれば、プロジェクトの主力は、JRと京都財界だということである。(p.44-46)

☆京都駅ビルも第三セクターだったのか。
ワコールの塚本幸一氏は1998年6月に亡くなっている。京都駅ビルの完成が1997年7月だからその約1年後ということになる。



●計画によれば、さらに西はJR二条から乙訓郡・長岡京市、また南へは醍醐から六地蔵まで伸ばす予定だという。(p.49)

☆二条から長岡京市に伸ばす計画があったのか。今もまだあるのだろうか?



●それでは市民には何が残されるのか。ビルの脇のわずかな「公開空地」とひきかえに、さらにのっぽビルが建ち、街並みや景観、環境は、壊れていく。そして、地価はさらに上がり、固定資産税や不動産相続税の重圧など、街は市民にとって住みづらいものになり、やがては、街を離れざるをえない状況にもなる。それはいま、首都圏や大阪市周辺で、これでもかこれでもかと、繰り返されている日常的現実である。(p.56-57)

☆住んでる街が開発されて発展していくといいことずくめのような気がするが、いいことばかりではないようだ。



●「これまで京都にはね、歴史的ランドマークがあった。モノサシですな。
 それは、日本最高とされる東寺の五重の塔です。あの屋根の高さが45メートル。だから市内の最高の高さ規制も45メートルでしょうが。(p.58)

☆45メートルの根拠は、東寺の五重の塔だったのか。



●ここ(京都地方法務局)へ何度か通ううちに、ふと、妙なことに気づいた。いつきても、顔を合わせる人が何人かいるのである。一目でそれと分かる中年の不動産屋の男もいるし、若い事務員らしい女性もいた。
 彼らは、そこが、まるで通い慣れた自分の職場ででもあるかのように、同業者同士、目で軽く会釈しながら入ってくる。そして、事務封筒からノートを取り出し、登記簿を丹念に見ながらメモをとる。一心不乱のその作業は、どうかすると、まる一日続けていることもあった。
「はて、あの連中、何を調べているのだろう」
 筆者のつぶやきに、同行の記者が答えた。
「不動産所有者の生年月日ですよ」
「?……」
 怪訝な筆者の顔に、彼は微笑して言う。
「もうじき、くたばりそうな地主を物色してリストアップしとるんです」
「ということは……」
「そう、相続税がらみでね、一番手っ取り早い土地入手の標的でしょうね」
 振り返ってみると、彼らは脇目もふらず、作業に専念していた。(p.80-81)

☆もうじき、くたばりそうな地主を物色っていうのがすごいな。



●いま一人の地上げ屋(41)は、不動産屋も兼ねていた。やはり「大阪で修業した」という。
「土地や不動産いうのは、一種の魔術やな。元手もかけずに、簡単にカネが儲かる。時々思うことあるよ、世の中、おかしいんやないかって。こんな馬鹿なことがあっていいのかね?
 不動産仲間でも20代や30代の若いのが、ベンツやBMWを乗り回して……。たまたま手に入れた土地が三倍にも四倍にもなる。これ、どっか、おかしいよな。
(中略)
西武、近鉄、京阪、リクルート、長谷工……、それに各財閥系開発企業。もう一つ、京都でいうたら、ワコールの塚本があくどいわな。あれが、京都市の根回しは、皆やっとる」(p.83)

☆地上げを陰で演出する大元。



●いつ果てるかと思われたどよもす人びとの勢いは、11時を過ぎて日和神楽が出る頃、ようやく、途切れ途切れになり、それぞれの帰途へ動きだす。
そうして宵山は、静かに終わっていくのだが、日付が変わり、人の数が少なくなり、心なしか涼しい風が出てきたか、と思う頃、まだ醒めやらぬ町がひとつある。
 南観音山の百足屋町では、蓮台にのせ、布でしばりつけられた観音様が人々にかつがれ新町通蛸薬師から錦小路を、町役に抱かれた善財童子を先頭に駆けて廻る。(p.119)

☆祇園祭ってそんなに遅くまでやっていたのか。



●7月13日、鉾立て。とどこおりなく南観音山も組み立てられ、通りにたおやかに鎮座した。(p.139)

☆この時期は警察の取り締まりも厳しいから注意する必要がある。ノコノコ見に行って捕まってはせっかくの観光も台無しである。



●如意ヶ岳は、東山三十六峰の一部であり、大文字はその支峰である。それは市民にとっては、朝に夕に見あげる山並みだった。また、送り火の山であるばかりか、自然観察やハイキング、さらに市内を一望できる絶景地として親しまれてもいた。(p.150)

☆春になったら行ってみたい。ハイキングシューズで。



●この辺り一帯の山は、花崗岩によってできていた。花崗岩が風化したものが、「真砂」である。京都御所や銀閣寺の造園に使われている「白川砂」がこれだった。
 大文字山の北を流れる白川の名の由来は、この白い砂からきていた。(p.155)

☆真砂土は崩れやすい。一昨年の広島の土砂崩れも真砂土が多かった。



●気のいい夫婦は、「建築協定」も結ばず承諾したのだった。(p.185)

☆建築協定とは、日本の建築基準法第69条などに基づくもので、建築における最低基準を定める建築基準法では満たすことのできない地域の要求に対応するものである。



●じつは、周辺一帯の家々を、鳥ならぬネズミの大群が襲っていたのである。
「台所や天井裏をね、暴れるなんて悠長なこっちゃおへん。寝てる顔の上やら足の上を、平気で走りよりますのや……。そのうち、赤ん坊がかじられでもしたらと、気が気やない」
 旅館や食堂など客商売は、さぞ大変だろう。
 ネズミの増加は、そのままダニの大量発生を意味する。いくら殺虫剤で駆除しても追いつかないという。町内の道や溝には、ネズミの死骸がやたら目につくようにもなった。(p.223-224)

☆立ち退きで広範囲が更地になった土地の周りはネズミが繁殖するのか。飲食店が多かったからだろうか。しかも建物の密集地だし。




【アクションプラン】
・西武王国についてもっと調べてみよう。

タイミングよく、「赤プリ跡地のホテル、最高1泊59万円 7月27日開業」というニュースがあった。


赤プリ跡地のホテル、最高1泊59万円 7月27日開業
http://www.asahi.com/articles/ASJ1P5VJ6J1PULFA03F.html
(2016年1月21日20時31分 朝日新聞)

 西武ホールディングスは21日、旧赤坂プリンスホテル(東京都千代田区)の跡地の複合ビルに入る高級ホテルを、7月27日に開業すると発表した。1泊6万〜59万円と、グループのホテルで最上級と位置づける。

 ホテルは「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町」で、ビル最上部の30〜36階に入る。部屋は36〜148平方メートルの250室で、都内の系列では最も少ない。欧米やアジアからのビジネス客を取り込むねらいで、6〜7割を外国人客が占めると見込む。

 ビルには、オフィスや商業施設が入る。1955年開業の赤坂プリンスホテルは、2007年にグランドプリンスホテル赤坂に改称。再開発に向けて11年に閉館となっていた。(野口陽)


59万円の部屋は壁一面の本棚があって、本好きにはたまらない内装となっているようだ。



【評価】
評価:★★★★☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
京都の開発、高さ規制などに興味があるときに。

 
posted by macky at 02:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | ドキュメンタリー | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする