2016年03月14日

未来のことは未来の私にまかせよう 31歳で胃がんになったニュースキャスター

未来のことは未来の私にまかせよう 31歳で胃がんになったニュースキャスター
黒木奈々/著 (文藝春秋) 2015年
1,200円+税


【動機】
昨年秋、ニュースで訃報を知ったが、ご本人がガン闘病記を書かれていたというので読んでみた。



【所感】
亡くなる半年前に書かれたものだ。

つまり、復帰したよ、必ずがんを治してこの場所に戻ってくるよ、と本を書いたわずか半年後に亡くなっているのだ。

恐ろしい病気だ、ガンは。




【概要】
黒木奈々、31歳。NHK BS1「国際報道2014」のメインキャスターに抜擢され、その前途は輝かしいものに思われていた。
そんなある日、友人との食事中に突然の胃痛に襲われる。救急車で運ばれ、胃せん孔との診断で入院。しかし、それは、たんなる胃潰瘍ではなく胃がんだった……。
セカンドオピニオンを得て、胃の手術を決意。同時に、自らの病名を公表し、病と戦うことを宣言する。
キャスターという立場を生かし、同年代の働く女性たちが、がんに襲われたとき、何か力になれるのではないかという信念のもとに、がん宣告のあとの心境を綴った手記が本書である。
あくまで明るく、前向きに病と闘いつつも、32歳の女性ならではの悩みはつきない。
容姿が取りざたされる職業で、果たして自分は仕事に戻れるのか。
これまでキャリアを優先してきたけれど、もう一度、誰かと恋ができるのだろうか。
結婚は? 子どもを持つことは?
何も「あきらめない」ことを目標とする今の女性たち。その中でがむしゃらに先頭を走ってきたキャスターが突然の病に襲われたとき、何を選び、何をあきらめるのか。
揺れ動く気持ちを素直に書き記した闘病記。(Amazonより)

もう一度あの場所へ。がん闘病を公表したNHK BS1『国際報道2015』のキャスターが綴る、涙と希望と勇気あふれる手記。(「BOOK」データベースより)






【抜粋】
●「ああ、今日で番組降板になるんだ……。 『キャスター』 は私の人生そのものなのに。努力してやっとつかんだチャンスなのに――」
 番組が始まってまだ4ヵ月なのに。なんで、なんで、なんで……。
(中略)
 今わかった。私がアナウンサーになった理由。神様がここまでチャンスをくれたのは、こうやって私の経験をつらい思いをしている人たちに伝えるためだったんじゃないか? そう思えた。(p.23-35)

☆7年間フリーで頑張って、やっと念願のメインキャスターになった4ヵ月後にガンが発覚している。
黒木さんは、すぐに気持ちを切り替えて、使命だと思うことにした。



●胃がんには「早期がん」と「進行がん」がある。
「早期」は、がんが胃の表面ぐらいに留まっている状態のことで、「進行」は、がんがそれよりも深くに達している。
「 『早期』 はできたばかりのがん。 『進行』 はものすごく進んでいて、手術するのも大変」
と漠然と考えていたが、そう単純なものではなかった。
 細胞の入りこみ具合でこの二つを分類しているそうだ。(p.30)

☆そうか、進行がんってそういうことか。
早期がんに対して「進行しているがん」。

そういえば、たかじんさんも「進行がん」だと言われていた。
「あまり進行しないタイプのがん」ではなく「進行するタイプのがん」かと思っていた。

ややこしいことに、初期のがんというのもあるが、
それは早期よりも進んでいて、「進行がん」のうちの初期のもののようだ。
サザンオールスターズの桑田佳祐さんがこのタイプだったと記憶している。

「早期」と「初期」どっちが深刻?
って思うけど、「早期」発見という言葉があるように(「初期発見」という言葉は無い)、
「早期」に発見することはすごく難しいことだという。



●ちなみにセカンドオピニオンは、保険がきかないために、一般に料金が高い。がん研の場合、最初の30分が3万2400円で、以下は30分ごとに1万800円になる。(p.37)

☆セカンドオピニオンは、保険がきかないのか。こういうのも実際に体験した人ならではの話という気がする。
というか、30分で3万2400円ってめちゃめちゃ高いな。



●説明を受けながら、またしても驚いたことがある。手術はまず、腹部に小さな穴を開け、内視鏡で周囲にがん細胞がとんでないか見るそうだ。
 とんでいなければ、そのまま胃の全摘手術。とんでいたら、いったん中断。傷を縫合し、その後、抗がん剤治療を始める。それでがんを小さくして、後日改めて開腹手術となるらしい。(p.48)

☆周囲に転移していなければ胃を取るだけで済むけど、転移していたらほぼ手遅れであまり大したことはできないということか。胃を全摘するという大手術でさえ、よかったー助かったーみたいな話なのが怖い。



●そして、つくづく母の言葉に従っておけばよかったと後悔した。
 母から「保険に入りなさい」と何年も言われ続けていて、二年前にやっと重い腰をあげて最低限の総合保険に入った。(p.49)

☆ガン保険やめようかと思っていたけど、やっぱり残しておこうかな。


●ただし、少し調子が悪いなと思ったら病院には頻繁に行っていた。
 そこで血液検査をしたり、レントゲンを撮ったりはしたが、胃がんが発見できる胃カメラをしたことはなかった。全身の検査を定期的にやっておけばよかったと後悔している。(p.51)

☆意外とこれがガンの原因かも。頻繁にレントゲンを撮っていたようだ。



●中学二年生の時に、母と一緒に見た 『アンカーウーマン』 という映画がきっかけだ。(p.71)

☆観てみたい。地方のローカル局から全米のテレビキャスターになるという夢を駆け上がっていくサクセスストーリー。



●留学生向けの授業があり、そっちは何とかついていけたが、フランス人と一緒に受ける授業はつらかった。ノートを借りても、彼らは略語をよく使うので、何が書いてあるのかさっぱりわからない。大学で二年間みっちりフランス語をやって、結構できるつもりになっていたが、その自信は根拠のないものだとよくわかった。
 ただ、半年ぐらい必死に頑張っていたら、ある時からスッとフランス語がわかるようになり、しゃべるのも聴くのも苦にならなくなった。ほかの留学生に聞くと、やはり同じようにいつの間にかわかるようになっていたというので、そんなものなのかもしれない。(p.80)

☆語学をマスターするときの感覚というのはそういうものなのか。ちなみにこれは大学時代、フランス南東のグルノーブルに1年間留学していたときの話。



●フランス映画にはよく、買い物袋からはみ出すような長いフランスパン(バゲット)を持った女の子が登場する。あれをフランス人は何回に分けて食べるんだろうと疑問に思う方がいたら、一食分だと私は断言する。少なくともグルノーブルではそうだった。
 大学では、フランスパンの真ん中を切って、その中にチーズとハムを挟んだバゲットサンドを売っていた。フランス人は、痩せている女の子でも、バゲットまるごと1本とリンゴ1個を食べるというのがランチの定番だった。
 最初はそれに衝撃を受けて、よく食べられるなとカルチャーショックを受けた。だが、慣れとは恐ろしい。半年もしたら、私も昼食にまるごと1本を普通に食べられるようになっていたのだ。
 しかもこのバゲットサンドがとても美味しい。栄養もあるし、安いし、これだけあれば暮らしていける。私の部屋には常にバゲットサンドが置いてあって、お腹が空いた時にそれを食べていた……。(p.85-86)

☆たまたま先日、 『リオの男』 という映画を観ていたら、フランスパンをそのままかじっているシーンがあって、フランス人はそういう食べ方をするのかと思ったものだ。

常にバゲットサンドを携帯しておき、お腹が空いたら食べるというのもおもしろそうだ。




●このところ、ご飯を食べても冷や汗が出ることは少なくなってきた。術後は少し食べただけで多量の冷や汗が出て、気持ち悪くなっていた。あれは「ダンピング症候群」だったんだろうと、今思う。
 胃がなくなったために食べ物は一気に腸まで落ちてしまう。今まで胃から少しずつ腸に送り出されていた食べ物が未消化のまま腸に流れ込むために腸がびっくりする。それで冷や汗や吐き気、むかつきの症状が出てくる。これが「ダンピング症候群」だ。私の場合も術後しばらくは、食事をすると、腸がぶるぶる震えているのがよくわかった。(p.123-124)

☆ダンピング症候群は 『長尾先生、「近藤誠理論」のどこが間違っているのですか?』 にも出てきた。胃を全摘するとおこりやすいという。



●ある本を読んだら分子標的薬という薬が紹介されていた。「がん細胞が持つ特異的な性質を分子レベルでとらえ、それを標的として効率よく作用するようにつくられた薬。がん細胞を狙って作用するため、副作用をより少なく抑えることができる」と書いてあった。さっそく質問してみる。
 抗がん剤ではなく、分子標的薬という欧米では主流の薬を使う方法はないのでしょうか、と聞いたら、「分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わる分子を標的にして、その機能を抑える作用がある。ただし、この薬が効くのは、標的となる分子が過剰なほど発現していないとダメで、残念ながらあなたの場合はそれがない」との回答だった。結局、抗がん剤以外の選択肢は私にはないそうだ。(p.141)

☆分子標的薬というのは初めて聞いた。欧米では主流らしい。



●だが、先生は淡々と説明を続ける。再発リスクというのはトータルのもので、最初の二年までが非常にリスクが高く、それから年々減っていき、五年を過ぎたら、もうほぼ再発の可能性はないということになるらしい。(p.144)

☆それで1年以内に亡くなることもあるのか。



●ステージVの人への補助的化学療法の標準(つまりは抗がん剤治療)は「TS-1」という飲み薬を服用するのが一般的だそうだ。しかし、高張先生からの提案はTS-1と「シスプラチン」という点滴タイプの抗がん剤を組み合わせることだった。「TS-1単独で、再発のリスクを10パーセント減らすことができますが、シスプラチンを加えると、さらに10〜15パーセント、リスクを減らすことができます。つまり再発リスクが35〜50パーセントに減るということです。(p.144)

☆本来、シスプラチンはステージWの患者さんに投与するものらしい。
ステージVで、この組み合わせで投与するのは、黒木さんがおそらく初めての例らしい。



●朝食を食べて、いよいよ薬を飲む直前に父が一言。
「昨日の夜、おばさんから電話があって、抗がん剤は勧めないって。抗がん剤がいかに危ないか書いてある本も送るって」
びっくりした。
いままさに飲みはじめるタイミングで、どうして気持ちが揺らぐことを言うんだろう。悲しくなって涙があふれ出てしまった。(p.158)

☆父としては、このタイミングで言わないと取り返しのつかないことになるという思いもあったのだろう。



●がんについて書かれた本も、つい警戒してしまう。唯一の例外は、仕事でお世話になっている方から贈っていただいた、エッセイスト岸本葉子さんの 『がんから始まる』 だ。岸本さんも40歳で虫垂がんになった経験があり、その顛末を書いた本である。(p.178)

☆そうか、がんの人に勧める本としてはがんの本は避けたほうがいいのかもしれない。がんについて書かれた本も避けてしまうくらいだったのに、この本は読めたそうである。



●「モスバーガー」でテリヤキチキンバーガーと大好きなポテトを食べることができたのだ。油で揚げたものはダメだと思っていたが、ポテトが意外においしかった。また食べたい。食べられるものが一つずつ増える喜びは格別だ。あとで看護師さんに聞いたところ、抗がん剤治療中の患者さんにフライドポテトは人気があるそうだ。(p.211)

☆「モスバーガー」は抗がん剤治療中でもおいしく食べられたらしい。




【アクションプラン】
・岸本葉子 『がんから始まる』 を読んでみたい。





【評価】
評価:★★★☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
胃がん闘病記を読みたいときに。

フランス語をマスターしたい人に。





■関連動画
NHKBS1『国際報道2015』キャスター黒木奈々さん がん闘病で揺れ動く気持ちを綴った手記を刊行
https://www.youtube.com/watch?v=eA-F50hH2UU





【頑張れ!負けるな!】黒木奈々 胃がん手術へ 国際報道2014【まとめ動画】
https://www.youtube.com/watch?v=0Quj12Ad37E




 
posted by macky at 23:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康 | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする