2017年03月16日

絶歌

絶歌
元少年A/著 (太田出版) 2015年
1,500円+税


【動機】
神戸連続児童殺傷事件の酒鬼薔薇聖斗が手記を出したので読んでみた。

異常犯罪者の心理に迫る。



【所感】
一応更生して社会復帰もしているようだけど、ちょっとしたきっかけで転落してまた事件を起こすような脆さがあると感じた。それは過去に殺人事件を犯したからというのではなく、持って生まれたものや家庭内環境、幼児教育によるものだろう。つまり殺人事件を起こすべく起こしている。時間を巻き戻せたらと言ってるが、巻き戻してもまた同じことだろう。



【概要】
1997年6月28日。僕は、僕ではなくなった。酒鬼薔薇聖斗を名乗った少年Aが18年の時を経て、自分の過去と対峙し、切り結び著した、生命の手記。(「BOOK」データベースより)


絶歌
絶歌
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元少年A
太田出版
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【抜粋】
●「おまえが学校で書いた作文全部や!  (中略) もうそろそろ堪忍したらどないや!」(p.11)

☆観念。いきなりの誤字に驚いた。



●僕は野球選手の名前も、テレビタレントの名前もほとんど知らなかった。当時の僕にとってのスターは、ジェフリー・ダーマー、テッド・バンディ、アンドレイ・チカティロ、エドモンド・エミル・ケンマー、ション・ウェイン・ゲイシー……。
 世界にその名をとどろかせる連続猟奇殺人犯たちだった。映画 『羊たちの沈黙』 の公開を皮切りに90年代に巻き起こった “連続殺人鬼ブーム” に僕も乗っかり、友達の家にそろっていた 『週刊マーダーケースブック』 や、本屋にずらりと並んだロバート・K・レスラー、コリン・ウィルソンの異常犯罪心理関係の本を読み耽った。(p.22-23)

☆ここに挙げられている人を一人も知らない。有名人なのかな。
こういう異常な殺人者ってみんな子どものころから異常犯罪心理関係の本を読み漁ったりしてる気がする。



●光市母子殺害事件の犯人である元少年は、母子を殺害後、母親の遺体を「生き返らせるため」に屍姦し、子供の遺体を「ドラえもんに助けてもらうため」に押し入れに隠したのだと話した。(p.33)

☆犯人は当時18歳、被害者は当時23歳の主婦とその娘(生後11カ月)。
光市母子殺害事件といえば、橋下徹さんが関わっていた事件だ。弁護団に懲戒請求を呼びかけたことで業務妨害したとして訴えられた。



●ビデオデッキに、エドワード・ファーロング主演の 『ブレインスキャン』 をセットして、再生した。
 足が不自由な孤独なオタクの高校生が、友人から勧められた仮想殺人ゲーム 『ブレインスキャン』 をプレイする。ゲームの中で行ったはずの殺人が現実世界でも起こり、次第に空想と現実の区別がつかなくなっていく。(p.92)

☆酒鬼薔薇聖斗はこの映画を何度も繰り返し観たそうだ。淳君を殺害した日は三回も観ている。



●空には仄かに霧がかかり、白い月が滲んでいた。自転車をフラフラと走らせ、映画 『スタンド・バイ・ミー』 の主題歌を鼻歌で口ずさみながら、僕はこの上もなくご機嫌だった。
『スタンド・バイ・ミー』 ――心に傷を負った四人の少年が、線路づたいに “死体探し” の旅に出る甘く切なく美しい永遠の少年映画。誰もが、喪われた自身の少年時代を思い起こす名画の中の名画だ。僕はこの映画が大好きだった。(p.96)

☆中学校の校門に淳君の首を置くときの状況がリアルに描かれている。
『スタンド・バイ・ミー』 ってそんな話だったのか。



●1995年、僕は小学六年時に阪神淡路大震災を経験した。僕が住んでいた地域は大きな被害は免れたが、被害がひどかった長田区や東灘区に住んでいた父親たちの同胞たちの家は倒壊し、父親の兄――アル中でありながら腕のいい大工であった伯父――が中心となって、彼らは自分たちで公園にプレハブ小屋を建てて共同生活を営んでいた。出来合いのプレハブ小屋には、驚いたことにちゃんと電気や水道まで通っていた。このような異常時における島人たちの結束力には目を瞠るものがある。 (中略)
 出身地は奄美諸島の南西部に位置する島だった。僕は小学4年時と6年時、都合2回この島を訪れた。僕は父親の生まれ育ったこの小さな島が大好きだった。(p.101-104)

☆酒鬼薔薇聖斗の先祖は奄美大島出身の島人で、長田区の朝鮮人部落だったようだ。
逮捕後、マスコミが島に押しかけたらしい。



●僕は、自分が、自分の罪もろとも受け容れられ、赦されてしまうことが、何よりも怖かった。あまりにも強烈な罪悪感に苛まれ続けると、その罪の意識こそが生きるよすがとなる。(p.124)

☆悪いことをすることで自分の存在意義を確かめる。自分に目を振り向かせたいという願望。手記を出した後、ホームページを開設して「反省していない」と反感を買ったようだが、そうすることで存在意義を確かめているのかもしれない。



●いったい誰が信じられるだろう。受け容れられることで深く傷つくような、蛆がわき蠅がたかるほどに腐敗した心がありうるということを。(p.125)

☆その根底には母親の愛情不足がある。



●2004年3月10日。事件から7年目の21歳の春、僕は6年5か月に及んだ少年院生活を終え、社会に出た。 (中略)
 引率する少年院の職員に急かされるように、用意されたワゴン車に乗り込み、僕は関東医療少年院をあとにした。(p.158)

☆酒鬼薔薇聖斗は京都の医療少年院にいたという噂があったけど、デマだったのか?



●50歳前後の「ハッカイ」。40代半ばくらいの「サゴジョウ」。30代半ばくらいの「ゴクウ」。三人とも東京保護観察所の監察官だった。この日から3か月間、僕は彼らと行動を共にした。(p.158)

☆三蔵法師にでもなったつもりなのかな。



●窓を閉め、枕元のボストンバッグを開き、中から淳君のお父さんと彩花さんのお母さんがそれぞれに書かれた二冊の本を取り出した。少年院のスタッフが、事件や被害者の方たちのことを毎日考えるようにと持たせてくれたのだ。(p.161-162)

☆被害者の遺族も本を出しているようだ。読まなければ。



●その二日後、仕事もなく、近所の公園でジョギングを終え更生保護施設に戻り、シャワーを浴びて自室で横になっていると、監察官のゴクウ、サゴジョウ、ハッカイが、血相を変えて僕の部屋を訪れ、こう告げた。
「すぐ荷物まとめて。場所移動するから」(p.175)

☆一緒に働いていた従業員に身元がばれたらしい。



●教官はデスクの上に置かれた二冊の本を、すっとこちらへ差し出した。僕は唾を呑み込み、本を受け取って独房へ戻り、一気に読んだ。そのあいだ、周囲の音はいっさい聞こえなかった。
 二冊とも読み終えると、喉がカラカラに渇いていた。僕は椅子から立ち上がり、独房の奥の洗面所に向かった。蛇口をひねり、プラスチックのコップに水を入れ、一気に三杯飲み干した。(p.204)

☆被害者の遺族が書いた本を加害者はどんな気持ちで読んだのか。この日の夜からほとんど眠れなくなり、精神が崩壊する一歩手前まで追い込まれたという。自分の犯した罪の重さ、被害者の悲しみ、すべてが一気に覆いかぶさってきたのだろう。



●「罪の意味 少年A仮退院と被害者家族の7年」。それが番組のタイトルだった。淳君の二歳年上のお兄さんにスポットライトを当て、事件後、彼が何を思い、どのように苦悩して生きてきたのかを取材し、第13回FNSドキュメンタリー対象を受賞した作品だった。 (中略) 重い言葉だった。僕が施設でのうのうと守られているあいだ、淳君のお兄さんはこんな気持ちを抱えながら、独り苦しみ続けていた。(p.210)

☆見てみたいと思ったけど無いようだ。



●森田は、僕と、大阪姉妹刺殺事件を起こした山地悠紀夫を合体させたようなキャラクターだ。僕の「性サディズム障害」と、山地悠紀夫の抱えていた人格障害のふたつの要素を併せ持っている。(p.230)

☆古谷実 『ヒメアノ~ル』 を読んで、あの頃の自分と重ねて泣いたという。

行け!稲中卓球部』 は14歳当時のバイブルだったらしい。



●回し車で走り続けるハムスターのように、カラカラと虚しく時間を空転させる僕に、少年院のスタッフは「読書療法」という名目で本を差し入れた。ヘルマン・ヘッセ 『車輪の下』、メルヴィル 『白鯨』、ドストエフスキー 『罪と罰』、ヴィクトル・ユーゴー 『レ・ミゼラブル』、島崎藤村 『破戒』、夏目漱石 『三四郎』、森鴎外 『青年』、坂口安吾 『白痴』、武者小路実篤 『友情』 ……。
 他にやることもなく、僕は与えられた本を、一頁一頁、映画を撮るような感覚で映像を思い浮かべながら貪り読んだ。(p.251)

☆少年院では「読書療法」ということで本をたくさん読ませるようだ。



●溶接工事代、まとめて読んだ作家は三島由紀夫と村上春樹だった。彼らの短編、長編を片っ端から買い揃えた。
 三島行きをは “言葉の宝石箱” と評したくなるような初期の短編と、 “変質狂浪漫譚” 『金閣寺』 が好きだった。 (中略) 『金閣寺』 は僕の人生のバイブルになった。(p.252)

☆そういえば、 『金閣寺』 とか持ってるけど、まだ読んだことが無かった。



●溶接工時代は小説を読むことに没頭したが、会社を辞めてからは、自分の物語を自分の言葉で書いてみたい衝動に駆られた。記憶の墓地を掘り起こし、過去の遺骨をひとつひとつ丁寧に拾い集め、繋ぎ合わせ、組み立て、朧に立ち現れたその骨格に、これまでに覚えた言葉で丹念に肉付けしていった。(p.280)

☆文学的な表現を駆使している印象を受けたが、そういうことか。



●法医学者が白骨死体から生前の姿を再現するように、僕は自分の喪われた人生に、その抜け殻のような人生に、言葉でもう一度息を吹き込みたかった。(p.280-281)

☆わかりやすいたとえだけど、この文章を被害者の遺族も読むことを考えると適切なたとえではないように思われる。そういうところまで思いが至らないのだろうか。
でも、一貫しているのは、赦してもらおうとは思っていないということだ。赦されるということはすなわち存在意義をうしなってしまうと考えているフシがある。



●それでも、もうこの本を書く以外に、この社会の中で、罪を背負って生きられる居場所を、僕はとうとう見つけることができませんでした。(p.289)

☆この本を書いた動機が書かれてある。

人には何かしら使命やミッションがある。酒鬼薔薇聖斗は殺人をするために生まれてきた。戦国時代なら活躍できただろうが、今の世では死刑執行官以外活躍できない。20年間苦しみぬいた末、酒鬼薔薇は殺人以外の使命を見つけたようだ。



●自分自身が「生きたい」と願うようになって初めて、僕は人が「生きる」ことの素晴らしさ、命の重みを、皮膚感覚で理解し始めました。そうして、淳君や彩花さんがどれほど「生きたい」と願っていたか、どれほど悔しい思いをされていたのかを、深く考えるようになりました。(p.291-292)

☆更生のポイントかもしれない。
残虐な殺人者は一生過酷な労働をすればいいという意見もあるが、
むしろ犯罪者に「生きたい」と思わせることによって、罪の重さを知らせることができるのかも。




【アクションプラン】
・工藤明男こと柴田大輔 『酒鬼薔薇聖斗と関東連合~『絶歌』をサイコパスと性的サディズムから読み解く』 を読んでみたい。

・土師守 『』 を読む。

・山下京子 『彩花へ―「生きる力」をありがとう』 を読む。

・「少年A」の父母 『「少年A」この子を生んで……―父と母悔恨の手記』 を読む。





【評価】
評価:★★★☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
賛否両論あるだろうが、犯罪者の心理をうかがい知ることができる貴重な資料だと言える。




【結論】
失敗から学べ、成功するためにたくさんの失敗をしろ! とよく言われるが、取り返しのつかない失敗もある。

 

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酒鬼薔薇が手記「絶歌」で書けなかった本性とは?「担当女医への衝動的行動」
http://www.asagei.com/excerpt/38786

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