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2012年09月08日

黒い雨

黒い雨 (新潮文庫)

黒い雨
井伏鱒二/著(新潮文庫) 1970年 (単行本は1966年)


【概要】
原爆記録。
原爆から数年後に被爆日記を清書するという設定です。
原爆が落とされた後の様子が生々しい日常とともに淡々と描かれている。


【動機】
8月6日の原爆記念日を機に読み始めた。
かなり昔から本棚にあった本だが、やっと読んだ。

新聞連載スタート時のタイトルが「姪の結婚」とあるように、姪の結婚話をテーマに話が進められていく。


【所感】
カバーのデザインが美しい。

淡々と描かれているように見えるのは主人公の閑間重松(しずましげまつ)が常に冷静だからであろう。

『黒い雨』の元となったのは、重松静馬(しげまつしずま)が書き残した『重松日記』だと言われている。
原爆の惨状を大学ノート3冊に書き続けていたそうである。


小説よりも先に、映画の方をかなり昔に観ていたので、結末などは知っていたのだが、もし映画を観てなかったらまた違った感想だったかもしれない。



【抜粋】
●広島市は陸軍の町、呉市は海軍の町と云われるが、呉は六月二十二日に空襲を受けて、七月一日には焼夷弾の大空襲を受け、平坦部の街があらかた焼けてしまった。(p.205)

☆呉ばかりが攻撃されていたのは、広島市に原爆を落とすことが決まっていたからだろう。


●白桃を大根卸で摺って丼にいっぱい入れ、そのなかに卵を二つか三つ入れまして、そんなのを口の中に流し込むようにしていました。・・・(中略)・・・私は原爆症発病後の約二週間、二十貫に及ぶ白桃の果汁だけ啜って生きながらえた。(p.279-287)

☆二十貫といえば、約75kg。すごい量である。原爆症に侵されて医者にも見放されながら、桃を食べて元気になった人の話が詳しく描かれている。福島原発の放射能による被爆にも効くかも知れない。


●井伏氏はあり余るほど豊かな才能と素質に恵まれながら、文壇的にはきわめて不遇であった。処女作『山椒魚』が『幽閉』という題で同人雑誌「世紀」(大正12年8月)に発表されたときも、ある評論家から「古くさい」という意味の短評で新聞の文芸欄で片づけられただけであった。しかし、当時、青森中学1年生だった太宰治がこれを読んで「坐っておられなかったくらいに興奮した。・・・・・・私は埋もれたる無名不遇の天才を発見したと思って興奮した」と彼は書いている。(p.327)

☆当時も今も評論家の批評によって作品の価値が変わる。そして無名の中に天才を見つける人もまた天才である。解説はたいして面白くないものが多いが、『黒い雨』の解説は面白かった。とりあえず、『山椒魚』を読んでみたい。



【アクションプラン】
・『山椒魚』を読みたい。


【評価】
評価:★★★☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
原爆や放射能について知りたいと思ったら真っ先に読んでおきたい本。
posted by macky at 23:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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