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2012年09月27日

美しい国へ

美しい国へ (文春新書)

美しい国へ
安倍晋三/著(文芸春秋) 2006年


【概要】
2006年7月発行なので、安倍さんが総理になる直前の著書である。
(総理になったのは2006年9月26日)


【動機】
次期首相として期待が集まる安倍さん。
その安倍さんが昨日9/26、自民党総裁に返り咲いたので読んでみた。
(実際は、返り咲きそうだったので数日前から読み始めてます)


【所感】
国のことをちゃんと考えているという印象。
文章もうまく、理路整然としていて読みやすい。


【抜粋】
●子どもだったわたしたちには、遠くからのデモ隊の声が、どこか祭りの囃子のように聞こえたものだ。祖父や父を前に、ふざけて「アンポ、ハンタイ、アンポ、ハンタイ」と足踏みすると、父や母は「アンポ、サンセイ、アンポ、サンセイ、といいなさい」と、冗談まじりにたしなめた。祖父は、それをニコニコしながら、愉快そうに見ているだけだった。(p.22-23)

☆思わず笑ってしまった。


●後年になって知ることになるが、1951年、サンフランシスコ講和条約といっしょに結ばれた日米安全保障条約には、アメリカが日本を守るというはっきりした防衛義務を定めた条項がなかった。事前協議の約束もない。このとき、アメリカとしては、日本に自由に基地がつくれることになっていたのだ。
 そればかりか、日本に内乱が起きたときは、米軍が出動できることになっていたり、アメリカ人が日本国内で犯罪をおかしても、日本には裁判権がないなど、独立国とは名ばかりの、いかにも隷属的な条約を結んでいたのだった。おまけに、条約に期限は、無期限になっていた。
 祖父はこのとき、この片務的な条約を対等にちかい条約にして、まず独立国家の要件を満たそうとしていたのである。いまから思えば、日米関係を強化しながら、日本の自立を実現するという、政治家として当時考えうる、きわめて現実的な対応であった。(p.23-24)

☆不平等条約をいかに対等に持っていくか。政治家の手腕の見せどころである。


●北朝鮮では国民を三つの階層に分けている。上位に位置するのが、金正日委員長に忠誠を誓う核心階層。つぎが、一般の労働者や商人、手工業者が属する中間の動揺階層で、日本からの帰国者はこの層に入る。そして、反動分子や、一部の日本からの帰国者、植民地時代の地主家族や官吏の士孫などが属する敵対階層である。この敵対階層は、金正日委員長からもっとも嫌われている地位の低い人たちで、成績がよくても高等教育は受けられず、朝鮮労働党員にはなれない。もちろん人民軍にも入れないので、農村や炭鉱などで重労働に従事するしかすべがなく、生活はひどく困窮している。したがって、最初に飢えるのはかれらで、脱北するのは、おおむねこの層の人たちである。(p.56-57)

☆北朝鮮の階層について詳しく述べられている。


●フランスは、第二次世界大戦のあと、労働力が不足して大量の移民を受け入れた。だが、その後ナショナリズムの高まりとともに、移民排斥の嵐が吹き荒れた。(p.81)

☆やっぱり労働力の不足で移民受け入れたあとは移民排斥運動が起こるものである。ちなみに、サッカー選手として有名なジダンもアルジェリア系の移民である。ワールドカップでイタリアの選手にそのことでバカにされて頭突きを食らわせたのは記憶に新しい。


●評論家の松本健一さんは、イーストウッドがこの映画をとおして描こうとしたのは、アメリカのナショナル・アイデンティティである、と指摘している。中国人も韓国人もヒスパニックも、アメリカをすでに「理想の国」であると考えて移民したが、アイルランド移民だけはアメリカを「理想の国」につくりあげようとした。だからこそ、アイルランド移民の子であるケネディ大統領は、いつまでもアメリカの星でありつづけるのだ、と。(p.90)

☆「ミリオンダラー・ベイビー」という映画について。


●現在の国家のかたちを、一般にネーションステート(国民国家)と呼ぶ。これはもともと近代のヨーロッパで生まれた概念だ。宗教の対立が原因で各国が争っていた三十年戦争が、1648年、ウェストファリア条約の締結とともに終わりをつげ、あたらしくはじまったのが主権国家の時代だった。そして、17〜18世紀の市民革命によって、主権国家のなかの国民がひとつのアイデンティティのもとにあつまり、国民国家が成立する。
 「ナショナリズムは、まだ国民国家をもたない民族にとっては革命思想であり、すでに国民国家を手にしている民族にとっては保守思想になる」という考え方がある。(p.98)

☆ナショナリズムという言葉から全く逆の思想が想像できるのはおもしろい。



●日本人が日本の国旗、日の丸を掲げるのは、けっして偏狭なナショナリズムなどえではない。偏狭な、あるいは排他的なナショナリズムという言葉は、他国の国旗を焼くような行為にこそあてはまるのではないだろうか。(p.99)

☆まさにその通り。なかなかいいことを言う。


●1950年に朝鮮戦争が勃発し、アメリカの占領軍が朝鮮半島に展開すると、マッカーサー司令官は、手薄になった日本にソ連が侵攻してくるのを心配して、日本政府に防衛のための部隊の創設を要求した。ただちに警察予備隊が組織されたが、表向きは、国内の治安維持のためだった。(p.123)

☆この警察予備隊が、保安隊となり、今日の自衛隊となる。


●よく知られているように、サラリーマンの年金は二階建てになっていて、一階部分が国民年金と同じ基礎年金、二階部分が厚生年金になっている。基礎年金の部分の支給開始年齢は65歳に向けて引き上げられつつあり、厚生年金の報酬比例部分も、1961年よりあとに生まれた世代は完全に65歳からの支給ということになる。(p.177)

☆定年が60歳で、年金がもらえるのが65歳だとすると空白期間ができてしまうので、定年を65歳までにしたり、定年制をなくしたりと企業は色々と工夫している。その分、若者の雇用を奪っているというジレンマもある。


●平均寿命と健康寿命の落差を小さくすることができれば、医療費や介護費用が大いに節約できるのである。わたしはこれに着目して、自民党の社会部会長だった2000年当時、健康寿命をのばす政策「メディカルフロンティア戦略」を発表し、厚生省の予算にも項目として入れたが、当時、残念ながらあまり注目されなかった。(p.199)

☆寿命を延ばすだけでなく、健康寿命を延ばすという視点は画期的だ。今までのイメージとは逆に、あんなに元気だったのに急に亡くなったというのが本人にとっても周りにとっても一番いいのかも。


●1983年、アメリカでは、レーガン大統領が「危機に立つ国家」という報告書を発表して、教育改革の旗をかかげた。60年代からすすんだ教育の自由化は、学力の低下をまねき、享楽主義を蔓延させていたからだった。
 この反省から、規律を重んじる教育をおこなうと同時に、ゆとり教育の反対の教育、いわば、詰め込み教育への転換をはかろうとしたのである。いま、日本のゆとり教育が反省を迫られているが、それもそのはずで、じつは日本がお手本にしてきたのは、かつての60年代のアメリカの教育だったのである。(p.206)

☆ゆとり教育が、60年代のアメリカをお手本にしていたとは驚きだ。


●ここ数年、所得格差を示すジニ係数が上昇してきていることをもって、格差社会の到来を心配する声が高まっている。ジニ係数というのは、1に近づくほど国民の間の所得格差が大きいことをあらわす数字(全国民が同じ所得だと0になる)である。(p.222)

☆ジニ係数というのは知らなかった。ちなみに日本は税引き前で0.4983だそうである。(税引き後で0.3812)。平等な社会ではなく、競争がフェアにおこなわれる社会を目指してほしい。



【評価】
評価:★★★☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
今度再び総理になる安倍さんってどんな人?って方に。

posted by macky at 21:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 政治 | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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