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2012年02月07日

日本の魚は大丈夫か

日本の魚は大丈夫か―漁業は三陸から生まれ変わる (NHK出版新書 360)

日本の魚は大丈夫か―漁業は三陸から生まれ変わる (NHK出版新書 360)
勝川俊雄/著 (NHK出版) 2011年


【概要】
衰退著しい日本漁業をいかに持続的な成長産業へと改革するか。魚の放射能汚染は? 
当代きっての論客が三陸復興への思いを込めて描く未来図。


【動機】
漁業は衰退産業ではなく成長産業。
この言葉に惹かれた。


【所感】
1万円を預けていたら6年後に100万円になる定期預金。あたたはすぐに解約しますか? 
これをすぐに解約しようとしているのが現在の日本の漁業の現実ということらしい。

成長産業として見事に復活を遂げたノルウェーの漁業をモデルにして、
震災で壊滅的な被害を受けた今こそ日本の漁業を見直すべきだとしている。


【抜粋】
●ノルウェーの沿岸部は、氷河に削られてできたフィヨルドという入り組んだ湾で形成されています。フィヨルドは、水深が深く(ところにより1000mを超えます)、地形が複雑なために、潜水艦でこっそり上陸するのに、うってつけなのです。ノルウェーは、ソ連からの潜水艦からの上陸を妨げるという国防上の理由から、すべてのフィヨルドに漁村を置いて、人を住ませることにしました。そんなわけで、ノルウェーには、無数の小規模漁村が存在して、強い政治力を持ってきたのです。(p.77)

☆これは知らなかった。こういう歴史は面白い。


●かつては、サバは三陸漁業の大黒柱でしたが、1980年代の乱獲で、資源のほとんどが獲りつくされてしまいました。先に挙げたノルウェーにおけるニシンの例では、ここまで減った時点で禁漁にしています。資源を回復させようとしたわけです。

しかし、日本漁業はまったく逆の方向に進みました。漁具メーカーと巻き網漁業者が共同で、遠くにいる稚魚の群れを発見できるソナーを開発したのです。高い値段で売れる成魚が獲れないのなら、安くてもいいから未成魚をたくさん獲ろう、それで目先の売り上げを確保しようというやり方です。乱獲に拍車をかける方向に行ってしまったのです。(p.84)

☆なんとも嘆かわしい。そんなことをすれば将来的に魚が獲れなくなるのをわかっていながらやってるんだろうなぁ。ここは国が規制すべきところでした。


●ノルウェー漁業のすぐれたシステムの一つに、最低価格制度があります。(中略)
「それ以下の値段では鮮魚を売れない」という制度です。漁業者は、その基準以上の値段がつく魚だけを獲らなければならない。つまり、ノルウェーでは、薄利多売は許されないというわけです。船ごとの個別漁獲枠と最低価格制度によって、ノルウェー政府は魚の値段を上げる方向に政策誘導しています。(p.118〜119)

☆個別漁獲枠と最低価格制度。日本も同じ事をやればいいのに。なぜできないんだろう?
たしかに枠を割り振るのは難しいだろうが、いったん割り振ってしまえば、例えばあなたとのころは枠が6つですよって言われれば、稚魚でその貴重な枠を使おうとはしないだろう。乱獲を防ぐにはピッタリの制度だ。

最低価格制度を導入すれば消費者が買う魚の値段も高くなるような気もするが、そうとも限らない。
日本の場合はもともと卸売業者、加工業者、産地仲買業者、仲卸業者と中間マージンが多いから、
誰も儲けていないのに消費者のところに届く頃には高くなる。
このような伝統的な流通システム自体を変える必要がある。
ノルウェーでは、最先端のオークションシステムがあり、落札したところに水揚げするシステムが整っているそうだ。

「最低品質制度」は「最低品質制度」としても機能する。
そういえば、ノルウェー産の魚といえば、ここ数年で国産よりも高級というイメージが定着しつつある。


●水産物の汚染の問題を扱うには、次のような幅広い知識が必要になります。まず、放射能や放射性物質はどういうものかという物理学の基礎は言うまでもありません。その放射性物質が海の中で、どのように流れて広がっていくかという海洋学の知識や、それが海水の中でどういう挙動をするかという化学の知識も欠かせません。さらには、生物の食物連鎖や魚の回遊について調べる生態学、漁獲と消費という面から検討する水産学、その魚を食べた人間にどういう影響があるかを臨床的・疫学的な知見を生かして検証する放射線医学。こうした横断的な知識がないと、水産物の放射能汚染の全体像がつかめません。専門家だって、一人でこれらをすべて網羅するのは不可能ですから、一般の人にはとても無理な話だと思います。(p.168〜169)

☆放射能問題の難しさはここにある。著者の専門は水産学。関連分野の海洋学や生態学のことはある程度は分かるが、放射能については門外漢だったそうです。こういうさまざまな分野の研究者が自分の専門の知識をそれぞれ持ち寄って連携していかないといけないんだろうな。



【評価】
評価:★★★☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
魚が好きな日本人全員が一度は読むべき本だといえよう。
衰退していく漁業に一筋の光が見える。

120207
posted by macky at 22:32 | Comment(1) | TrackBack(0) | ビジネス書 | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ブックカバーってもう貰えるの? 新刊だけってところがが多そう・・・
Posted by 熊田曜子 ブログ at 2013年07月07日 16:05
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