TOP小説 >野火

2013年08月03日

野火

野火 (新潮文庫)
野火 (新潮文庫)
posted with amazlet at 13.08.04
大岡 昇平
新潮社
売り上げランキング: 2,745


大岡昇平/著 (新潮社) 1954年 (初出は1952年)



【概要】
敗北が決定的となったフィリピン戦線で結核に冒され、
わずか数本の芋を渡されて本隊を追放された田村一等兵。

一人の平凡な青年の異常な戦争体験をもとにした手記。



【動機】
毎年この時期には戦争物を読んでいるので、今年は以前から読もうと思っていた 『野火』 を読んでみた。

ちなみに昨年は、 『黒い雨』 と 『ヒロシマ―絶後の記録』 を読んでいる。

齋藤孝の文庫百選。

だいぶ前に友人の引っ越しを手伝ったときに頂いた本である。
宇多田ヒカルも好きな本ということで紹介していた。



【所感】
寝る前にちょっとずつ読んでいたんだけど、
半分を過ぎた頃から急激に面白くなって、
一気に読んでしまった。

全く予備知識ナシで読んでいったので、
意外(?)な展開にのめりこんでいった。



【抜粋】
●私は喉からこみ上げてくる痰を、道端の草に吐きかけ吐きかけ歩いて行った。私はその痰に含まれた日本の結核菌が、熱帯の陽にあぶられて死に絶えていく様を、小気味よく思い浮かべた。(p.12)

☆ここを読んで、「あれ?読んだことがあるかも」と思った。
学校の教科書だろうか。



●「まあ、な」と安田の声がまた聞えた。「まあお前もなるたけ俺のそばにいるがいい。出来るだけなんとかしてやるからな」
「ほんとか、おっさん。でも……」
「でも、なんだ」
「でも、なんだかお前は怖えな」
「一緒にいろ。でも働くんぞ。明日は医務室へ行って、何でも手伝うんだ、水汲みでも、飯盒洗いでも、なんでもいい。何かやりさえすりゃ、たとえ芋の一本でもくれるんだ。わかったか」
「わかったが……出来るかな、俺みたいな脚気に」
「何でもいい、やるんだ、馬鹿」(p.39)

☆このシーンは印象に残っている。そばにいるだけで何とか生きていけそうな安心感。そういうのに出会えた瞬間のような。



●夜になった。伍長は我々を導いて道をはずれ、谷に降り、弾の尻から火薬を抽き出し、木の枝でこすって火を起した。畠で一週間も生芋を齧り、比島の男女を「燐寸をくれ」と脅かした私は、この簡単な方法に気がつかなかった迂闊に、我ながら驚いた。その夜私は久振りで暖い食物を口にした。(p.94)

☆火を起こすのにあれだけ苦労してたのに、簡単な方法で火を起こせると気付いたときの驚き。ところで、戦時中は芋を生で食べてたらしい。芋って生で食えるのかと驚いた。調べてみると、現代でも北朝鮮とかだと生で食べる文化があるらしい。




【アクションプラン】
・『俘虜記』 も読んでみたい。



【評価】
評価:★★★★☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
こういうのを読むとやっぱり小説や映画は予備知識ナシに読むのが一番楽しめると言う気がする。
新潮文庫は背表紙に紹介文が書いてあるが、あれすらも読了前には決して読まないようにしている。
(以前、思いっきりネタバレしててがっかりした経験があるので)

ネタバレした上で読んでも読ませるのが文学という意見があるが、
それは再読、再々読のときに味わえばよい。
やっぱり初読の感動というのは一度きりなので。

(130803 読了)
posted by macky at 18:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック