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2015年07月02日

ディアスポラ

ディアスポラ (文春文庫)
勝谷 誠彦
文藝春秋 (2014-02-07)
売り上げランキング: 340,155


ディアスポラ
勝谷誠彦/著 (文藝春秋) 2014年 (初出は2001年)
540円+税



【概要】
“事故”で日本列島が居住不能となり、情報から隔絶されたチベットの難民キャンプで、将来への希望も見いだせないまま懸命に「日本人として」生きようとする人々――。3・11に先がけること十年。破滅的な原発事故で国土を失った日本人を描き、日本人のアイデンティティーを追究した予言的傑作。(「BOOK」データベースより)


表題作「ディアスポラ」と日本に残った側の物語「水のゆくえ」の二本立て。



【動機】
たかじんNOマネーで勝谷さんが百田さんに解説を書いてもらったと言っていたので。



【所感】
百田尚樹さんの解説が実におもしろかった。

最初に解説から読んだ。
この本がなぜ売れないかを百田さんならではの視点でズバッと書いていた。
こき下ろしながらも愛にあふれていて、この解説を読むだけでも値打ちがある。

なので本編は正直あまり期待せずに読んだのだが、
意外と(?)おもしろかった。



【抜粋】
●「東海村で起きた臨界事故で、科学技術庁は……」
 バケツでウランだって。(p.24)

☆つい最近、 『朽ちていった命―被曝治療83日間の記録』 を読んだばかりだったので、シンクロした。



●もし、また日本人たちがどこかの土地を得て集まろうとする時に、はたして求心力たりうるものがあるのかどうかということを、あの人々は考えているのである。(p.37)

☆日本人のアイデンティティーは何か考えさせられる。



●はじめは、塩掘りだった。湖の一角に。塩が堆積している場所がある。そこから泥といっしょに塩とソーダを掘り出して釜に入れ、精製するのだ。ほどなく内田さんの皮膚がボロボロにむけはじめ、彼はその仕事をやめた。ソーダで炎症を起こしたのだ。(p.43)

☆あらためて、ソーダって何だっけ?

ソーダとナトリウムって同じなの?塩って何? - 石鹸百科
http://www.live-science.com/honkan/basic/chishiki03.html

そうか、炭酸水素ナトリウムのことを重曹というが、重炭酸曹達の略だったのか。



●私の中にチベットという土地が中国によってどういう方法で統治されているのかを、母娘に説明したい衝動がわずかに起こり、しかしそれはすぐに消え去る。
「十三億もの国民を一つにまとめている国ですよ。どうやれば集団が言うことを聞くかを、支配者は長い歴史の中でさんざん学んでいると思いません?」(p.50)

☆中国という国の凄味がここにある。



●会話に飽いた私は本を読んでいた。河口慧海の 『チベット旅行記』 である。・・・(中略)・・・私は百年以上前に、私とほぼ同じ場所を歩いた日本人僧の足跡を記したその本を購ったのだ。(p.57)

☆読んでみたい。



●ユダヤ人青年たちは兵役のあと、世界を放浪する。それを資金面で支えるためのさまざまな方法や組織があり、かつて日本のそこここで針金細工を売っている外国人にユダヤ人が多かったのも、理由がなくてのことではない。(p.77)

☆ユダヤは資金をバックアップする人が世界のあちこちにいるのか。どこに行っても心強いはずだ。



●「来たんだよ。中国にも。北宋の時代に」(p.83)

☆中国にも、ユダヤ人の大集団が渡ってきた。それが北宋の時代だという。



●「耐えるいうたら、儂がおった満州の日本人もそうやった。儂も含めて、出かけていったんは、国では食い詰めたものばかりや。東北とか信州とか貧しい農村出身やな。確か、満蒙の開拓団をいちばんぎょうさん出したんは長野やなかったかいの。帰るに帰れんから頑張るしかなかった。今の儂らみたいやな」(p.101)

☆満州などへは長野の貧しい農村が一番多かった。

調べてみたらこういうのが出てきた。

8/4「満蒙開拓団と長野県;
いまだ語り明かされていない日本現近代史」
池田浩士さん
http://www.nabra.co.jp/inochi/forum/ikeda.html

時間のある時に読んでみたい。



●そのころ 『花筏』 は四百石を醸していた。杣谷川に流れ込む谷の襞々に棲む山人たちに、酒は造るだけ売れた。杉や檜が、伐り出すだけ現金になったように。(p.134)

☆造るだけ売れたっていうのはいいな。木を伐り出すだけ現金になったってのもいい。



●あの日、何が起きているのかテレビのニュースからは全貌がわからないまま外に飛び出した徹が見たものも、やはりこのようにその姿態を刻々と変えながら、漂っていたことを思い出しながら。(p.144)

☆まさに非常事態といえよう。



●車の中から四合瓶を取り出して渡すと、茂作はそのまま口をつけてごくごくと呑んだ。見ていた徹が思わず喉を鳴らしたほどの、それは達人の呑みっぷりだった。(p.207)

☆四合瓶っていうのか。180(ml)*4=720(ml)。確かに四合だ。
通はこうやってラッパ飲みするのか。



●大学の学部までは徹の自由にさせた父が、ただ一度意見を言ったのは、就職の時だった。「徹。問屋の顔を見て酒を造ってはいかん。酒屋は、じかに呑み手の顔を見て造るんだ。酔っぱらって幸せなお客さんの顔をたくさん見てこい」そう言って、父は徹は問屋に就職させた。徹はそこで営業として小売店をまわり「幸せな酔っぱらいの顔」を一生忘れられないほど見た。(p.216)

☆「幸せなお客さんの顔をたくさん見てこい」っていい言葉だなぁ。
そういう顔をたくさん見ている人と見ていない人とではモチベーションが違うだろうな。
自分の仕事によって幸せな顔をしている人がたくさんいる。こんなに幸せなことはない。



●米は山田錦。精米歩合は35パーセント。酵母は熊本酵母と呼ばれる協会九号。それぞれのイニシアルをとってYK35と一般に称するこの作り方は吟醸酒の王道を行くもので、それだけに限られた条件の下で昨年にも優る味をつくり出した杜氏の喜びは大きいようなのであった。(p.223)

☆精米歩合35%ってすごいな。ちなみにいま話題の獺祭は23%くらいかな。一度飲んでみたい。
ちなみに普段飲んでるのを確認してみたら精米歩合58%だった。




【アクションプラン】
・河口慧海 『チベット旅行記』 を読んでみたい。




【評価】
評価:★★★☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
日本を出ても日本人たり得るか。そんな気分の時に。

 
posted by macky at 23:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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