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2015年10月07日

サバイバル宗教論

サバイバル宗教論 (文春新書)
佐藤 優
文藝春秋
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サバイバル宗教論
佐藤 優/著 (文藝春秋) 2014年
800円+税



【概要】
目に見える政治や経済の動きを追うだけでは、世界は分からない。民族や国家の原動力となり、実際に世界を動かしているのは、しばしば目に見えない宗教だ。宗教を知ることは単なる教養のためではない。今後の世界を生き抜くために必須の智慧だ。禅宗寺院の最高峰、京都・相国寺で行った特別講義の全4回テキスト!(「BOOK」データベースより)

臨済宗相国寺派の僧侶を対象に行った講義を本にしたもの。



【動機】
常識として知っておきたい世界の三大宗教』 を読んで宗教に興味がわいたので。

キリスト教とイスラム教の対立も本格的になってるし、今、世界を動かしているのは宗教かもしれないということで。





【抜粋】
●私の母はキリスト教徒で、沖縄(久米島)の出身なんです。父は東京の出身ですが、ルーツは福島で、実はキリスト教徒ではありません。(p.15)

☆佐藤さんは沖縄の人だったのか。知らなかった。



●キリスト教というのは浄土真宗みたいなもので、絶対他力におすがりして、それで救われるという話だ」というのです。実は、私の父の祖母は福島県三春の臨済宗妙心寺派の寺の娘でした。 (中略) やはり自分にとって救いというのは自力本願で行くべきだという思いがあって、他力本願とは考え方が違う。(p.23-24)

☆浄土真宗と臨済宗は他力本願と自力本願の違いがある。キリスト教もどちらかといえば他力本願なのか。



●一方で、北朝鮮の核開発やミサイル開発は新聞でも報道されていますが、北朝鮮はもう一つ世界に冠たる地下壕の技術を持っています。 (中略) 北朝鮮は、イラン、シリア、リビアなどに独裁者が居住できる地下の快適な住宅や、地下につくられた核開発工場の施設などを供与しているのです。これが大きな外貨収入になっています。(p.54)

☆北朝鮮にそんな技術があるなんて知らなかった。アメリカといえども、100メートル以上の地下にある工場を破壊することはできない。



●ところが、同じ朝日新聞東京本社の中に、「ニューヨーク・タイムズ」の日本支局があります。この新聞の国際版、「インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ」(旧「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」)は東京でも刷られています。この新聞を見ると、全然つくりが違う。ですから、私はこの新聞を毎朝一番に見るんです。そうすると、東京で刷られているものであっても、ニュースの扱い、比重が全然違います。日本の新聞記事で圧倒的に少ないのが中東に関する情報です。(p.57)

☆この前見かけたからちょっと読んでみたい。



●アラブの春を「フェイスブック革命」というのは間違っています。フェイスブックを読んでいる層は、いわゆる市民層で、識字率が高く、新聞をきちんと読める一握りの層なんです。フェイスブックだけでは大きな運動にはなりません。(p.67)

☆そういえばマスコミがさかんにフェイスブック、SNSで革命が起きたと報じていたけど、間違いだったのか。
アルジャジーラやアルアラビーアといった衛星放送が重要な役割を担っていた。


●四つ目に、ハンバリという法学派があります。この法学派から、イスラーム原理主義やテロ運動の9割5分が出てきます。(p.73)

☆トルコ、インドネシア、エジプトなどもイスラム教なのにあまり過激なイメージがないのはそういう理由だったのか。

つまり、スンニ派は4つの学派があって、その中でもハンバリという法学派だけが特に過激だということだ。


って書いた3日後の10/10にトルコでトルコ史上最悪といわれる自爆テロ事件が起きた。
すごい偶然だなぁ。


自爆テロ、死者95人に トルコ、爆弾に金属玉
http://www.nikkei.com/article/DGXLAS0040001_R11C15A0I00000/
(2015/10/11 8:23 日経新聞)

 トルコ首相府は10日、首都アンカラで起きた自爆テロとみられる爆発による死者は95人、負傷者は246人に達したと発表した。重体の負傷者がいるため、死者は増える可能性がある。治安当局者はTNT火薬の爆弾が使われ、殺傷力を高めるために、金属玉が詰められていたと明らかにした。アナトリア通信が報じた。
(中略)
 NTVは金属玉が使われた点などから「7月20日に南東部スルチで起きた自爆テロと酷似している」と伝えた。政府当局は、スルチのテロには過激派組織「イスラム国」が関与した可能性が高いとみている。

 ダウトオール首相は10日の記者会見で、今回の実行犯として過激派組織「イスラム国」(IS)か、政府と衝突が続く非合法武装組織クルド労働者党(PKK)か、極左組織の関与が想定されるとの見方を示している。





●サウジアラビアというのは、「サウード家のアラビア」という意味で、要するに、家産国家です。(p.77)

☆20年ぐらい前までは国家予算とサウード家の家計の区別も無かったらしい。



●私自身のバックボーンもカルバン派です。日本でいうと、戦前の日本基督教会(長老派)の系統なんです。(p.79)

☆カルバン派というと先進国のイメージ。



●アメリカのプリンストン進学校というと、カルバン派です。シカゴ神学校は会衆派で、同志社の系統と一緒です。関西学院大学はメゾジスト派。青山学院大学もメゾジスト派。明治学院大学はカルバン派(長老派)、このように分かれていて、お互いの交流はあまりありません。(p.79)

☆こういうの全然知らなかったなぁ。


●こういうアメリカの宗教的な考え方は、日本にも影響を与えています。それは何かというと、超越性に対する感覚です。要するに内在的超越性なんです。たとえば最近、新自由主義の流れでスマイルズ(英国の医者・作家)の 『自助論』 が注目されました。これは 『西国立志編』 という題で明治時代に訳されていますが、今普及しているスマイルズの 『自助論』 は抄訳です。アメリカ型の抄訳で、要するにユニテリアン的な感覚で理解されたものになっているんです。自らの努力によって、手の届かないところにも届く力が備わってくるという考え方。(p.81-82)

☆すごい偶然だなぁ。たまたま昨日 『自助論』 の記事をアップしたばかりだ。こうやって知識が繋がっていくからおもしろい。




●最近読んだ中で非常にすぐれていると思う本がありました。 『週刊文春』(2012年4月12日号) に書評を書いたのですが、ワシーリー・グロスマンという人の 『人生と運命』 (みすず書房)という本です。(p.92)

☆全3巻、分厚くて難しそうな本だけど時間があれば読んでみたい。
当時のソ連で刊行が認められなかった本である。



●ロシアの長編小説のおもしろさは、この多声的な構成にあります。1つの小説をいくつもの物語として読むことができるんです。ドストエフスキーに関して、このことを強調して読み解きをしたのがバフチンでありますし、日本では亀山郁夫さんです。 (中略) トルストイもやはり構成は多声的です。(p.94)

☆ちょっと調べてみたら、亀山訳は賛否両論だった。
ちなみに私の手もとにあるのは工藤訳である。



●19世紀の終わり、ロシアにニコライ・フョードロフという謎の思想かがいました。本職は図書館のカード係でした。 (中略) なぜ図書館のカード係になったかというと、図書館にいるといろんな本が読めるからです。それで古今東西の古典に通じたのです。そして結婚もしないで、寝袋をもって図書館の中に住んで、お給料は若い学生たちにみんな配ってしまう。ところが大変が哲学者なので、トルストイやドストエフスキーが、このフョードロフのところへ訪ねていって教えを請うのです。(p.154)

☆なんかこういう生活憧れるなぁ。

ちなみに、このフョードロフという人が、科学が発展すれば人間を生き返らせることができる、万人を復活させれば地球の土地や酸素では足りなくなるからほかの惑星に人間を運ばないといけなくなると説いた。こうしてミサイルという発想が生まれたそうだ。



●今の憲法が押しつけ憲法だとするならば、大日本帝国憲法も押しつけ憲法です。成文憲法を持っていない国には関税自主権を与えない、治外法権を撤廃しないというのが、列強、帝国主義国の立場で、日本は嫌々憲法をつくらなければならなかったからです。(p.160)

☆そういえば、今の憲法が押しつけ憲法だとはよく言われるが、大日本帝国憲法も押しつけ憲法だったとはあまり語られることがなかったな。



●才能が一番早く開花するのは音楽で、その次に美術、その次に数学ですが、すぐれた数学者というのは中学生ぐらいで才能が出てきます。数学の証明をするにしても、理屈を積み重ねていって証明するわけではなく、最初に結論が見えていて、こういうふうにすれば証明できると理屈を後から組み立てるのが、数学者の特徴です。ですから、理学部に行って数学をやる人と、工学部で工学の観点から数学をやる人は、数学的なアプローチが全然違います。(p.161)

☆最近、天才少年とかで小学生なのに高校の数学がスラスラ解けるという人がいるけど、こういう人がすぐれた数学者になるんだろうな。
理学部と工学部で数学的なアプローチが全然違うというのもおもしろい。



●ロシアのユーラシア空間には、スラヴ正教系の人たちだけでなく、トルコ、ペルシャ系のイスラーム教徒やモンゴル系の仏教徒たちもいます。 (中略) イスラーム教とキリスト教の戦いというのはありません。(p.170)

☆ロシアは多民族・他宗教国家。ただし、サウジアラビアのワッハーブ派(アルカイダなど)など外来の宗教に対しては抵抗感が強いらしい。



●日本でも首相公選制を言い始めていますし、橋下徹さんが関西、特に大阪であれだけの人気を得ているということは、橋下さんが日本の王になろうとしているという流れの表れなのかもしれません。裏返すと、橋下さんの動きは、これから必ず日本の右派とぶつかります。なぜ日本で公選制が実現しないのか。これも我々の目に見えない憲法とどこかで関係していて、必ず天皇とぶつかることになります。公選制で直接国民から選ばれることになると、政治権力だけでなく権威もおびることになるからです。世界の歴史を見ても、国家の長を直接選挙で選ぶようになると、王政はなくなる傾向にあります。(p.171-172)

☆橋下さんがつぶされた理由がこの辺にあるのかもしれない。



●1868年に明治維新があり、1872年に琉球王国が琉球藩に再編されその琉球藩が廃止されて沖縄県になるのは1879年ですが、そのときにも、激しい抵抗運動は起きていません。なぜでしょうか。 『易経』、あるいは孟子が教えるところの易姓革命思想が、沖縄にはそのまま入っているからです。天の意思が変わり、天に見放された権力者には従う必要はないという発想です。(p.183-184)

☆易姓革命思想って孟子だったのか。
易姓革命思想が沖縄にあるということは、つまり、もし中国に沖縄を取られたら、沖縄はたいした抵抗もせずに中国に従ってしまうということか。



●日本の場合は、易姓革命思想をもつ人たちは比叡山にいました。たとえば天台座主で 『愚管抄』 を書いた慈円です。彼は百王説を唱えています。今の朝廷は84代なので、あと16代で百王になるから、日本も王朝交代があると言いました。(p.184)

☆そんな説があったなんて知らなかったなぁ。



●ノルウェーは豊かで、短時間労働も実現していますが、なぜでしょうか。人口わずか500万人しかいませんが、イギリスとの間で北海油田の権利を半分持っているからです。要するに産油国なんです。そのオイルマネーで食べているのがノルウェーです。(p.192)

☆福祉国家というイメージのあるノルウェーだけど、その源泉はオイルマネー。
日本もただ福祉国家に憧れて消費税を増税したりするのではなくこういうところにも目を向けないといけない。




●ロシアの共産党というのは強いです。そしてこれは、マルクス主義とはほとんど関係がありません。
 ソ連の共産党は、結構早い時期にマルクス主義の影響から離脱しています。(p.207)

☆では何主義かというと、ユーラシア主義というものらしい。



●独身制にしておかないと子供に権力を継承させることになり、財産や権力というものが特定の門閥に集まることになります。それを排除しないといけないから独身制にするわけです。(p.226)

☆カトリックが独身制の理由。

中国の宦官もそういうことだったのか。

あるいはアドバイザーに外国人をつける。徳川家康のアドバイザーはウィリアム・アダムスだった。そうやって権力の腐敗を防ぐ。

オスマン帝国は王子たちを競わせて、後継となる王子以外は全員殺していた。この制度が廃止されたらオスマン帝国は弱くなったそうだ。



●実は高福祉高負担の国家というのは、人口1000万を超えると所にはありません。300万人であるとか400万人であるとか、多くても600万人ぐらい。それは、いわば村の延長線上にあります。お互いに何をやっているかがわかる社会なんです。(p.231-232)

☆そう言う意味では、日本は1億人を超えているから福祉国家は難しい。またスウェーデンのような高福祉国は警察国家、大変な監視国家でもある。だからこそ北朝鮮の人でもビザなしで自由に入国できる。



●ロシアでは、宗教は自由であり、異端だからということで取り締まったりすることはない、開発できていない土地がたくさんあるから、そこを耕して、農民として年貢を納めてくれればいい、というわけです。それで移住したドイツ人たちが今も結構住んでいます。(p.237)

☆世界一広いロシアならではのお国事情。



●フランシス・ウィーンは「将来資本家になる見習い資本家を想定して、マルクスの 『資本論』 は書かれている」といっています。(p.243)

☆よく資本主義を批判するために書かれたというけど、逆に資本家になるために(つまり搾取する側になれという意味で)書かれたのだとしたらおもしろい。



●竹中さんは、郵政民営化は必要ないと考えていました。ところが小泉さんが「やる」と言った。それで困りました。必要ないのにどうしてやるんだと。それで田原総一朗さんに相談したんです。(p.251)

☆竹中さんは郵政民営化の旗頭かと思ってた。



●モンテスキューの 『法の精神』 という本があります。岩波文庫で三巻(上・中・下巻)あるのですが、私はこれまで「この本を読んだことがある」という人に出会ったことがありません。私は苦労して全部読みました。重要なのは下巻です。司法、立法、行政の三つの権力の分離によって民主政治を担保するという三権分立の思想は、小学校、中学校、高校の教科書で学びますが、それは、後からモンテスキューをそう解釈した人たちの説明にすぎず、モンテスキューの 『法の精神』 にはそうは書かれていません。(p.254)

☆三権分立って民主政治の基本なのに、それすらも当時の人たちにとって都合のよい解釈だったのか。
モンテスキューは、ギルドや教会などの中間団体が国家と個人の間にいくつもあって民主主義を担保しているとした。
そういう中間団体があれば、政府を小さくしても大丈夫だと考えた。




【評価】
評価:★★★★☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
宗教を手掛かりにして世の中を読み解きたい時に。

 
posted by macky at 23:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | 哲学・思想 | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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