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2015年10月20日

人形峠ウラン鉱害裁判

人形峠ウラン鉱害裁判―核のゴミのあと始末を求めて
土井淑平、小出裕章/著 (批評社) 2001年
2,000円+税



【動機】
樫田秀樹 『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』 を読んで興味を持った。



【所感】
マズいデータは公表されないというところが怖い世の中だ。

ラジウム温泉とか身体にいいと思っていた。

読み進めるうちにどんどん怖くなっていく。





【概要】
膨大なウラン残土の放置、放射能で汚染される環境、隠された被曝…。日本の原子力行政の無責任体制、ここに極まれり。遂に、自治会と住民が核のゴミの撤去を求めて提訴! 原子力の起点のウラン採掘地で何が起きているか? 足尾、水俣、そして人形峠…。日本の鉱害史の空白を埋め、核のゴミの世紀に警鐘を鳴らす市民運動家と科学者の共同の労作。(「BOOK」データベースより)

東郷町方面(かたも)地区のウラン残土撤去裁判に至るまでのドキュメント。



人形峠ウラン鉱害裁判―核のゴミのあと始末を求めて
土井 淑平 小出 裕章
批評社
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【抜粋】
●ウランやプルトニウムなど核分裂性物質は、一ヵ所に一定量以上集めれば必然的な物理現象として核分裂の連鎖反応を始める。逆に一ヵ所に一定量以上集めなければ、核分裂の連鎖反応は決して起こらない (中略) 具体的には、工場内に置く装置の大きさや形状を制限しておけばいいのである。そうすることを「形状管理」と呼ぶ。(p.15)

☆1999年9月30日に東海村で臨界事故が起きたが、この工場内では2.4s以上のウランを一か所に集めてならないというのが許可条件であったにもかかわらず、作業員が14kgを超えるウランを流し込んで事故となった。



●ウラン鉱山の被曝で一番の脅威は、何といってもラドンである。国連科学委員会によると、自然放射線による人間の被曝の約半分は、ラドンとその娘核種によるものである。ラドンは無味無臭の気体で空気より7.5倍も重く、世界中どこでも大地や岩石からしみ出していて、最近は石材などによる室内の汚染が大きな問題となっているが、チェコや北米で多数の肺ガンの犠牲者を出したことで知られるように、とりわけウラン鉱山の被曝の主役をなす危険な放射性核種である。(p.50)

☆ラドンというとラドン温泉というのもあるくらいだし、少量なら身体にいいのかなというイメージしかなかった。



●19世紀末のキュリー夫人によるラジウムの発見という科学上の業績の反面だけが、あたかも隔世遺伝のように今日に伝えられていることを意味するにすぎない。実はキュリー夫人も娘のイレーヌも放射線障害で命を落としており、ラジウムをはじめとする放射能と放射線の発見の歴史は、同時におぞましい被曝と犠牲の歴史の幕開けでもあったのだ。(p.58)

☆キュリー夫人も娘のイレーヌも放射線障害で命を落としているというのが衝撃的だ。



●「ランドール」というラジウム入りのドリンク剤を飲んだシカゴの実業家が「身の毛のよだつ死に方」をしたりしている。(p.59)

☆「身の毛のよだつ死に方」ってどんなのだろう?

註釈を見ると、 <安斎育郎 『「がん当たりくじ」の話』 (有斐閣、1988年)の第2章「放射線の人体への影響は、どのようにわかってきたか」4「放射能の発見と利用」。> とある。



●ここの温泉従業者の血液リンパ球の染色体異常の発生率が、ラジウムに関係のない一般の温泉従業者に比べて有意に高い、という隠された未公表の調査研究のデータもある。(p.60)

☆三朝温泉は何度か入ったことがあるけど、混浴の河原風呂が有名だ。



●宇宙が生まれたのは約150億年前、地球の誕生は約46億年前といわれている。宇宙誕生の当時には、おそらく厖大な放射性核種が存在していたはずであるが、それらはそれぞれ固有の寿命を持っているため、長い年月のうちにほとんどが姿を消した。現在地球に残っている代表的な放射性核種はきわめて長い寿命を持ったものだけである (中略) 。原始的放射性核種とも呼ばれるこれらの核種は、いずれも数億年から一京年に及ぶほどの長い寿命を持ったものばかりである。
 表1に示した放射性核種のうち、トリウム232、ウラン235、ウラン238はそれぞれの崩壊後に生まれる核種がまた放射性であり、一連の系列を作って安定な核種に移る。特に、今回の報告に関連するウラン238についての崩壊系列を図3に示す。ウラン238はアルファ線を放出してトリウム234になるが、それもまた放射能を持っていて、β線を放出してプロトアクチニウム234mという核種になる。こうして生みだされる放射性核種を「娘核種」と呼ぶ。プロトアクチニウム234mもまた放射能で、「娘核種」を生む。そうして次々と放射線を出しながら、「娘核種」を生んでいき、14回の崩壊後ようやく鉛214(鉛206か?)になって安定な核種になる。(p.199-200)

☆このあたり、ウランがラドンになる過程やラドンがなぜ危険かについて、とてもわかりやすく説明されている。
特に図3はとてもわかりやすいので、自分でも図を描いて覚えよう。



●本稿で重要な意味を持つのは系列途中にあるラドンである。ウランから始まってラドンの直前の核種(ラジウム)までは、環境中では普通個体であり、鉱石や土壌その他の中に閉じこめられていることが多い。ところがラドンは科学的には不活性気体(希ガス)と呼ばれ、それが生じた途端に鉱石や土壌から空気中に逃げだそうとする。鉱石などが地中深くに存在している場合には、ラドンが逃げようとしても逃げることが出来ず、そのうちに崩壊してポロニウムと呼ばれる放射性核種に変わってしまう。ポロニウム以下の放射性核種も環境中では普通個体であるため、結局鉱石や土壌の中に閉じこめられることになり、人間の生活環境に大きな影響をおよぼさずに済むことになる。
 ところが、ひとたびウランを採掘するなどして地表面に出してしまうと、ラドンは空気中に逃げだして来ることになり、人間の生活環境に漂うことになる。人間はラドンを含んだ空気を呼吸することになるが、空気中に漂っているラドンは漂いながらも崩壊してポロニウム以下の娘核種を生じており、それらの娘核種もある程度の時間は空気中に漂い、人間はそれも呼吸で体内に取り込むことになる。そして、ラドン自体は完全な気体であるために一度吸入されても、またすぐに呼吸で排泄されてしまうが、ラドン娘核種は非常に微細な個体になって吸入されるため、肺の組織にくっついてしまい、長期間体内に残留し人体を攻撃することになる。(p.201)

☆ラドンから5回崩壊後に生まれる鉛210の半減期が22年と長い。
鉛210を調べてみると、タバコにも含まれているようだ。


放射能の恐さを考える - 福岡核問題研究会
http://jsafukuoka.web.fc2.com/Nukes/blog-2/files/53e8e33186d6239a392169d0faf5b9b3-9.html

たとえば、あるデータによると、1箱(20本)のマイルドセブンの中には約0.7 ベクレルのポロニウム210が含まれています(1ベクレルというのは1秒間に1回の割合で放射線を出す放射能の単位です).他のタバコでも大同小異です。このポロニウム210は、比較的短寿命(半減期約140日)の放射性元素で、α線を出し非放射性の鉛206に壊変します。140日後には、タバコの中のポロニウム210の量は半分になるかというと、そうはいきません。マイルドセブン1箱のなかにはポロニウム210の親核種である放射性の鉛210が約0.4 ベクレル含まれているからです(注:放射性元素Aが壊変によりBやCができたとき、Aを親核種、BやCを娘核種といいます).鉛210の半減期は比較的長く(約20年)、この鉛210によって絶えずポロニウム210が新しく作られていることになります。毎日1箱のタバコを1年間吸い続けるとして、その1%が肺の中に蓄積されるとすれば、原子数でポロニウム210が3000万個、鉛210が16億個という量になります。より危険なのはポロニウム210から出るα線ですが、鉛210もβ線やγ線を出します。それぞれ、毎分8回放射線を出すことになります。


つまりタバコをやめても20年くらいはポロニウム210などが作られて被曝し続けるということか。

ちなみに、ラドン温泉は石やコンクリートなどの密閉空間だと換気を心がけるべきとのこと。
三朝温泉は露天風呂なのであまり気にすることもないのかもしれない。




●人形峠以上に有望なウラン鉱山として岐阜県東濃地域が発見されたが、表2に示すように、採算が合わないようなウランを計上しても日本には総量でも3000トン足らずのウランしかない。(p.208)

☆岐阜県東濃地域・・・。リニア開発で岐阜県東濃地域にトンネルを掘ることが現在懸念視されている。





【アクションプラン】
・安斎育郎 『「がん当たりくじ」の話―国境なき放射能汚染』 を読んでみたい。


・その後どうなったのか、ちょっと調べてみた。

ウィキペディアによると、提訴から4年後の2004年に撤去命令が出されたようだ。

訴訟により、2004年(平成16年)10月に撤去命令が出され、命令を実行できない期間中制裁金を科されることになった。2005年に残土の一部をアメリカへ移送して処理を行ったほか、2006年に人形峠の鳥取県側に残土処理施設を新たに建設してレンガに加工処理を行うことになった。
2008年に処理施設が完成し、搬出された残土は4月から日本原子力研究開発機構によってレンガに加工され、2010年12月13日までに約145万個が製造された。一般向けには「人形峠製レンガ」として販売している。このレンガにはごく微量のウランが含まれているが、レンガの放射線量は平均0.22μSv/hで花崗岩と同じ程度のため安全としており、文部科学省の新庁舎のほか、現在までに各地で花壇や歩道の整備などに使われている。また、妖精の森ガラス美術館ではウラン化合物を利用してウランガラスの製作を行っている。


めでたし、めでたし。……ん、レンガ?



全国で使用される 人形峠のウランレンガ 日本で知ってる人はどれだけいるんだろう?
http://matome.naver.jp/odai/2140881857002279601


おそろしい。

こうやって知らないうちに全国にばら撒かれて知らないうちに被曝していくんだな。




【評価】
評価:★★★☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
ウラン、ラドン温泉、ラジウム温泉、リニアモーターカーなどに興味がある人に。

 
posted by macky at 23:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | ドキュメンタリー | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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