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2015年10月21日

福島原発事故

福島原発事故
安斎育郎/著 (かもがわ出版) 2011年
1,500円+税


【動機】
人形峠ウラン鉱害裁判』 で安斎先生が紹介されていたので。



【所感】
東日本大震災以降、ニュースなどで色々と原発の事を言ってたけど、この本を読むまでは原発のことを何にも知らなかったんだなと思った。



【概要】
福島原発事故による放射能災害は何を示したのか?「原発安全神話」を批判し続けた放射線防護学者が放射線と原発の原点からエネルギー政策を問い直す。(「BOOK」データベースより)

東日本大震災から約2か月後に出版されている。



福島原発事故
福島原発事故
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安斎 育郎
かもがわ出版
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【抜粋】
●今からおよそ半世紀前、私は東京大学工学部原子力工学科の第一期生でした。学生実験の課題の一つに、多量の放射線を浴びせたネズミが手足を痙攣させながら死んでいく過程を観察する衝撃的なレポート課題がありました。動物愛護の観点からは、教育目的の実験とはいえ、残酷です。学生たちは、放射線は目には見えないが、確かに存在し、生体を傷つける魔性を秘めていることをイヤというほど実感させられました。(p.1「まえがき」より)

☆目に見えないのに、確実に存在していて、生体を傷つけるというのは怖い。



●私は放射線測定器をもってただちに東海村に赴き、JCOの堀際から村役場の方向に遠ざかるにつれて放射線のレベルが下がる系統的な傾向を確認、「関口宏のサンデーモーニング」などで報告していました。(p.39)

☆手品をやっていた先生が原子力研究の第一人者だとは知らなかった。



●1.放射線とは何か(p.56)

☆ここから放射線についてとてもわかりやすく説明されている。




●このように、放っておくと勝手に放射線を出して別の原子に変わってしまうような性質のことを「放射性」といいます。別名「放射能」ともいいます。放射線を出す能力という意味ですが、放射性と放射能は同じ意味です。(p.59)

☆放射性と放射能は同じ意味だったのか。まぎらわしい。



●昔はベクレルという単位はありませんでした。「ベクレル」はフランスの物理学者アントワーヌ・アンリ・ベクレルという人の名前を取って単位にしたのですが、それが採用される前は「キュリー(Ci)」という単位が使われていました。これも、マリ・スクロドフスカ・キュリー夫人の名前を取ったもので、ラジウムの放射能を発見した人です。(p.60)

☆ラジウムを1グラムもってくると、その中で1秒間に何個のラジウム原子が放射線を出して別の原子に変わりつつあるかということを基準にして、1グラムのラジウムがもっている放射能のことを1キュリーといった。1秒1発=1ベクレル。1キュリー=370億ベクレル。




●原発労働者が白血病で死んだが、死亡診断書の病名は違っていたなどという遺族の声を一再ならず耳にしますが、それらが根も葉もない噂と言うのなら、原発労働者の疾病統計や死亡統計をきちんと明らかにすべきでしょう。(p.75)

☆偶然、昨日、初の労災が認められたようだ。

原発事故:白血病の作業員に初の労災認定
http://mainichi.jp/select/news/20151021k0000m040081000c.html
毎日新聞 2015年10月20日 20時56分(最終更新 10月21日 06時46分)

 厚生労働省は20日、東京電力福島第1原発事故の廃炉作業に従事し、血液のがんである白血病にかかった40代男性の労災を同日付で認定したと発表した。第1原発事故後の作業で被ばくした作業員のがん発症で労災を認めたのは初めて。原発事故から今年8月末までに福島第1原発で働いた作業員は4万人を超えているが、廃炉の完了は見通せない状況で、被ばくに伴う労災申請が今後増加する可能性がある。





●核分裂反応を起こさせるのには、スピードの遅い中性子(「熱中性子」と呼ばれます)が好都合なのですが、核分裂で生まれたての中性子は「高速中性子」と呼ばれるものすごいスピードのものです。高速中性子は速すぎて、核分裂を起こす能率がたいへん悪く、核分裂を起こさせるためには、生まれたての中性子を水などの触質中でウロウロさせ、エネルギーを失わせてスピード・ダウンさせてやる必要があります。その間にウランの燃料が入れてある原子炉から外部にもれていくものもありますし、水の分子を構成している酸素や水素の原子に無駄食いされてしまうものもあるので、核分裂で生まれた中性子がたとえ3個あっても、首尾よく次の核分裂を起こすのに都合のよいスピードにまで減速される中性子は減ってしまいます。しかし、平均して一個が生き残れば、核分裂は持続的に起こることになりますので、このような場合を「臨界状態」といいます。(p.85-86)

☆「臨界」ってよく目にするけど、そういうことだったのか。
ちなみに、生き残る中性子が1個を超えると「超臨界」の危険な状態になるらしい。中性子が核分裂で生まれて次の核分裂を起こすまでの時間は、1000分の1秒〜10万分の1秒ぐらいの短時間で、生き残る中性子が平均して1個以上になると、あっという間に核分裂が増大して爆発的なエネルギーを出しかねないという。



●1964年、アメリカは、それまで軍事用として国有化してきた濃縮ウランを特殊物質民有化法によって民有化し、世界の原子力市場に向けて原発通商戦略を積極的に展開、濃縮ウラン需要を拡大し、その長期供給保証を通じて自国の政治的・戦略的立場を強化する政策を強力に推進しました。それは、アメリカが圧倒的優位を占める戦略貿易であり、核兵器生産のためのウラン濃縮の余力を活用して、実質的に核軍備競争のコストを緩和する道でもありました。(p.128)

☆何年分も供給契約ができているばかりか、アメリカ以外からの濃縮ウランの混焼には上限を設けて制限が課せられているそうだ。



●70年代は、日本政府が電力企業と結びついて原発建設の批判を圧殺しながら強力に推進した時期でした。こうしたなかで、地域住民・弁護士と連携して原発政策批判に取り組んだ私は、当時、反体制的イデオローグとみなされました。その結果、私は東大の医学部の助手時代に、尾行・差別・ネグレクト・威嚇・懐柔など、さまざまなアカデミック・ハラスメントを受けたのです。(p.149)

☆原発に反対してそんな激しいアカデミック・ハラスメントを受けていたなんて全く知らなかった。
もう一つのライフワークである疑似科学批判や「人はなぜ騙されるのか?」といったものが専門かと思っていた。




【Amazonレビューより】
・隠すな、嘘つくな、過小評価するな 2011/5/30
震災後1カ月後の4月11日に安斎先生の講演を聞いたが、ほぼその内容が納められている。
「隠すな、嘘つくな、意図的に過小評価するな」「最悪に備えて、最善を尽くせ」との先生の言葉に為政者たちが耳を傾けていてくれれば、今の福島の混乱はもう少しましではなかっただろうか? 震災当初の嘘が現在露見し、国民の生命をいかに軽んじていたかが暴露されている中、先生の主張を無視するのではなく聞いていて検討してくれていればと思う。
巷にあふれだした原発災害を取り扱った本の中で、震災後に出た最初の書き下ろし本である。現在の状況からすると少しずれている部分もあるが、震災後2カ月の時点では一番信頼できる本であった事は重要である。
結局、原発問題は70年代から何ら解決してなかったと改めて知る書でもある。(Hさん)




【評価】
評価:★★★★☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
原発の基礎を知りたいというときに。

posted by macky at 23:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | 災害・サバイバル | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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