山際素男/著 (三一書房) 1981年
1,450円+税
【動機】
インドのカースト制度に興味を持っていたので。
『図説ジプシー』 を読んで、ジプシーの起源がインドにあることを知ってさらに興味を持った。
【所感】
インドのアウトカーストは虐げられているという話が延々と続いていた。
これからインドが中国を抜いて世界の中心になろうとしているので
インドについてもっと知りたいという思いもあって手に取ったが、本当に知らないことだらけだ。
ざっと読んでみたけど、ジプシーは出てこなかった。
【概要】
インドには厳しい身分制度(カースト制度)があり、そこから漏れた人びと(アウトカースト)が「アンタッチャブル」、つまり「不可触民」だ。インドの人口の四分の一を占めている。
不可触民の村の潜入レポ。
不可触民―もうひとつのインド (1981年)
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山際 素男
三一書房
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【抜粋】
●インドには二つの層、いや、二つの国、といってもいいほど隔絶した世界に住む階層がある。
近代的工業化の恩恵をこうむる一握りのエリート階層、そのほとんどが英語を完全に解するという特徴を有する、全国民の二パーセントそこそこの人びと。もうひとつは、農村を中心とする圧倒的多数の農民、労働者、である。(p.14)
☆インドで英語がしゃべれるのはエリート層だけなのか。インドといえばみんな英語がしゃべれるようなイメージがあるが、2%しかいないのか。
それにしてもインド人の英語は非常にわかりにくい。
●ブラーミン(司祭、僧侶)、クシャトリア(王族、戦士)、バイシャ(商人)、シュードラ(農民、労働者)という四姓制度は、何千年もの間にインド社会を隈なく覆い、インド人の生活の中心的柱としてインド社会を支配してきた。(p.15)
☆この用語は何度も出てくるので完全に覚えておきたい。
ちなみにブラーミンと言うとピンとこなかったけど、バラモンのことである。
『水木しげるのあの世の事典』 によれば、シュードラは「奴隷」と書いてあった。今回限りの命、一生族である。さらにこの下に人間扱いされない不可触民がいる。
●わたしの知る限りでは、文字通りインド農民と起居を共にし、共に働き、便所のくみ取りまでして、部落の人びとに石まで投げられるという体験を敢然とやってのけた日本人は、ただ一人、池田運氏のみである。
氏の貴重な体験は、「インドの農村に生きる」(家の光協会)に生き生きと語られている。(p.18)
☆これも読んでみたいけど、絶版のようだ。
●「レプラです。夫婦とも」ラジャン氏の言葉にはっとし、二人の手足を見た。老婆の両指は欠け、老爺の方は、足指もほとんどない。(p.102)
☆レプラとはハンセン病のこと。インドのレプラ患者の大部分は不可触民で、政府の調査の眼の届かぬ部分に、何百万という患者が隠れているという。レプラの最大の原因は栄養不足だそうだ。
●さっき話した、ハイスクール時代の教頭が、わたしが寮を出るとき、自分の部屋にわたしを呼んで、色々と話してくれました。そのときの話で、今でも覚えている言葉があります。その人は、こんなことをいったのです。
“マハトマ・ガンジーなんかを信用するんじゃないぞ。不可触民の本当の味方はアンベードカルしかいない。
わしは根っからのブラーミンの家で育ってきたからいうがの、カーストはそのままにして、差別だけをなくせばええ、というガンジーは、ヒンズーイズムが何か判っとらんのよ。判っとって、そういったのならあの男は偽善者じゃ。
不可触制を廃止した近代的カースト社会なんぞを夢見るんじゃない、ぞ” て ね。(p.158)
☆日本だと、ガンジーは偉大な人という印象が強いが、インドだと180度イメージが違うことに驚いた。
調べてみると、ガンジーというのはカースト制度や不可触民を廃止しようとしたわけではなく、カースト外の不可触民を5番目のカーストに組み入れようとしていたようである。
●フロイトと並び称される深層心理学者C・G・ユングとインドとの遭遇、仏教、特に密教、インドタントラ、ヨーガといったものへ人びとが次第に関心を深めつつあるのは、単なる流行ではないように思う。そこには時代の精神のある方向が指し示されているのではないだろうか。(p.209)
☆ユングもインドに関係があったのか。
【評価】
評価:★★★☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
インドのカースト制度、不可触民の生活について知りたい時に。