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2016年09月30日

課題解明の経済学史

朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史 (朝日おとなの学びなおし―経済学)
橘木俊詔/著 (朝日新聞出版) 2012年
1,300円+税


【動機】
2年半前に本屋で立読をして興味を持っていた本。



【所感】
パラパラっと読んでいたら気になる箇所があったので抜き書きしてみた。

そもそもこの本はなんで読もうと思ったんだっけ?と思って動機を調べてみたら、

発売された時に本屋でチラッと立読したときに、「p233ノートに書き出したい」と書いてあった。

2年経ってたまたま同じ個所が目に留まったのである。

以前立読したことなどすっかり忘れていた。




【概要】
いままさに起きている経済の難問を、経済学はどう解き明かしてきたか。16世紀の重商主義から、古典派経済学、新古典派経済学、近代経済学、マルクス経済学などを歴史ストーリーでやさしく紹介。そこに経済の難問解決のヒントがちりばめられている。(「BOOK」データベースより)








【抜粋】
●哲学や政治学の歴史をたどれば、ギリシャ・ローマ時代にまでさかのぼるが、経済学はまだほんの200〜300年の歴史しかない。(p.4)


●経済学に数学が使われる発端となった「限界効用均等の法則」
 限界革命とは、このように財の消費量一単位の増加があったとき、消費の限界効用を用いて消費量の決定を分析する理論である。生産の経済学における費用関数の場合に、生産量を一単位増加するときの費用の増加を限界費用と称しており、限界という概念を用いて生産量の決定という経済分析を行うことが、経済学の流儀となった。
 この流儀は現在でも続いており、限界という概念は微分の概念と同一なので、微分学を用いて数学的にも操作可能となり、経済学に数学が使用される発端となった。この数学応用は現代では大発展を遂げ、数理経済学という分野まで誕生して、高度な数学を駆使して経済学の研究を行っている。
 高度な数学を使って経済学を研究することに対して、批判のあることは予想できる。すなわち、現実の経済の動きとは無関係に抽象的に数学を用いて経済学を解析することは、実生活の経済学上の問題を解くのに役立っておらず、数学遊戯に過ぎないという批判である。
 ところで、金融工学という分野があって、高度な数学(たとえば確率微分方程式)や統計学を用いて株式・債券・預金の価格決定、あるいはオプションなどの金融の分野で解析を行うことがある。これは金融の実務に役立っており、経済学において数学の用いられることが、すべての分野で学問のためだけに数学が使われているというわけではない。(p.51-52)

☆数学を使って経済学を解析すると実生活から離れてしまうが、金融工学は株など金融の実務にも役立っている。



●カール・メンガーは「限界革命」の主唱者の一人であったが、消費における限界効用の概念を経済分析として最も活用した人であるし、ここで述べるオーストリア学派(ウィーン学派とも呼ぶ)の創始者と言ってよく、彼の後に続く一連の経済学者をオーストリア学派と称している。(p.53)



●森嶋の性格を物語る二つの逸話を述べておこう。第一は、青年時代に太平洋戦争に徴兵されて鹿児島の鹿屋にいたとき、時間があれば、ヒックスの 『価値と資本』(「Value and Capital」) を何度も読んで書物が書き込みで真っ黒になるほどであった。ヒックスの書物はワルラス流の価格理論をわかりやすい形で精緻化したものであるが、とくのその数字付録(アペンディックス)が有名である。
 森嶋はこのアペンディックスをとくに好んでいて、口ぐせのように「アペンディックス、アペンディックス」と鹿屋でもつぶやいていたそうである。私が阪大の大学院生だったころも、「ヒックスのアペンディックスは20回以上も復習せねばならない」と説いていた記憶がある。(p.233)

☆森嶋さんの本は以前持っていたけど、本を大量に売ったときに一緒に売ってしまったようだ。

今探してみたけど、見当たらなかった。

また読んでみたい。






【アクションプラン】
・森嶋通夫 『思想としての近代経済学 (岩波新書)』 を読んでみる。

・経済学史をひと通り学び直したい。

・ヒックス 『価値と資本〈上〉―経済理論の若干の基本原理に関する研究 (岩波文庫)』 も読んでみたい。IS-LM分析もこの著書が土台となっているそうだ。

・応用経済学をパラパラと見て何が足りないか見極める。(どんな知識が足りないか)

・橘木俊詔 『京都三大学 京大・同志社・立命館』 を読んでみたい。



【評価】
評価:★★★★☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
経済学史をひと通り押さえるのにすごくわかりやすい。
学生時代に読みたかった。

 




◆追記:170808
●それを具体的に述べれば、マーシャルとピグーにも代表される新古典派経済学にあっては、市場に任せておけば価格(それは賃金も含めて)が変動することによって、失業者の数は減少して、最後はゼロになるメカニズムが作用すると考えたのである。(p.127)



●難解な書物として有名であるが、ケインジアン(ケインズ経済学の追随者のことをさす)の一人であるL・クラインというアメリカの経済学者が、 『ケインズ革命』 という書物を出版しており、クラインの書物に接して初めてケインズ経済学を理解できたという人が多い。(p.135)



●乗数理論と流動性選好理論の二つを合わせてマクロ経済体系は完結する。(p.137)



●投資を刺激するために利子率を下げることに関して、ケインズは新しい概念を提供して、この政策には限界のあることを示している。その概念とは「流動性の罠」と呼ばれるものである。(p.138)

☆流動性の罠とは、金融緩和により利子率が一定水準以下に低下した場合、投機的動機に基づく貨幣需要が無限大となり、通常の金融政策が効力を失うこと。



●科学的な分析手法を用いて客観的にだれでも納得できるような帰結や命題を得ることのできるのが経済学である、と新古典派の経済学者は考えた。それをもっとも典型的に示す命題は、完全競争を前提にすれば、市場機構は「パレート最適」と称されるように資源配分を最適に導く、という厚生経済学の基本定理である。(p.144)

☆厚生経済学とは、経済学の規範理論的研究の総称である。 厚生経済学はミクロ経済学の主要な一分野として位置づけられ、記号論理学の手法が積極的に用いられる一方で、倫理学とも密接な関係がある。



●ついでながら少し時代が経過してからは、政治家としては宮澤喜一元首相、学会としては吉川洋・東京大学教授が、代表的なケインジアンとして知られる。
 ケインズ以降にケインズ経済学を強力に補強する理論が登場したのでそれを述べておこう。ニュージーランド生まれのA・フィリップスの研究による「フィリップス・カーヴ」がそれである。失業率と賃金率の間に負の関係があることを時系列データから発見したのである。(p.157)

☆賃金率が上昇すれば、失業率が低下する。



●福沢は何度も欧米に視察に行っており、そのときに当時出版されていた学術書や一般書を多く持ち帰っていた。彼は「実学」の重要性を説いた啓蒙思想家なので、学問をいかに実生活に生かすかということに最大の関心があり、その意味でも経済学を重視したのである。(p.210-211)

☆福沢諭吉は窮理学(物理学)を重視してたと思ってたけど違うのか? と思って、

学問のすすめ』 を繙いてみた。

このような実なき学問(古文、和歌、詩など)は後回しにし、
専ら勤しむべきは人間普通日用に近き学問なり。

例えば、いろは四十七文字、手紙の文言、帳合の仕方、そろばんの稽古、天秤の取り扱い等を心得、
さらに、地理学、窮理学、歴史、経済学、修身学を学ぶ。

これらの学問をするにあたって西洋の翻訳書を読む。
英語がわかるなら原書も読ませ、実学を押さえる。



つまり、地理学、窮理学、歴史、経済学、修身学と並べてる中に窮理学があっただけだ。
窮理学というのを初めて聞いたから印象に残っていたが、メインは経済学かもしれない。





●マルクス主義が主流とならなかった慶應義塾や東京商大と比較すると、東京・京都の両帝国大学の経済学ではむしろマルクス主義の経済学がかなりのウエートを占めるようになった。(p.216)

☆東大も京大ももともとは経済学は法学部の中で少数派の学問として細々と研究されていたらしい。特に東大は官僚養成大学として、法律と政治学の研究だけをしていればよかったということだ。1919年に法学部から独立して、同時に個別の経済学部となった。

慶應や高商(現・一橋)は卒業後に実業界に進むものが多いので、マルクスは好まれなかったが、東大では教養としてマルクスを学んでいたようだ。



●社会主義国の消滅を目の当たりにし、大学でマルクス経済学を学ぼうとする学生が減少し、旧帝大系の経済学部においてマルクス経済学から近代経済学への移行がみられた。マルクス経済学の間でも、教える科目を「マルクス経済学」と称することをやめて、社会経済学、政治経済学という名に替えて、退潮をなんとか阻止しようとしている。(p.227)

☆政治経済学ってマルクスのことだったのか。知らなかった。ソ連崩壊後、人気のなくなったマルクス経済学は呼び名を変えていたようだ。


●日本でも世界に誇れる経済学上の業績を残した人が二人いる。それは高田保馬(1883〜1972)、柴田敬(1902〜1986)である。両人とも京大出身である。京大経済学部については、橘木俊詔による 『京都三大学 京大・同志社・立命館』 (岩波書店 2011) を参照されたい。(p.229)

☆ちょっと読んでみたい。この著者の本だ。おもしろそう。



(170808 読了) 
posted by macky at 22:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 経済学 | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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