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2017年08月17日

知られざる日本の特権階級

知られざる日本の特権階級 (宝島SUGOI文庫)
(宝島社) 2008年 (単行本は2007年)
476円+税


【動機】
タイトルが気になって気軽に読み始めたらけっこうおもしろかった。


【所感】
この本を読んでいると、向学心を煽られる。



【概要】
今日の日本は「格差社会」であるとされてから、数年が経とうとしている。庶民が「成り上がり」に負け、「成り上がり」が「上流」に負け続け、「上流」すなわち「特権階級」と呼ばれる、ごく限られた人間によって支配されているのが、現状である。―「特権階級」は政治、経済を支配するエリート層を頂点とし、その下で「成り上がり」などが経済的にも社会的にも特権を思うままにしている。そんな日本支配層の素顔と実力に迫る。(「BOOK」データベースより)


知られざる日本の特権階級 (宝島SUGOI文庫)

宝島社
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【抜粋】
●08年7月時点で、日銀の政策委員は定数9名のうち、副総裁1名、審議委員1名が空席である。審議委員には、08年5月になって慶応大学の池尾和人教授が推されたが、国民新党が郵政民営化に賛成した経験があるという理由で反対し、民主党も国民新党に押し切られる格好で、池尾和人氏を審議委員として否決した。池尾氏は、能力・経験ともに申し分のない人物であったが、政治的混乱に巻き込まれて、本当に不幸なことであったと胸が痛む。 (中略) 能力ある日本に限られた人材が、本人の責任とは無関係な理由で、公的な役割に就けない。世の中で、能力ある人が活躍できないことは悲劇の中の悲劇である。(p.86-87)

☆池尾和人氏といえば、卒論の参考文献で使った気がする。 『金融産業への警告―金融システム再構築のために』

そんなに能力の高い人だったのか。

もう一度読んでみよう。



●外務省の「世襲」外交官が他省庁と比べて多いのは、かつて外交官試験が、一般の国家公務員試験と別立てで行われていたことによる。 (中略) 平成13年までの外交官試験は、内部審査で合肥が決められるシステムだったため、ペーパーテストをクリアさえすれば(それなりの困難さはつきまとうが)、その先はコネのあるなしがたいへん大きな決め手となっていたのだ。 (中略)
 外務省では、あのペルー公邸人質事件で有名になった青木盛久の「青木家」、宗男の暴露で恥をかかされた東郷和彦の「東郷家」、そして「本野家」などが、外交官一族として知られている。(p.125)

☆家柄がいいばかりにビジネスを知らない、常識を知らない、世間を知らない。だからこそ鈴木宗男氏のような男気のある政治家から叱られていたようだ。



●広瀬家は、江戸時代の高名な儒学者、教育者の広瀬淡窓の子孫。淡窓は「咸宜園」という名の私塾を開いたことで知られ、士農工商が厳然と機能していた時代に、身分や学歴、年齢にかかわらず誰でも入塾できるシステムをとり、大人気を博した。...(p.137)

☆「咸宜園」について調べてみると、
塾生は遠方からの者も多かったため、寮も併設された。全国68ヶ国の内、66ヶ国から学生が集まった。東国からやってきた女の子もあった。桂林荘のときに、この寮生活の厳しさとその楽しさを詠った「桂林荘雑詠 諸生ニ示ス」の4首の内、主に2首目冬の情景を詠ったもの、いわゆる「休道の詩」は教科書に取り上げられたことがあり、他にも四季それぞれの様子を詠んだ詩がある。休道の詩は、3代目塾主広瀬青邨が賓師を務めた私塾立命館を創始とする立命館大学の寮歌のルーツとも言われているらしい。

現大分県知事の広瀬勝貞元次官は広瀬淡窓の子孫。
大分に立命館アジア太平洋大学があるのもこのつながりかもしれない。



●囲碁では、強い人は弱い人が何を考えているかわかる。弱い人は強い人が何を考えているかわからないのです。これはゲームの定理とも言え、インテリジェンスにも直結しています。(p.155)

☆次々といろんなことが読める、先が読めるというのは、つまり弱い人が考えていることがわかるということ。

そういえば、ついたて将棋というのをやったことがあるけど、有段者と戦うと、相手からはこちらが見えてないはずなのに全部こちらの手が読まれて、思わず笑ってしまうくらいの手を次々と指してきて、気持ち悪かったのを覚えている。

盤が見えてなくても強さは発揮されるのだ。

自分が強くなればなるほど、先読みの力も鋭くなっていく。政治や経済でも、今後の展開がバーッとわかる瞬間があるが、それは、大衆心理をうまく読めた時のことだ。物事の本質が分かると筋が読めて確かな方向性が見えてくる。



●中曽根さんは総理になったら何をするかを20冊ぐらいノートに記していました。「ブレーン政治」で人脈をつくり、それでも足りないと橋本龍太郎・行財政改革部会長(当時)に頼んで内閣広報官というポストを作ったのです。(p.155)

☆先が読める優秀なブレーンは総理にとって大事なもの。「先が読める」とは相手のことが手に取るようにわかるような人のこと。先読みの力をさらに磨くために、囲碁・将棋などで鍛えたい。




●どこの国でもそうですが、暴力団・マフィア問題というのは実は経済問題なのです。ヤクザは金になるなら何にでも手を出す職業的犯罪集団なのです。戦前は経済のパイが小さかったけど、戦後の闇市、高度成長、バブルへと経済規模が大きくなってバーッと表社会に出てきた。(p.164)

☆暴力団・マフィア問題というのは経済問題。つまり、経済を語るうえでヤクザは欠かせないということ。それなのになぜ学校では全く教えないんだろう。実際ほとんどの利権にヤクザが絡んでるのにいないものとして扱ってるから、見えないものと戦っているような形になっている。



●日本の暴力団、総会屋の巨悪の構造を私に教えてくれたのは、実は中学・高校の先輩だった大銀行の頭取です。日本の銀行のマネーロンダリング、政治とヤクザと銀行の構造的な関係、具体的な人脈などです。大物総会屋でありキネマ旬報のオーナーだった「上森小鉄」をはじめ、総会屋の実態について一番詳しく教えてくれたのは大財閥の当主です。
 銀行の頭取にも大蔵省の局長にも、何代かに一人は巨悪がいました。日本勧業銀行や三菱銀行の頭取とか、むかしは闇社会の大物とのつながりが普通だったのです。(p.164-165)

☆「上森小鉄」は聞いたことがなかったので調べてみたら、横井英樹氏が出てきた。どういう関係なのだろう。

ウィキペディアによると、

余談ではあるが、久保が引退するとき藤山愛一郎に自らの後継者と指名したのが鎌倉商工会議所の会頭だった上森子鉄(後に『キネマ旬報』の経営に関与)である。上森は本業は総会屋ではないと終生発言したきっかけはこの理由によるもの。


とある。わずかこれだけ。




●銀行と旧大蔵、それにへばりつく政治家のトライアングルプラス政商とプロの闇社会の人間、これが日本の「巨悪の構造」です。その実態は、警察のデカではわからない。デカがわかるのはヤクザの滑った転んだの部分です。そうした刑事から上がってくる情報で闇社会の構造が分かった気になっているのが今の警察幹部です。(p.165)

☆警察は何も知らないというのは薄々感じていたけど、やっぱりそうだった。縄張り争いばかりしてないで情報の共有をしたらいいのに。



●役人の第二の人生では、人や社会に貢献できるのです。役人はいろんなところに顔を出し、情報をとれて分析力を養えます。海外にも留学でき、現場を踏まえて広く深く勉強が出来る。どこにでも通用する実力を蓄積しさえすれば東大の先生よりも実力をつける条件に恵まれています。ハッピーな人生を送れるはずです。(p.171)

☆なんとも羨ましい。向上心があって勉強が好きな人にとっては夢のような世界だ。



●ある就職サイトの「金融機関」就職人気ランキングをのぞいてみると、入社難易度別に「偏差値」がつけられている。 (中略)
73 財務省
72 金融庁、日本銀行、マッキンゼー
71 ゴールドマン・サックス、BCG
70 みずほ(キャリア採用)、モルガン・スタンレー
69 日本政策投資銀行、日興シティ、メリルリンチ
68 JPモルガン、ドイツ銀行、国際協力銀行、日本生命、東京海上日動(p.185)

☆企業偏差値あるなら見てみたい。
外資系が強い。
国内最大のメガバンクの三菱東京UFJは63と平凡私学並みだそうだ。



●戦後の財閥解体と、2代、3代の相続税によって、いまや財界に大きな力をもつ家柄などほとんど残っていない。あえて言うなら豊田家くらいのものである。
 以前、タレント・杉田かおるが旧日産コンツェルンの創始者、鮎川義介の孫である鮎川純太氏と結婚し話題になったが(後に離婚)、鮎川氏が聞いたこともないベンチャー社長の肩書きにおさまっているのを見て、ひそかにため息をついたかつてのセレブは多かった。(p.194)

☆鮎川純太氏が社長をしていた会社の株を以前持っていたことがあるが、何だったかな。
イーディーコントライブだったかな。今もあるのだろうか?


調べてみたら、今年の4/28に上場廃止していたようだ。

イーディーコントライブ(1986年〜2006年) 主な事業:フロッピーディスク装置屋 
 ↓
YAMATO(2006年〜2014年) 主な事業:消臭ペレット屋
 ↓
アジェット(2014年〜2015年) 主な事業:アイスクリーム屋
 ↓
フード・プラネット(2015年〜2017年) 主な事業:カップケーキ屋
 ↓
キューズ(社名ロンダリング未遂)




●300万部以上を売り上げ、長らくベストセラー記録を破られなかった 『冠婚葬祭入門』 の著者、塩月弥栄子は14代家元の娘だ。(p.218)

☆読んでみたい。裏千家、現在の家元は16代千宗室。



●ほとんどが東大卒というキャリア官僚の世界では、大学よりも高校の派閥が機能しているのは当然であり、損得ヌキに時間をすごした者どうしが知る信頼感が、彼らの財産になっているのだ。(p.221)

☆周りがみんな東大卒だから、どこの高校出身の東大卒かというのが大事になってくるというのはおもしろい。無名の高校から必死で頑張って東大に行った人はキャリアを目指してもあまり出世できないという厳しい現実。

東大に行くモチベーションの一番大きなものが、東大卒だと東大派閥で大きな顔ができ、人脈面で圧倒的なアドバンテージがあるということだったけど(参考:和田秀樹 「「1+1=10」を実現する仕事術―仕事が劇的に変わる5つの「頭の習慣」」)、さらに高校の派閥まで大きなカギを握るというのは知らなかった。



●利潤が腹にたまってくれば、税金を取られまいと社員の待遇をアップさせる。ジリジリと給与が上昇し、いまや庶民感覚とはまったくかけ離れた「特権階級」の仲間入りを果たしてしまった。(p.239)

☆テレビ業界の話。儲かって利益がたまる。利益を税金で取られたくないから給料を上げる。ますます優秀な人材が集まる。



●かつて新聞記者という職業が、政治家になるための「登竜門」となった時代もあった。 (中略) その手段のひとつが「新聞社」に入って政治記者になることだった。
 昔の3大紙には、そうした野望を持っている記者がけっこういた。地盤を持っていたとしても、まず新聞社やテレビ局(特にNHK)を目指す。たとえば細川護熙、森喜朗、中川秀直などは「記者出身議員」だ。 (中略) 自らが政治家にならなくとも、権力者のブレーンとなることによって、優秀な記者は政治家を傀儡にすることができる。(p.269-270)

☆そうか、地盤、看板、カバンのない人が政治家を目指すときに手っ取り早いのが新聞記者だったのか。こういう情報ってみんなどこで知るんだろう? インターネットもない時代に。




【アクションプラン】
・企業偏差値あるなら見てみたい。

・『冠婚葬祭入門―これだけは知っておきたい暮らしの常識 (知恵の森文庫)』を読んでみたい。

・先読みの力を磨くために、囲碁・将棋などで鍛えたい。



【評価】
評価:★★★★☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
日本の特権階級について知りたいときに。

 
posted by macky at 23:50 | Comment(0) | ノンフィクション | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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