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2018年02月10日

藤原氏の正体

藤原氏の正体
関裕二/著 (新潮社) 2008年 (単行本は2002年)
552円+税


【動機】
インターネットで歴史について検索していると、
ちょくちょくこの本が引用されるのでずいぶん前から気になっていたので読んでみた。



【所感】
中臣鎌足は百済王豊璋だったというのは結構知られているが、そのもととなったと思われる本。

百済王は日本をどのように乗っ取ったのか。

そして、今現在も生き続けている藤原の血筋や官僚システム。

支配者層と被支配者層。

天皇のタブーは、実は天皇を利用した藤原氏のタブーだったという論が斬新。



【概要】
大化改新の英雄・鎌足以降、常に日本の中枢に居座り続けた藤原氏。しかし、その出自は謎に包まれ、未だ古代史の闇として秘され続けている。正史に輝く華々しい業績を持つ一方で、一族繁栄のためには政敵を葬ることも厭わないという負の横顔を持つ彼らは一体何者だったのか? 著者独自の研究から、ついに明らかになったその素顔――。富と権力に驕れる一族の正体を暴く渾身の論考。(Amazonより)


藤原氏の正体 (新潮文庫)
関 裕二
新潮社
売り上げランキング: 7,342




【抜粋】
●歴史上、出雲とかかわる重要人物といえば、出雲国造家と、その流れを汲む野見宿禰(土師氏)、土師氏の末裔の菅原道真が知られるぐらいであろうか。(p.130)

☆こういうことってあまり日本史の教科書とかでは出てこないのでためになる。
菅原道真が出雲にゆかりがあるとは知らなかった。

ところで、野見宿禰(のみのすくね)ってどこかで聞いた名前だと思ったらやっぱりそうだ。力士の先祖だ。
天覧相撲で當麻蹶速(たいまのけはや)に勝ったと日本書紀に書かれている。



●平城京を軍事的に押さえ込む要の土地は東の丘陵地帯なのだが、その一帯を支配していたのは藤原氏だった。もちろんこれも、藤原不比等の深謀遠慮の賜物である。聖武天皇が平城京に対峙するように恭仁京に陣取り、また、難波に遷都を目論み、さらにこの後藤原の占拠する丘陵地帯をおさえるかのように東大寺建立を企てたのは、すべて平城京を藤原氏から取り戻したいという一心からであろう。だからこそ、仲麻呂はこれを阻止しようと動いたのである。 (中略) 要するに聖武天皇は、いかに藤原氏から権力を奪い返すかに腐心したのである。(p.241)

☆この時代、遷都を繰り返した理由がここにある。そういえば、小中高で日本史を勉強するが、なぜそれをやったのかというのをあまり深く追求せずに淡々と事実だけを並べるから歴史は暗記ものでつまらないイメージになってしまうのだ。こうやって理由を交えて説明すればわかりやすいのに。でも先生がそれを説明するだけの知識を持ち合わせていない可能性もある。こういうのは塾でもやらない。なぜなら入試に出ないからである。では、どこでこういうことを勉強するのか。インターネットかもしれない。インターネットの普及によって、今や向上心の高い子供は先生をはるかにしのぐ知識を持つようになってるかもしれない。



●律令制度の根本は、全国の土地をいったん国家の所有とし、さらに戸籍に記された人々に、公平に農地を分配することであった(班田収授法)。しかし、律令の精神は、早い段階で崩壊し、土地を手放し逃亡する農民があとを絶たなかった。当然のことながら、国家財政は逼迫する。そこで養老7年(723)に三世一身法、天平15年(743)には墾田永年私財法が発布される。(p.287)

☆小中高で勉強した律令制度が共産主義の考え方とは気づかなかった。
三世一身法は三代まで土地の所有を認めるということだが、収公直前になると、農民がその田を耕さなくなってしまい、せっかく開墾した田が荒廃してしまった。そこで墾田永年私財法が発布された。ここでちょっと不思議なのは、三世一身法から墾田永年私財法までわずか20年しかないということだ。15歳で結婚したとしても3代またぐには30年かかる。



●班田収授法の原則はこうして崩れ去り、「荘園」という私有地が誕生するきっかけがここに生まれるのだが、何よりも興味深いのは、三世一身法にしろ墾田永年私財法(管理人注:原文は「班田収授法」となっているがおそらく間違い)にしろ、土地の私有化を認める法案が、藤原氏の衰弱した時期に決められた、ということ、さらに、藤原氏はむしろ土地の私有化を抑制する立場にあった、ということなのである。(p.289)

☆墾田永年私財法が「荘園」の誕生するきっかけになるとはおもしろい。
ちなみに、藤原不比等が没して長屋王が出現すると三世一身法ができ、藤原四兄弟が全滅し左大臣橘諸兄が政権を握ると墾田永年私財法ができた。こういう対立軸で見るとおもしろい。共産主義的発想の公地公民制度が行き詰まり、労働意欲が減退すると、范藤原政権は、土地の私有化によって活性化の道を模索した。藤原氏は北朝鮮の金正恩のようだ。共産主義で平等と言いながら実は自分だけが私腹を肥やす独裁政権。



●貴族社会が衰弱した中世、藤原氏の末裔は、新たな支配者に忍び寄っていく。室町幕府の足利将軍家には、藤原北家の末裔の日野氏が女人を送り込み、姻戚関係を結んでいく。
 第三代将軍足利義満以来九代の将軍まで、室を入れ、応仁の乱で名高い日野富子は第八代将軍足利義政の室であった。
 江戸時代には、徳川将軍家とも姻戚を結んだ。三代将軍家光の夫人は鷹司信房の娘・中の丸であり、こののちも、将軍家と藤原氏の縁組は続いた。(p.308)

☆日野氏も藤原北家の末裔だったのか。




【アクションプラン】
・北家と式家の対立も現在まで続いているような気がするが、そのことについては触れられてなかった。あくまでこの本は、藤原対反藤原という構図だ。もうちょっと調べてみよう。





【Amazonレビューより】
・悪辣の極み 2014年10月20日
まともな奴がいないとか言ってる人がいるが、南朝の功臣の万里小路藤房(青森の高楯城主であった朝日氏の祖先であるという)、四条隆資・隆俊親子の他、戦国時代に主家・大内氏の為に奮戦した後に自害して果てた冷泉隆豊なんかは名門公家である冷泉家の血を引いている。
また、有名所で言うなら伊達氏や上杉氏も藤原氏と謂われる。他に四国ならば土佐一条氏、西園寺氏がある。
維新の功臣である三条実美は言わずもがな、岩倉具視(岩倉家は村上源氏だが、岩倉具視は藤原系公家 高倉家よりの養子)も藤原系だろうに。
名誉毀損も甚だしい。(Amazon カスタマーさん)

☆まともな奴がいないとは言ってないと思うけど。それにしてもこの方は詳しいなぁ。


・「藤原氏」の謎を解き明かす 2011年1月22日
 名著『日本人とユダヤ人』において、イザヤ・ペンダサン(山本七平氏)は「権威(天皇)」と「権力(将軍)」の分立を「すばらしい制度」と称えた。しかし、考えてみれば、「権威」と「権力」の双方を独り占めしたくなるのが人情というものであろう。私も、日本史を習う中で、「大和朝廷」成立以降、“皇統の危機”は幾たびかあったものの、「権力」による“皇位そのものの簒奪”という事態が表向き起きなかったことに些か疑問を抱いてきた。だが、この『藤原氏の正体』を読んでみて、古来から行われていた「権威」と「権力」の分立を、日本の原型的な政治(統治)制度として、最終的に確立したのが藤原氏なのかな、との思いに至った。

 この藤原氏抬頭の礎となるのが、中大兄皇子(天智天皇)と共に「大化改新」でお馴染みの中臣鎌足だ。鎌足らは645年、蘇我入鹿を討ち果たし、「王政復古」を成し遂げた(乙巳の変)、と教科書的には語られている。ここで、著者の関裕二氏は「『日本書紀』のいうような蘇我氏の専横、これに対する中大兄皇子、中臣鎌足の正義の戦いこそが乙巳の変(大化改新)であったという常識を、まず疑ってかかる必要がある」(本書)と述べている。ところで、そもそも、中大兄皇子に協力した中臣鎌足とは何者なのであろうか…。実を言うと私も、突然日本史に登場してきたこの人物は一体何者なのか、という疑問も長らく懐抱していた。

 私の疑問とする中臣鎌足に象徴されるように、「藤原氏最大の謎は、日本でもっとも高貴な一族でありながら、いまだに出自がはっきりしていない」(同)という点を、哲学者・梅原猛氏の所説なども紹介しつつ、著者独自の解釈を開陳する。特に、入鹿暗殺に係る『日本書紀』の以下の記述に著者は注目する―韓人(カラヒト)、鞍作臣(クラツクリノオミ)を殺(コロ)しつ。さらに、その分注の「韓政(カラヒトノマツリゴト)に因(ヨ)りて誅(ツミ)せらるるを謂(イ)ふ」にも着目する。そして、著者は鎌足に関する大胆な推論を展開するのだが、この著者の推断に従えば、皇位そのものは簒奪せず、「天皇の外戚」に留まってきた藤原氏の「謎」の一端も解ける。(仮面ライターさん)


・日本にかけられた恐るべき呪い 2008年12月3日
日本史に名を残す藤原氏の謎を追及した本。
里中満知子さんの「天上の虹」シリーズや古代政争史に興味のある方にはピンとくるだろう。

氏素性もわからない一族が大化の改新後、天皇家に取り入り
政権の実権を握っていく課程が描かれていく。
その手法はあまりにも恐ろしくて図々しく、且つ巧妙である。
しかもこの藤原氏の呪いたるや現在の日本まで続いていると著者は語る。
現代政治に巣食うガンである官僚制度の元締を作り上げたのも藤原氏なのだから。
旧華族(公家)が全員藤原の一族であるという著者の指摘は自分の脳天を打ちぬいた。
昭和天皇に対する近衛(この人も藤原氏)首相の非礼のエピソード、
現皇后陛下の存在意義も絡めてこの本は藤原氏が日本にかけた呪いを描き出している。(三輪そーめんさん)




【この本が愛読書の有名人】





【評価】
評価:★★★★☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
著者の論理に賛成するか反対するかはともかく、日本史を語る上で一度は読んでおきたい本。

歴史に興味を持ちはじめた中高生に。あるいは、歴史に興味が持てない中高生に。または、歴史が大好きな中高年に。

 
posted by macky at 23:00 | Comment(0) | 歴史 | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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