2018年06月13日

日の名残り

日の名残り
カズオイシグロ/著 (早川書房) 2001年 (単行本は1994年)
760円+税


【動機】
白熱教室でカズオイシグロ氏の講義を見て興味を持っていた。

そのカズオイシグロ氏がノーベル文学賞を受賞されたということで読んでみた。



【所感】
ノーベル文学賞というたいそうな肩書きがついてるからとっつきにくいものかと思いきや、

とても読みやすい文体だった。


イギリス人は皮肉屋だというが、なるほどほんとに皮肉屋だなぁ。

ミスター・スティーブンスとミス・ケントンの会話が皮肉たっぷりで楽しい。

日本ではこういう皮肉を立て続けに言う人はあまりいないが、もしいたら思わず笑ってしまうだろう。


著者のカズオ・イシグロさんは執事のことにやけに詳しいな。

なんでこんなに詳しいんだろう。

イギリスで実際に執事をやってたのかな?



執事の仕事ぶりが完璧であればあるほど、悲劇になっていくという構成がおもしろい。

ある意味、一番の皮肉だと思った。





【概要】
品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々―過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。(「BOOK」データベースより)


日の名残り (ハヤカワepi文庫)
カズオ イシグロ
早川書房
売り上げランキング: 832





【抜粋】
●悲劇を語りながら、ユーモアを忘れない。わたしはその余裕のある態度を望み見て、イシグロが川端康成にではなくディケンズに師事してゐることを喜んだ。(p.361 丸谷才一氏による「解説」より)

☆川端康成にではなくディケンズ・・・これはどういう比喩なんだろう。教養のある人だと、ピンとくるのだろうが。また時間のある時に調べてみよう。





【アクションプラン】
・映画もあるみたいなので観てみたい。

・なるべくあとから後悔しないような生き方をしよう。もし後悔するような生き方をしてしまったら、そのときは小説のネタにしよう。



【Amazonレビューより】
・5つ星のうち5.0 深い余韻につつまれる見事な傑作 2015年10月17日
カズオ・イシグロの3作目の長編である。素晴らしい作品だった。

英国の執事が主人公である。ソールズベリーの館。新しいアメリカ人の主人に仕える老いたスティーブンス。ミス・ケントンからの手紙。車で旅に出たスティーブンスは、長年仕えたかつての主人であるダーリントン卿の時代に想いをはせる。途中で立ち寄った地の人々との交流と過去の回想がクロスオーバーしながら、物語は淡々と進む。

登場人物たちの微妙な心の揺れをとらえた緻密な描写。2つの世界大戦と館での出来事。かつて執事であった父親。多くの使用人たち。出入りする人々。プロフェッショナリズム。ミス・ケイトンとのやりとり。作品を貫く品格。よく錬られた構成。美しい夕暮れ。

面白いとか、エキサイティングだとか、泣けるとか、そういうのではないかもしれない。しかし、読み終えて、静かだが、確かで、深い余韻に包まれた。1989年にブッカー賞を受賞したという。それだけのことはある。見事な傑作である。以前読んだ「わたしを離さないで」も、とても良い作品だった。この作家はいつかノーベル文学賞をとるだろう。(Edgeworth-Kuiper-Beltさん)

☆「わたしを離さないで」も読んでみよう。




【この本が愛読書の有名人】





【評価】
評価:★★★★☆
こんな人に、こんな時におすすめ:






▼以下、ネタバレあり
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2018年03月20日

かもめのジョナサン

かもめのジョナサン
リチャード・バック/著、五木寛之/訳 (新潮社) 1977年 (初出は1974年)(完成版は2015年)
476円+税  (完成版は590円+税)


【動機】
オウム真理教の地下鉄サリン事件から今日で23年。

オウムの幹部で事件の約1か月後に刺殺された村井秀夫氏が愛読していた本、ということで興味を持った。



【所感】
昔から異端児が偉業をなすのだが、異端児は社会に抹殺されるという話。

みんなと違っていても自分の信じた道を信じて突き進めばいいと、この本を読んで安易に考えてしまうが、

自分の道を突き進むだけではだめで、

究めた能力でいかに社会に還元するかを考えることも大事だ。

そのために必要なのは、社会とうまく距離を取る能力である。

その能力のない異端児は社会から抹殺されてしまう。




【概要】
「飛ぶ歓び」「生きる歓び」を追い求め、自分の限界を突破しようとした、かもめのジョナサン。群れから追放された彼は、精神世界の重要さに気づき、見出した真実を仲間に伝える。しかし、ジョナサンが姿を消した後、残された弟子のかもめたちは、彼の神格化を始め、教えは形骸化していく…。新たに加えられた奇跡の最終章。帰ってきた伝説のかもめが自由への扉を開き、あなたを変える!(「BOOK」データベースより)


かもめのジョナサン: 【完成版】 (新潮文庫)
リチャード バック
新潮社 (2015-06-26)
売り上げランキング: 5,985





【抜粋】
彼らの一羽一羽にとって、生活の中で最も重要なことは、自分が一番やってみたいことを追求し、その完成の域に達することだ。そしてそれは空を飛ぶことだった。(p.60)

☆自分が一番やってみたいことを追求し、その完成の域に達すること。



わたしたちはここで学んでいることを通じて、つぎの新しい世界を選びとるのだ。もしここで何も学びとることがなかったなら、次の世界もここと同じことになる。それはつまり、乗り越えなきゃならん限界、はねのけるべき鉛の重荷が、もとのままに残ってしまうことなんだ」(p.63)

☆よく言うけど、そのステージでやるべきことが残ってるうちは次のステージに進めない。ゲームと一緒だ。上になかなか上がれないと思ったら、そのステージでまだクリアしてないイベントがあるということ。



天国とは、場所ではない。時間でもない。天国とはすなわち、完全なる境地のことなのだから」(p.65)

☆天国は自分の中にある。



「まず、自分はすでにもうそこに到達しているのだ、ということを知ることから始めなくてはならぬ……」(p.75)

☆瞬間移動するためには、その場所にもう達していると思うところから始めないといけない。
最初から半信半疑だとできるようにはならない。




【アクションプラン】
・完成版にパート4(最終章)があるらしい。読んでみたい。 →読了(180807)




【Amazonレビューより】
・パート4について  2018年3月17日
私はパート4の、特に最後のジョナサンのセリフがこの本の主題だと感じた。
では何故はじめはカットされたのだろう。
無くても作者の意図は伝わると思ったのか。
有ると人気が出ないと読んだのか。
出版後にエンディングを変更する余地を残したのか。
小説で一番大切な部分だから作者が自分だけのものにしたかったのか。
あると作品の価値が下がると思ったのか?
結局完成版を出したのだからそれはないな。

原文で読んでみたらわかるかもね。(Amazon カスタマーさん)





【この本が愛読書の有名人】
村井秀夫


1985年4月に職場結婚した妻の森脇佳子(後に土谷正実の部下としてサリン製造等に関与し実刑判決)と、1987年6月夫婦で出家する(1990年、ステージの違いを理由に協議離婚)。彼が出家者になるのを両親が思いとどまらせようとしたとき、彼は、リチャード・バックの『かもめのジョナサン』の日本語訳を手渡して、「この本を読んでください。僕の気持ちはこの本の中にあるから」と述べた。母親は「この本、嫌いです」と語る。

出家後はオウムの科学者の代表格として真理科学研究所(CSI、後の広報技術部→科学技術省)を任され、占星術のプログラム、アストラル・テレポーター、ビラ配りロボット、多足歩行ロボット、ホバークラフトなどを企画・開発した。また、教団には医者が多くいたにも関わらず、何故か獣医の遠藤誠一と、物理学専攻でおよそ医学と縁があるとは思えない村井が麻原の主治医を務めていた。

教団の中では、上祐史浩や青山吉伸のような権力欲は持たず、突き抜けて楽しそうにしていた。田原総一朗は、麻原の3女松本麗華に対し麻原は村井を信じていたのではないかと問うたところ、麻原は「“村井を信じる奴はバカだ”」と言っていたこともあったと証言した。松本麗華の良き遊び相手でもあり麗華からは「まんじゅう」と呼ばれていた。(Wikipediaより)




【評価】
評価:★★★☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
よく聞くタイトルなので、一度は読んでおきたい。

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2016年02月18日

シッダールタ

シッダールタ
ヘッセ/著、高橋健二/訳 (新潮社) 1971年
400円+税


【動機】
インドに興味を持っていたので。



【所感】
最初は翻訳が読みにくくて退屈だなぁと思っていたけど、我慢して読み続けていたらだんだん慣れてきて、終盤から一気に面白くなった。
2回目は最初からめちゃめちゃ面白い。




【概要】
求道者が悟りの境地に至るまでの苦行や経験を描いた小説。



シッダールタ (新潮文庫)
ヘッセ
新潮社
売り上げランキング: 7,265




【抜粋】
●「あなたは読み書きができますの?」
「たしかにできます。そのぐらいのことのできる人はいくらもいます」
「大多数の人にはそれができません、私にもできません。あなたに読み書きができるのは、たいへん結構です。何よりです。呪文だって役に立つでしょう」(p.77)

☆読み書きができるのに書物を読まないのは宝の持ち腐れだ。

みんな当たり前のようにできると思っていても、実際はできる人が少ないことがある。自分しかできないこともある。それをもっと突き詰めていけばよい。

読み書きができるのに書物を読まない人は、最近ようやく読み書きができるようになったばかりの人にあっという間に抜かれてしまうだろう。読み書きができるようになったばかりの人はうれしさのあまり書物を読みまくるからだ。

さらに言えば、何かができるようになったらそこで満足せずに、完全に自分のものになるまで楽しみながらマスターする必要がある。またこの時が一番楽しいのだから後回しにせず集中すべし。



●「それであなたが与えるべきものは何ですか。あなたが学んだこと、なしうることは何ですか」
「私は考えることができます。待つことができます。断食することができます」
「それだけですか」
「それだけだと思います!」
「それが何の役に立ちますか。たとえば断食することが――それが何の役に立ちますか」
「大いに役に立ちます。食うものがないときは、断食が人間のなしうるもっとも賢明なことです。 (中略) 長いあいだ飢えに包囲されても、それに対して笑っていることができます。断食はそういう役に立ちます」(p.84-85)

☆最初読んだときは笑ってしまったが、意外と深い言葉だ。就職活動の面接とかで、あなたは何ができますか?と聞かれて、「断食することができます」と言えば、もし面接官がこの本を読んだことがあればピンときて採用されるかもしれない。



●それは一つのことば、無意識におぼつかない声で口ずさんだ一つのつづり、あらゆるバラモンの祈りの古い初めの文句と終りの文句、「完全なもの」あるいは「完成」というほどの意味を持つ神聖な「オーム」だった。「オーム」というひびきがシッダールタの耳に触れた瞬間、眠りこんでいた彼の精神が突然めざめ、自分の行為の愚かさを悟った。(p.113)

☆物語のカギを握る「オーム」

主人公が長い眠りからさめたのが「オーム」

また、悟りを開いたのも「オーム」を聞いてからだった。














ちょっと探してみた。こんな感じかな。




●シッダールタは言った。「私がおん身に何の語るべきことがあろうか、おん僧よ。おん身はあまりにさぐり求めすぎる、とでも言うべきかもしれない。さぐり求めるために見いだすに至らないのだとでも」
「いったいどうして?」とゴーヴィンダはたずねた。
「さぐり求めると」とシッダールタは言った。「その人の目がさぐり求めるものだけを見る、ということになりやすい。また、その人は常にさぐり求めたものだけを考え、一つの目標を持ち、目標に取りつかれているので、何ものをも見いだすことができず、何ものをも心の中に受け入れることができない、ということになりやすい。さぐり求めるとは、目標を持つことである。これに反し、見いだすとは、自由であること、心を開いていること、目標を持たぬことである。」(p.177)

☆先入観を取り除いて物事を見よということか。目標を持てとはよく言われるが、逆に目標を持たぬことで自由に対処できるという視点もおもしろい。



●知識は伝えることができるが、知恵は伝えることができない。知恵を知恵を見いだすことはできる。知恵を生きることはできる。知恵に支えられることはできる。知恵で奇跡をおこなうことはできる。が、知恵を語り教えることはできない。これこそ私がすでに青年のころほのかに感じたこと、私を師から遠ざけたものだ。私は一つの思想を見いだした。(p.181)

☆知恵は自分で様々な経験することでしか身につかない。




【アクションプラン】
・現時点で自分しかできないことをもっと究めてみる。

・「オーム」についてもっと調べてみる。

・またしばらく経って読んでみたい。



【Amazonレビューより】
・自己実現をテーマにした芸術作品 2003/2/27
この本は人間の一生においての課題である「自己実現」をテーマにして書かれたものである。ヘッセ自身、自己実現を人生において、1番重要視していて、それをテーマにした本を幾つも発表している。例えば、その1つに「デミアン」がある。この本では、主人公が自己実現欲求を起こし、その欲求を満たすものを、迷いながらも人の力も借りて、なんとか見つける。何か直線的に自己実現に立ち向かっていく感じがしたが、シッダールタでは、グニャグニャと円を描く曲線だった。
その理由は、主人公が自己の追求を求める世界で生きるだけでなく、その世界から抜け出し、自己実現を全く重要視しない世界の中に入って生きた点にある。2つの精神世界に入口と出口があり、主人公はその2つの世界を入口から入り出口から出ながら行き来する。この何か曲線的な世界の変化をもとにして生じる、主人公の心や生き方の変化及び、全く忘れていた自己の内面を思い出していく中で到達していく自己実現の仕方に、デミアンより深いものを感じた。私はこの本がヘッセの自己実現について書かれた作品中で最高のものと勝手に思う。(Nさん)


・はっきり言って凄い 2004/1/28
この作品は内面へ内面へ向かうヘッセの作風が最も色濃く出ている。ヘッセというと 『車輪の下』 がどうしてもいちばん有名であるが、この本があまり読まれていないのは残念な事である。シッダールタが真の悟りに達するまでの過程を、シッダールタの悩みや苦しみを含め丁寧に描いた作品である。心理描写の良さと、インド哲学を深く理解したうえで組み立てられた作者独自の哲学世界が味わえる、小説としても良くまとまっている作品。(Iさん)



【評価】
評価:★★★★☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
人生の意味を考えたいときに。

 
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2015年06月17日

ロミオとジュリエット

ロミオとジュリエット (新潮文庫)

ロミオとジュリエット
シェイクスピア/著、中野好夫/訳(新潮文庫) 1951年


【概要】
ギリシャ神話の 『ピュラモスとティスベ』 (『桑の木』)を元にしたイングランドの劇作家ウィリアム・シェイクスピアによる戯曲。


【動機】
ミュージカル映画 『ウエスト・サイド物語』 を観る前に読んでおこうということで。


【所感】
思ってたのと違った。もっとこうドロドロとした恋愛なのかと思ってた。
こんなにも救いようのない話だったのか。




【抜粋】
ジュリエット  ああ、ロミオ様、ロミオ様! なぜロミオ様でいらっしゃいますの、あなたは?

☆多分ここが、「ロミオ、ロミオ、あなたはなぜロミオなの?」という有名なシーン。



僧ロレンス  やれやれ、なるほど狂人には耳はないはずだな。

ロミオ  当たり前ですよ、賢人とやらに、眼がないのですからね。(p.133)

☆小気味のいい返し。


●吝嗇家のように、せっかくなにもかも有りあまるほど持ちながら、
お前という男は、それらを何一つ正しい途、つまりお前のその姿容、
その愛、その理性の輝きとなるような使い方をしないのだ。(p.137)

☆「せっかくあるのに使わないのはもったいない」と言われたら、たしかに充分に揃ってるという気がしてくる。


●ああ、なんという無残なときの仕業、こんな悲しいことを、一時にしでかそうとは!(p.204)

☆ここまで読んで、やっとおもしろくなってきた。

まさに悲劇と喜劇は紙一重。



【アクションプラン】
・『ウエスト・サイド物語』 を観る →観た(121016)



【評価】
評価:★★★☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
シェイクスピアの代表作を読んでみたいという人に。
新潮文庫のこの作品だけはなぜか中野好夫訳なのでイマイチ。
(さすがにキリスト教圏で「ナンマンダブ」はないだろう)
福田恆存訳もあれば読んでみたい。


■参考
シェイクスピア (1564-1616)
イギリス(イングランド)の劇作家、詩人。

1.習作時代
『ロミオとジュリエット』 など

2.喜劇時代
『ヴェニスの商人』 『夏の夜の夢』 など

3.悲劇時代
四大悲劇(『ハムレット』 『オセロー』 『マクベス』 『リア王』)や
『ジュリアス・シーザー』 など

4.浪漫劇時代
『冬物語』 など



(121015 読了)
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2014年11月25日

モモ

モモ (岩波少年文庫(127))
ミヒャエル・エンデ
岩波書店
売り上げランキング: 652


モモ
ミヒャエル・エンデ/著、大島かおり/訳 (岩波書店) 
800円+税、2005年 (単行本は1976年)



【概要】
時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語。


【動機】
10年後あなたの本棚に残るビジネス書100』 で紹介されていたので。

時間管理術』 で紹介されていたので。


【所感】
ひらがなが多くて読みにくい。読むのにやたらと時間がかかる。

そういえば小学校の時、あまり本を読まなかったのは
児童向けの本はひらがなだらけで読みにくかったというのもある。



【抜粋】
●「なあ、モモ、」とベッポはたとえばこんなふうにはじめます。「とっても長い道路をうけもつことがあるんだ。おっそろしく長くて、これじゃとてもやりきれない、こう思ってしまう。」
 しばらく口をつぐんで、じっとまえのほうを見ていますが、やがてまたつづけます。
「そこでせかせかと働きだす。どんどんスピードをあげてゆく。ときどき目をあげて見るんだが、いつ見てものこりの道路はちっともへっていない。だからもっとすごいいきおいで働きまくる。心配でたまらないんだ。そしてしまいには息がきれて、動けなくなってしまう。道路はまだのこっているのにな。こういうやり方は、いかんのだ。」
 ここでしばらく考えこみます。それからようやく、さきをつづけます。
「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな? つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸(いき)のことだけ、つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。」
 またひと休みして、考えこみ、それから、
「するとたのしくなってくる。これがだいじなんだな、たのしければ、仕事がうまくはかどる。こういうふうにやらにゃあだめなんだ。」
 そしてまたまた長い休みをとってから、
「ひょっと気がついたときには、一歩一歩すすんできた道路がぜんぶおわっとる。どうやってやりとげたかは、じぶんでもわからんし、息もきれてない。」
ベッポはひとりうなずいて、こうむすびます。
「これがだいじなんだ。」(p.52-53)

☆作業量が膨大なタスクを目の前にしたときは細分化する。



●「おまえをつくりだしたのはわれわれだ。おまえはゴム人形さ。われわれが空気を入れてふくらましてやったのだ。だがわれわれをおこらせるようなことをしたら、また空気をぬいてしまうぞ。それとも、いまのようになれたのは、おまえのそのけちな才能のおかげだとでも、ほんきで思っているのか?」(p.258)

☆なんだか現実にありそうな話だ。
現在売れているミュージシャンでも本当に才能があって売れている人がどれだけいるだろうか。
また才能があるのに空気を膨らませる人がいなくて売れてない人がどれだけいるだろうか。



●不安と心ぼそさがはげしくなってその極にたっしたとき、その感情はとつぜんに正反対のものに変わってしまったのです。不安は消えました。勇気と自信がみなぎり、この世のどんなおそろしいものがあいてでも負けるものか、という気もちになりました。(p.329)

☆そういうことがあるのかなぁ。
そういうことがあるって知ってるだけで、今後、不安なときでも乗り越えられそうな気がする。
「失うものは何も無い!」って開き直るみたいな感じかな。






【アクションプラン】
・ 『エンデの遺言―「根源からお金を問うこと」』 を読む。

・ 『ネバーエンディング・ストーリー [DVD]』 を観る。



【評価】
評価:★★☆☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
小学5〜6年生用なのでひらがなが多く読みにくい。大人用のがあってもよさそう。
(というか、むしろ大人向けの本のような気がする)

日頃、時間が無い、時間が無いと言ってる人に。



【結論】
節約した時間で何をするかが大事。

(ただ節約するだけでは、最初から無いのと同じこと)

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2014年08月16日

オー・ヘンリー傑作選

オー・ヘンリー傑作選 (岩波文庫 赤 330-1)
オー・ヘンリー
岩波書店
売り上げランキング: 7,111


オー・ヘンリー傑作選
オー・ヘンリー/著、大津栄一郎/訳 (岩波文庫) 1979年



【概要】
絶妙のプロット、独特のユーモアとペーソス。短篇の名手オー・ヘンリーの作品には、この世の辛酸を十分になめた生活者の、ずしりと重い体験が反響している。(「MARC」データベースより)

20篇載っている。



【動機】
以前、新潮文庫版( 『O・ヘンリ短編集』 )を読んでいたが、最近、林修の今でしょ!講座で
「マモンの神とキューピッド」が紹介されていたので、読んでみた。

(新潮文庫版には、「マモンの神とキューピッド」が無かったため)




【所感】
なんか、この話聞いたことがあるぞ。
どこかで読んでたのかなぁ。


他のも全部読んでみた。

訳が新潮の大久保訳よりもくだけている。


ちなみに「マモンの神とキューピッド」以外で
新潮版に無かった話は無かった。


つまり、林先生は新潮に無くて岩波にあった唯一のものを
一番オススメとして紹介したことになる。



いや、ひょっとして見落としただけで
新潮にも載ってたのかな?


なんか読んだことあったような気がしたし・・・(笑)





【評価】
評価:★★★☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
ユーモアのある短編集の定番として。

posted by macky at 20:17 | Comment(0) | TrackBack(0) |  -海外小説 | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月05日

O・ヘンリ短編集(全3巻)

O・ヘンリ短編集 (1) (新潮文庫)

O・ヘンリ短編集
O・ヘンリ/著、大久保康雄/訳(新潮文庫) 1969年(改版)


【概要】
アメリカの作家 O・ヘンリ(1862-1910)の短編集。
全3巻で46篇の短編小説が収められている。


【動機】
齋藤孝氏オススメの本ということで。(齋藤100選)


【所感】
約四年がかりで寝る前に少しずつ読み進めた。
(途中、放置していたこともあって意外と時間がかかった)


最初に手にしたのが第3巻だったので
「最後の一葉」をまず読んだのだが、読み終えて思わずうなった。


「善女のパン」はラジオ英会話で原文も読んだので印象に残っている。



【抜粋】
1巻の巻末に「O・ヘンリの生涯と作品」という解説文が載っていている。

●彼はこの時期に、叔母の指導で、スコット、ディケンズ、サッカレー、ウィルキー・コリンズ、デュマなどを愛読し、とくにディケンズは、全作品を、くりかえし読んだという。(p.202)

☆子どもの頃から文学少年だったようである。


●夜、編集の仕事がすんでから、よく彼は街々をうろつきまわって、記事のネタを探しあるいた。人生の敗残者だけが寄り集まるような裏町の汚い酒場で彼らを相手に安酒をくみかわすこともあれば、豪壮な邸宅で開かれる上流階級のパーティに顔を出して、紳士、貴婦人といわれる人たちの生態に目を向けることもあった。こうした夜の探訪を通じて、次第に彼は、人生の機微に通じる鋭い観察者へと変貌して行ったのである。(p.211)

☆記事のネタを求めて色々なところに顔を出し、観察する。「夜の探訪」というのがおもしろい。



●「出て行け、この墓ぬすっとめ! シ・・・・・・シナ人だって自分の先祖の墓は大切にするんだぞ――。さあ、出て行け!」(3巻 p.70)

☆全体的にユーモアのある差別的表現も多い。



【評価】
評価:★★★☆☆
こんな人に、こんな時におすすめ:
ユーモアのある短編集の定番として。



【追記】 140604:
「林修の今でしょ!講座」でO.ヘンリが紹介されていた。

「賢者の贈り物」と「マモンの神とキューピッド」

「賢者の贈り物」はちょっと切ないお話。

「マモンの神とキューピッド」の方は、おもしろい話だったけど、こちらの本には掲載されてなかった。
(『オー・ヘンリー傑作選 (岩波文庫 赤 330-1)』 のほうに掲載されているようです)


「千ドル」も最後に紹介されてたけどそれは載っていたので、改めて読んでみた。
遺産千ドルの使い道。一度読んでるはずなのにこのオチは思いつかなかった(思い出せなかった)。



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2011年03月07日

星の王子さま

星の王子さま (新潮文庫)

星の王子さま
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ/著、河野真理子/訳
(新潮文庫) 2006年



【概要】
聖書に次ぐベストセラーで
全世界で8000万部も売れているという。



【動機】
あまりにも有名な本だが一度も読んだことが無かったので手に取った。


【所感】
子どもにだけ見える世界がある。
大人になると見えなくなる世界。


●すると今度は反対方向に、また明かりをつけた特急が一台、轟音を立てて走り去った。

「もう帰ってきたの?」 王子さまは聞いた……

「同じ列車じゃないんだ」 鉄道員が答えた。「すれちがったんだよ」

「みんな、自分のいたところに満足できなかったの?」

「人は、自分のいるところにけっして満足できない」 鉄道員が言った。(p110)


☆王子さまと鉄道員のやり取りが印象に残っている。
子どもの質問って的外れなことが多いけど時々本質を突いてくる。
大人の鉄道員が上手に本質で返しているところがおもしろい。


人が亡くなったときに星になるというのもこの作品の影響なのかな。




【アクションプラン】
・新潮文庫(河野真理子/訳)で読んだが、アマゾンのレビューを見たら『星の王子さま―オリジナル版』(内藤濯/訳)も読んでみたくなった。ほとんどの人がオリジナル版 (ハードカバー) を読んでいる。 →読了。そんなに変わらない印象。(110325)

・訳者あとがきを読むとまた最初から読んでみたくなる。


・読んだ後に、より深く謎を解きたいという人はこういうサイトもあります。

星の王子さまの謎に挑戦
http://homepage2.nifty.com/atugi/



【評価】
評価:★★★☆☆(20歳になる前に読んでいたら印象は違うかも)
こんな人におすすめ: 10代。20歳になる前に一度は読んでおきたい。

あるいは、子どもの心を失ってしまった大人に。
大人には2種類ある。
子どもが大事だと思うことを理解しようとする人と、
そんなものは大事じゃないと切り捨てる人。
切り捨てることによって大人になっていくともいえるが、
気がついたら4番目の星の王様のように「忙しい忙しい」と口にする大人になっているかもしれない。
本書はそういう方々への皮肉も込められている。
これを読んで自分を恥じて赤面する人もいるかもしれない。
いや、むしろほとんどの人が当てはまるだろう。
ここに書かれていることを比喩として受け取って、
想像力をふんだんに働かせることが大事である。

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2009年02月20日

ハムレット


ハムレット (新潮文庫)

ハムレット
シェイクスピア (著), 福田 恒存 (翻訳)
新潮社 (1967/09)

To be, or not to be, that is the question.

というセリフで有名なハムレットを読んだ。
シェイクスピア四大悲劇のうちの一つである。

想像していたよりも読みやすい。
タイトルのハムレットというのは主人公の名前で、
彼はデンマークの王子。

「たった二月、いや、まだ、二月にもならぬ。立派な国王だった。」

興奮のあまり、いつの間にか
「それが、たった一月。」

そして
「一月もたたぬうちに。」

最後の方では
「父上が亡くなられてからまだ二時間もたたないのに。」

こういう大げさな言い回し、クスリときます。
狂気のふりか、はたまた本当に狂気か。

国王はその弟クローディアスに殺された。
そして、クローディアスが新しい国王になっている。

それが前提で復讐劇となっているが、
そもそも、亡霊が真実を語ったのはハムレット一人にだけ。
つまり、全てハムレットの被害妄想という見方もできる。

と、ここまで考えて
太宰治の「人間失格」を思い出した。


ところで・・・
解説の後に「シェイクスピア劇の演出」という文章がある。
そこに、ハムレット劇の演じ方についての
アドバイスのような部分があった。

ハムレット役者はハムレットの性格を描写するのではなく、
観客がそのつどハムレットにこうしてもらいたいと願うことを
やってのけることによって、
観客の心理的願望を満たしてやらなければならない。

(中略)

「役になりきる」というのは、
ハムレット役がハムレットに、マクベス役がマクベスに
なりきることでしょうか。
それなら、役者はハムレットやマクベスの僕になってしまうことで、
観客の僕、観客の身代わりではない。
これは、やはり、立役、道化役、敵役になりきることを
意味するものでは無いでしょうか。

(中略)

観客がハムレットを操ろうとする行動を満足せしめるように
演じなければならぬのです。
観客に代わってハムレットを操らなければならぬのです。


「役になりきる」とはそういうことか、
と目からウロコが落ちました。

芝居を見る目が変わったように思います。
舞台だけじゃなく、時代劇とかも結局はそういうことなのかも。

いくら役者が実際の人物に忠実に、あるいは自分の色を出そうとしても
観客や視聴者からイメージが違う、違和感があると思われたら
その時点で失敗ということか。

本編を読んでハムレット劇を見た気になり、
「シェイクスピア劇の演出」を読んで
ハムレット劇を見たいと思うようになった。


■参考
シェイクスピア (1564-1616)
イギリス(イングランド)の劇作家、詩人。

1.習作時代
『ロミオとジュリエット』など

2.喜劇時代
『ヴェニスの商人』『夏の夜の夢』など

3.悲劇時代
四大悲劇(『ハムレット』『オセロー』『マクベス』『リア王』)や
『ジュリアス・シーザー』など

4.浪漫劇時代
『冬物語』など

posted by macky at 23:10 | Comment(0) | TrackBack(1) |  -海外小説 | edit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする